地震予知としての「体感」について

地震の前兆情報には少なからぬ割合で「体調の変化」報告がある。頭痛であったり耳慣りであったり、はたまた眩暈や動悸であったり。
これは予知としてどの程度当てになるか。


地震に際してどのような現象が生じるか、また体調に何が作用しているか、まだ解らない事は多い。従って「地震の前兆により体調が変化する」という言説を支持するに足る根拠はないが、さりとて否定する根拠もまたない。敢えて予知側に立って言えば「可能性はある」。
しかし、残念ながら予知に充分とはとても言えない。


体調というのは様々な要因で変化するものだ。気象条件であったり病原であったり、食生活や生理的要因であったり。頭痛にせよ耳鳴りにせよ、眩暈や動悸にせよ、例外ではない。要するに地震の時にだけ生じる変化」と言えるものではない、ということだ。
地震以外でも生じ得るならば、それが地震の前兆であることを示すには、最低限「他のあらゆる要因ではない」ことを確認した上でなければ「地震によるものかも知れない」とは言えないことになる。


人によっては、「明らかに地震の時にだけ感じられる体調の変化」なるものがあるのかも知れない。そういうものがある可能性を否定はしない。けれども、それはあくまで体感であるから他人が確認できる代物ではなく、「本当に地震の時だけ感じられるのか」を説明しようがない。


そもそも、体調と地震が本当に連動しているのかどうか。地震に伴って体調を崩す人が多いなら、病院の記録などからある程度の調査が可能な筈だ。しかし少なくとも今までに、それを示唆するような統計的データは得られていない。私としては、本当にそのようなことがあるのかどうか疑っている。
現状では、「体調変化により地震の前兆が感じられる」というのは「地震が予め勘で判る」というのと同程度に信憑性がないと考えざるを得ない。


まあ百歩譲って、自分の体調を自分が信じる分には良しとしよう。勘であれ何であれ、自分を信じるなら自己責任だ。でも他人の体調報告を当てにするのは止めた方がいい。