TCGを越えるもの

各所で話題のカードゲーム「ドミニオン」が気になる。
場のカードを買ってはデッキに組み込み、徐々に山札が増えてゆくゲーム。要するにTCGのデッキ構築なテイストを残しつつもクローズドにすることで問題点を排除しようという試みだろう。


TCGの楽しさは「戦術を設計する」ことにある。必要な要素を詰め込み不要なものを削ぎ落として、戦術を最適化する。突き詰めると対戦は最適化が意図通り機能していることを確認するための作業になる。
無論そうした側面はどんなゲームにも多少なりと付随するものだが、TCGの場合はそこに主眼が置かれている。また定番が固着し新鮮味が失われることを防ぐために常時内容を拡張しバランスを改変し続けられるという利点もあり、一時期広く普及した。
しかしTCGには能力のインフレ、空間と財力への負担、複雑化という問題も付き纏う。これらは古参プレイヤーにとってすら負担だが、初心者にとっては高い壁として立ちはだかってしまう。


これを解消する試みは何度も為されたが、アンクローズドなTCGとする限りはいずれ同じ轍を踏んでしまう。カルドセプトのように1セット完結の形式とし、徐々にカードを増加させることで擬似的なコレクタブルを実現する方法はそれなりの成功を収めたが、ボードゲーム側からのアプローチはやや消極的であった。
例えば30枚の構築済みデッキで対戦する「スカラベ・ロード」では負けた側が中立カードを組み込んでデッキを調整し再戦する。単純な形での再現であるが、ヴァリエーションが狭くどうしても定番化が避けられない。
「サン・ファン」のようにカード同士のコンボで能力強化してゆくパターンもある。こちらは引きで戦術が変化せざるを得ない分定番化し難いが、逆に言えば戦術最適化のカタルシスはやや弱い。
オーソドクスなTCGを変化する盤面と組み合わせることで戦術バランスを変化させる案を考えたこともあるが、普通にTCG形式とするとどうしても一人あたりの利用可能カード数がデッキ枚数の数倍となるため1セットが膨大となり、またデッキ構築に時間がかかるため1プレイの手軽さがない。


この点、ドミニオンの方式は両面の利点を巧く引き出しているように思われる。セットはクローズドであり、事前準備はなく、プレイ中にカードを次々に組み込み/排除してデッキを整えてゆく。ちょっとシールド戦やドラフト戦的な印象。
これ、TCG的戦闘ゲームに組み込んでみても結構面白いんじゃないだろうか。ドミニオンの場合は概ねリソース3割+戦術3割+ポイント4割ぐらいのバランスで構成されているような感じを受ける(プレイしたことはないのであくまで印象のみ)が、これをリソース3割+戦力4割+戦術3割ぐらいで、減算式にする感じか。