デザインフェスタ ブース研究

今回、5年ぶりに出展したデザインフェスタ。前回の教訓を活かして事前にブース構築を考えての参加であったが、色々と予定外のことも生じた。そのあたりも踏まえ、また当日会場でサンプリングしてきたブースデザイン例を紹介しながら「良いブースの作り方」を考えたい。


今回は写真が多く長い記事なので続き記法で隠しておく。

インパクトで魅せるブースパターン

デザインフェスタに限らず、屋台密集型展示ではどうしても客は「歩きながら左右を見渡しての流し見」をせざるを得ない。ブース数の多いデザインフェスタでは尚更である。すると、興味を惹くためには一瞬見ただけで何かを感じるだけの「オーラ」が必要になる。
経験的に言って、こうしたオーラを醸し出すために有効な手段は

  1. 大型でインパクトのある造形物
  2. 質量で圧倒
  3. 統一された雰囲気

のいずれかであろう。

1は作品傾向がものを言う。大きくて一目でインパクトを与えられる絵や立体造形を商品としているならば話は早い。が、そうでないならばブースデザインとして取り入れるのは困難だろう。仮に無理して行なったとしても、作品との調和を損ないかねない。ブースはあくまで作品の立役者であり、脇役に徹する必要があるのだ。
このパターンは極論、ブースを必要としない展示方法であるため、今回は割愛する。


2は小さな商品を数造る人向け。その好例として「ぴよだまり」が挙げられる。今では商業化して多数のグッズを展開しているが、元はデザインフェスタの常連で、アクリル板で囲った箱に直径1cm程度のひよこ人形がぎっしり詰められているのを掬い取って販売するという、まさに数で圧倒する展示であった。
これは極端としても、小さな写真プリントやポストカードなどを壁一面に隙間なく並べるような展示方法や、ブースに直接絵を描いて、どこまでも埋め尽してゆくような手法も考えられる(後者はむしろその様子自体がひとつのパフォーマンスとして作品化し得る)。
第26回での一例として、2店紹介する。

面陳列型としては占有面積が少ないが、布で覆った背景にロープを渡しての展示パターンが目を惹く。3との合成パターンとも言える。

こちらは1との併せ技。壁面に直接ペイントされた大きな絵にディスプレイされた蝶の乱舞、その横に絵を展示している。
しかしこのパターンは、面を見せるタイプの作品でしか使えない。ひとつひとつの作品が面を大きく取れるならば有効だが、そうでない作品では別の見せ方を考えなければならない。


3は作品自体を面で見せることの困難な商品タイプに有効なパターンである。作品自体の傾向に合わせてブース全体を統一感のあるデザインにすることで、ブースを含めた全体をひとつの作品として演出する。ただし作品傾向が統一されていることが前提となるし、また白壁のみでも充分に機能する2と異なり設営にかなりの労力を割かねばならない。
例として数店紹介しよう。

ブースを赤で、商品を黒で統一した洋品店。強い色使いのインパクトといいターゲットを絞り込んだ作りといい、非常に完成度が高い。

錆びたトタンの屋根に廃材の柱。廃屋の風合いを出すブース。相当に手慣れた構成である。

陳列パターンとしては面陳列に属するので2で紹介しても良かったのだが、演出を評価した。錆びて内部の覗く配管の風合いが良い。

最後に手前味噌ながら弊社店舗を。壁は黒い布で覆っただけながらアンティークの机と古い小物で欧州の文具店をイメージ、理科系雑貨との統一感を重視して演出した。

運搬・設営・撤収も視野に入れた設計

ブースデザインに懲ったは良いが当日の搬入搬出が困難なようではどうしようもない。予め輸送手段を想定、当日の組み立てが可能なデザインを探らねばならない。
必要なのは商品の陳列スペースと店員・在庫・包装品などを置くバックヤード、それに他店の装いに飲まれない工夫である。背面が空いていると後ろの店舗デザインの影響を受けてしまうので、最低限ここは塞げる工夫をすべきである。混じり合っては統一感が阻害されるし、化粧されていない壁の裏側が丸見えになってしまうのもみっともない。
一番簡単なのは壁をレンタルしてしまうことだが、棚でふさいだり独自の枠で壁に相当するものを立てても良い。
陳列用に棚やテーブルなどもレンタルできる。可能なものはすべて現地調達して身軽に済ますのも方法だが、よほど商品にインパクトがあるか展示方法を一工夫しないと一目を惹くブースにはならないので、どうしても準備の困難なものだけ借りる、あるいはデザインに影響しないものだけ借りるようにすべきだろう。
バックヤードは運営上重要なポイントである。在庫をストックして売行きに応じて適宜補充できるようにしておくこと、また商品の包装や釣り銭などを取り出し易くしておくこと。客足や売り子人数次第だが、1日出られない可能性もあるので飲食物も用意しておくと良い。
バックヤードは基本的にどうしても汚くなりがちなので、ここを客に見せない工夫も必要である。テーブルを利用するなら布をかぶせるなどして前側を覆い足下を活用する手もある。


情報を整理すると、

  1. 輸送が容易であること
    • コンパクトに畳んで/分解して持ち帰れる/発送できる
    • ブースまるごと移動可能
  2. 汚い部分は見せないこと
    • 壁とバックヤード目隠し必須
  3. 自分がいる場所を確保
  4. しかも雰囲気のあるもの

という感じか。
では実際のブース例を見てゆこう。

箱型ブース。側面に蝶番が見える。壁は半分に畳めるようだ。背面などははっきりしないが、中ほどに継ぎ目があるところをみると更に4〜6分割/畳めるようになっているのかも知れない。

ジグザグに展開する支柱兼目隠しと天板による簡素な構造。背面はパイプハンガー状のものに布。

のれんを掛けた梁部分は後面と蝶番で接続されており、前面支柱で支える構造。

見事なデザインだったのだが、予想よりシャッタースピードが遅かったために盛大にブレ(というか流れ)た。金属製穴空きプレートで組んだ棚+壁でバックヤードを完全に覆い隠す構造。

多分100円ショップの紙パイプ棚によるブース。安っぽくなりがちだが、暖簾や簾をかけ、明かりを吊るしたことで素材丸見えの状態が却って和風に纏まっている。下方の棚をバックヤードとしているため雑多なものが見えてしまう欠点あり。

木枠+簾3面構成。これ自体は嵩張るが、それほど破損し易いものでもないので括って発送してしまう手もある。