自転車メーカの守備範囲

某ちゃんねる含めたWebでの情報を見るに、自転車界というのはかなり偏狭な世界だというのが見えてきた。
基本的に、各々が自分の乗っているメーカ以外を敵と見做す傾向が強いようだ。
例えば伊ビアンキ社は創業120年の老舗でありレースに於いても輝かしい業績を持つ名門だが、ユーザはしばしば外野から「ブランドネームだけで実を伴わない」と揶揄される。
主として自転車用アパレルブランドであり見た目重視の安価なラインナップを中心とする加ルイ・ガノは「偽物」扱い*1。自転車製造大国である台湾のジャイアントは「安物」と相手にされない。
ただしこれは自転車マニア(のうち某チャンネルなどで積極的に他を攻撃する人々)での評価であり、必ずしも実際の世間評と一致するわけではない。例えばジャイアントのロードバイクはかなり頻繁に街中で見掛ける(優れたコストパフォーマンスから職業自転車乗り-----メッセンジャーなど-----が利用しているのだろうか)。またルイ・ガノは日本向けに特化されたデザインと手頃な価格のエントリモデルを中心に広く普及しているのが見受けられる。
実際、各国の一流メーカと雖も自社での製造製品は決して多くなく、大半は台湾の下請け工場で製造される。とりわけ金属フレームは100%と言ってもいいぐらいで、カーボンフレームすら一部は台湾製のようだ。賃金の違いから低価格で製造できるが、だからといって品質に問題があるわけではない。むしろ台湾製なら安心と考えても良いだろう(中国製は少々心配が残る。メーカを失念したが、アメリカ国内向けに中国で製造していたフレームに欠陥がありリコールされたとのニュースもあった)。


印象だけでは客観性に欠けるので、一例として関心空間での検索結果を見てみよう。

ビアンキ
21
スペシャライズド
21
ジャイアン
18
キャノンデール
23
ルイガノ
34
トレック
6
ダホン
11
モールトン
11
ブロンプトン
10
ライトスピード
ラレー
1
コルナゴ
8
ジオス
1

「スポーツ」カテゴリ内を検索した結果である。カタカナ表記で検索したのでアルファベット表記でしか記載のないものは漏れてしまうが、フリガナ覧があり大体は読みが設定されているので大きな差はないだろう。
明らかに自転車でないもの(例えばジャイアント馬場とか)は減算した。必ずしも購入したものを紹介するばかりではなく憧れの商品なども含まれるので実勢を反映するわけではないが、知名度の参考程度にはなると思う。
こうして見ると、明らかにルイガノが抜きん出ている。次点の1.5倍ぐらいある。キャノンデールビアンキスペシャライズドがほぼ並び、ジャイアントが追随。折り畳みは知名度の高いメーカを選んだつもりだったが10程度と上位の半分しかない。
これだけ差が出る理由は恐らく単純なもので、ルイガノだけがカーボンモノコックのハイエンドロードバイクからマウンテンバイク、安価なシティサイクル、小径車に折り畳みとほぼ全ジャンルを網羅しているからだ。他にこれほど幅広い展開をしているメーカというと、ブリジストンサイクルぐらいしか思い付かない。


ところで。
ハイエンドな自転車とエントリーな自転車で最大の違いは「重量」である。無論それ以外にもサスペンションの装備とか(しかし本当にハイエンドのロードバイクにはそんな余計なものはない)ギアの段数とか色々あるのだが、最も大きく異なる点であり、その為に最新素材を投入しコストがかかるのが軽量化なのだ。先端の車種になると完成車体の重量は実に5kgを下回る。シティサイクルが大体16kg程度だから1/3以下だ。
が、これ実のところそんなに大きな差の出ない部分でもある。車体重量こそ大きく違うが、その上に乗る人間の体重はその差が霞むほど大きいので、「軽い自転車」よりも「軽い体重」あるいは「脚力の差」の方が大きく響いてしまう。10gの差を競うのはコンマ1秒以下の世界で争うレーサーだけで、それ以外の人にとっては大した意味もないのだ。
ということは、結局「大枚叩いて高級ロードバイク買っても安い台湾産に抜かされる」といった状況がしばしば発生するわけで……
タイトルの誤字修正。指摘に感謝。

*1:どうやらカナダ本国では自転車は扱っていない、もしくは日本で流通するシリーズは日本企画、台湾製造の独自ラインであることから「ブランドネームを借りただけ」と思われるようだ