自転車の価格帯

自転車というのはかなり価格差の大きい乗り物だ。安いものなら1万円以下、高いものでは100万を越える。自動車だって1億円を越えるものがないではないが、ごく少数の限定生産であり非常に特殊だ。しかし100万の自転車というのは、そこまで珍しいものでもない。
自転車の価格を単純に自動車と比較すると、概ね20倍程度の差ということになると思う。100万の自転車は2000万の高級スポーツカーに匹敵する。ただし、コストのかかるエンジンを搭載せず、安全基準も自動車ほどきつくないために最低価格にはかなり開きがある。自転車ならホームセンターあたりで1万円を切る新車も珍しくないが、自動車では20万の新車なんて有り得ない。中古車だって、程度の悪い軽自動車でもなければそんな価格ではなかなか出ないだろう。
そう考えると、「まともな自転車」と判断できる車格というのは概ね5万円から上ということになるだろうか。10万円台なら結構ちゃんとスポーツ車として通用する。3万円ぐらいで軽自動車やコンパクトカーのエントリークラス、それ以下はかなり評価の厳しいあたり。


「新車が1万円以下で手に入る」という事実は世間での自転車の基準をかなり下げているような気がする。このクラスでもちゃんと走るし、耐久性にも別段問題はないのだから悪し様に言うような代物ではないのだが、それが標準として定着してしまうのはなかなか辛い。価格のみで言えば、電動アシスト自転車の登場で家庭用一般車の価格は一気に10倍に引き上げられた面があるのだが、それは「電動だから仕方ない」という特別扱いになっており、それ以外の自転車までもが高額を許容されたというのとは少し違う。


この「自転車なんて安いものだ」という感覚が実は適正でない、ということが一般に認識されるようになるのはいつの日だろうか。高度成長期以前の日本では、自転車は高級品であり一生もの(とまでは言わずとも、かなり長い期間利用するもの)であった。現在で言うところの所謂「実用車」-----今でも警察や郵便局、商店などで利用されているが、水平のトップチューブを持ちブレーキの動作伝達をワイアでなくロッドで行なうタイプ-----は未だに各メーカで製造されているが、いずれも5万円程度の金額を保っている。自動車で言うと100万円程度、白1色の商用車に相当しよう。当時は商用車の価値も相対的に高いものであったが、同様に自転車も今より高かったと想像できる。
別段「1万円の自転車なんて買うな」なんて言いたいわけではないが、「自転車に何万も出すなんて勿体ない」と言われないようにはなって欲しいと思う。