ハドソンのタワー・ディフェンスゲーム「エレメンタルモンスターTD」にハマった。ごくオーソドックスなタワーディフェンスなのだが、実に良くできている。
何が面白いのか
エレモンTDは、塔防衛ゲーム系としては非常にありふれたつくりをしている。予め定められた通路を1Waveごとに1〜12体の敵が粛々と進軍し、それを左右に配したユニットが攻撃してゆく。
ユニットのデザインやエフェクトの出来など心理的な面での出来の良さというものもあるが、それだけでは面白さには繋がらない。
実はエレモンTD最大の特徴は、防衛ゲーム部分以外の面にある。実はこのゲーム、元となったのはニンテンドーDS用のトレーディング・カードゲームで、それを受け継いだ本作でも複数のカードを組み合わせたデッキで戦うのだ。
元のゲームからしてデッキはたった6枚で構成されていたが、本作でもデッキに組み込めるのは5枚。これが、配置できる防衛戦力になる。
初期デッキは安いが弱いカードで構成されているので、ゲームオーヴァーにはならずとも強めの敵は防ぎ切れず逃がしてしまうことが多い。しかしプレイ後は(防衛の成否如何に関らず)成功度に応じた報酬が得られ、これでカードを購入することができる。モンスターごとに設定された閾値以上の数を撃破するとカードショップに追加され、これを報酬で購入しデッキに組み込む。言わばRPGでいうところのレベルアップや装備変更に相当するものであり、これによりクリアできなかったマップでも戦闘数を重ねることで勝てるようになってくる。
「勝てなかった相手が勝てる相手になってゆく」ことの快感というのは結構強い。加えて「カードをコレクションする」という別種の快感が生じる。これはなかなかヤバい。
知る限りでは、自分の戦闘力が底上げされてゆくTDというのは他にGemCraftぐらいのものだと思う。Viking Defenceのようにプレイ中に条件を満たすことで新たな防衛施設が解禁されるようなものはあるが、そもそもの防衛能力が左右されるものはあまり見ない。
ちょっと変わった「レヴェルアップ効果」
エレモンTDで防衛施設に相当するのは召喚したモンスターである。敵撃破によるマナ+Waveクリア時の達成度によるボーナスを消費してモンスターを配置し、またレヴェルアップさせることができる。不要になれば半額程度で売却してもいい。
モンスターによっては特定レヴェル到達時に何らかの効果を発揮するものもいる。この効果は、レヴェルアップの瞬間に発動して終了するものと、攻撃した敵に対する追加効果が付加されるもの、周辺の味方を継続的に強化するものの3種がある……のだが、正直カードの説明でその違いを判別し難い。
このうち、範囲強化能力こそはTCGとしての側面を持つエレモンTDの醍醐味と言える。
例えば、水の大型ユニットであるクラーケンはレヴェル3以降、自らの攻撃範囲に入ったすべてのユニットの攻撃範囲を拡大する能力を持つ。本体の攻撃力も高く、非常に優秀なユニットなのだが、致命的に攻撃が遅いという欠点もある。
これを、範囲内のユニットの攻撃速度を高めるプラチナドラゴンと組み合わせるとどうなるか。隣接して並んだユニットそれぞれが互いの攻撃範囲と攻撃速度を高め合い、一群としての極めて強力な防衛効果を発揮することになるのだ。
悪いところも少々
面白いゲームではあるのだが、全般に情報が整理し切れてない印象はある。
例えばレヴェルアップに伴うスペシャルスキル発動の条件。ペイントマンの敵属性変更スキルは「レヴェルアップの瞬間、攻撃範囲にいる敵全部に適用」であって、それ以外の時には効果がない。対して極楽鳥の移動力低下スキルは「レヴェルアップ以降、攻撃に伴う追加効果として継続」である。「発動時使い切り」なのか「発動後継続」なのかはアイコンなどで明示した方が良いように思う。
あるいはデッキに組み込んだカードは、購入及び構築の時点では能力を確認できるが、配置の段階では確認の方法がない。配置した後であればレヴェルアップによる能力変化の表示によって確認可能だが、確認してからの配置ができないのはちょっと困る。
なんといっても安い
iPhone版は450円(現在セール中で115円)、PSP版は800円。ゲームとしては非常に安価で気軽に購入し易い価格。
元々TDは比較的開発リソースが少なく済み、そのためFlashゲームなどにアマチュアの作が多い分野なのだが、エレモンTDでもメインヴィジュアルにエレモンのカードをそのまま流用するなどしてリソースを抑え、安価に販売している。
5000円のゲームで50時間遊べるとして100円あたり1時間。エレモンTDは1マップ20分としても5マップ×4フェイズ+タイムアタックモード、しかも1マップ/フェイズごとに複数回チャレンジせざるを得ない面があるので優に20時間ぐらいは遊んでしまう。PSP版の価格でも100円あたり2.5時間のコストパフォーマンスである。手を出さない理由はない。