階層的知識コミュニティ

教えて君」問題は知識ベースのコミュニティに特有の問題と言える。広い範囲ではコミュニティとは知識ベースのものであるから全てのコミュニティで同様の問題が発生しようが、知識を主体としないコミュニティではその発生率は低くあまり問題にならない。対して技術系コミュニティなどでは必ずと言っていいほどこの問題で荒れる。


教えて君が問題視されるのは、コミュニティ内の知識レヴェルに大きな差があるからではないだろうか。何かの知識体系について知りたい人が皆そこへ集うが、各々の知識レヴェルは0(調べる方法すら解らない)から99(解説書を書く側)まで様々である。赤児に言葉の説明ができないように、既に知ってしまっているものが何も知らないものに合わせて解説するのは難しい(喩えほどに困難ではないにしても)。
一般に、学習というのは少し上を見てこそ最大限の効果が得られる。山の麓に立って頂上を仰いでも果てしない道のりに絶望するだけだが、「取り敢えず1合上」であればなんとかなるような気がするものだ。また、数段上の相手と試合を行なってもただ叩きのめされて自らの無力さを思い知るだけだが、少し格上の相手ならば負けるにせよ得られるものは大きい。
同様に、技術知識についても「自分より少し詳しい」相手に教わるのが最も効果的というものだろう。


という論を前提として知識共有コミュニティの形を考えるに、何らかの形で知識レヴェルに応じた「輪切り」を行なう必要があるのではないだろうか。以前書いた例ではコミュニティの「見かけ上の」規模を抑えるシステムとして全体を知覚できないコミュニティのシステムを提唱したが、今回はそれをレヴェルを揃えるために行なう。どちらかというとゲームなどの話として書いたことと近い。
例えば、質問をポストしたユーザーに「質問」ポイントが、それに答えたユーザーに「回答」ポイントがつくものとする。また、回答のそれぞれに「参考になった」ボタンか何かが付けられ、それをクリックしたユーザーに「参考」ポイント、回答を投稿したユーザーに「秀逸」ポイントがつく。そして質問/参考を-、回答/秀逸を+として加算し、それらの重み付けによりユーザーをランキングすることで、自分のランクの上下一定幅ユーザーとしか交流できないような仕掛けを作る。
ユーザーAが質問をポストしたとき、それを閲覧できるのは少し上のランクにいるBと少し下にいるCだけであるとする。現在のランクから来る閲覧制限やその後のランク変動に関わらず、自分が一度でもコメントしたスレッドは全て閲覧できるものとする。ランク制限上、BからはCが、CからはBが互いに見えないが、質問A1への書き込みに関してはその制限外にあるため全て読むことができる。
下のランクにいるユーザーが現在のランクでは解決不能なほど高度な質問を発した場合、質問をリレーすることでより上位のユーザーからの回答を期待できる。具体的には、ユーザーAの質問A1を上位ランクのユーザーBがA2として再ポスト、更に上のユーザーDから回答を貰うといった流れになる。この場合「質問」ポイントがユーザーAからBに移り、Aは自動的に「参考」ポイントが振られる。


まだ細かいところまで詰めたわけではないが、このような感じで水平分割すると教えて君問題を抑止できるのではないだろうか。というか最下層が教えて君の溜まり場になって酷いことになりそうな気もするのだが、その分向上心のある人が上を目指し易くもある、ということで。