連写機能を越えるもの

連写デジカメを探していて思い出したのだが、そう言えばかつて連写よりもレリーズタイムラグ短縮よりも期待された「シャッターチャンスを逃さない」機能であるプリキャプチャはどこへ行ってしまったのだろうか。


pre-capcherとは名の通り、「予め取り込んでおく」機能である。具体的には、シャッター半押し状態で画像を取り込みメモリーに貯めておいて、シャッターが押し込まれた時点から数秒前までを記録するというもの。
例えば鳥の飛び立つ瞬間を撮影しようとしても、脳がそれを判断してから指がシャッターを押し込むまでに0.5秒程度の遅れが生じる為にまず巧く行かない。しかしプリキャプチャーなら、シャッターが押された瞬間(既に遅い)よりも前の写真が「撮れている」ためにシャッターチャンスを逃す事が無い。
連写に強いデジカメであっても、シャッターが切られた瞬間が既に遅れていれば期待した映像を撮影する事はできないわけで、この機能の有効性は極めて高いといえる。


斯様に素晴らしい機能でありながら採用例はごく少なく、この機能を搭載した民生機をオリンパスE-100RS以外に知らないのだが、恐らくこれはデジカメの画質向上に伴い電子シャッターが敬遠されてメカニカルシャッターに置き換わった事と無縁ではないだろう。
デジカメではフィルムと違って撮像素子が受けた信号を画像に反映させるかどうかをソフトウェアレベルで選択できる為、構造的には物理的なシャッターを装備せずともソフトウェアレベルでシャッター相当の処理が可能となる。しかし実際には、データ読み出し中に強い光を受けると信号が溢れ出して線上のノイズが発生する「スミア」という現象を避けられない。
また、信号を一列づつ読み出すような転送システムの撮像素子では、撮影中にカメラが動かされた場合読み出しタイムラグの関係で像が歪んで見える事がある。
これらを避ける為に、最近のデジカメは全てメカニカルなシャッターを装備しているが、そのような機種でプリキャプチャーを行おうとすればデメリット覚悟で電子シャッターに頼るか、或いは半押し状態でメカニカルシャッターを作動させて撮影し続ける必要がある。後者の場合、実際にシャッターが押された瞬間にプリキャプチャーのシャッター動作とユーザーの撮影操作がコンフリクトする可能性を避けられない問題点があるので、現実的に可能な処理は前者ということになるが、そうなると画質の面で悪影響が懸念される。


かくしてフラグシップ機からは消えたプリキャプチャーであるが、普及価格帯レベルで高倍率ズーム機が増加している昨今、逆にじっとシャッターチャンスを伺う機会はむしろ増加傾向にあるのではなかろうか。
デジカメが写真機として認められ普及した今こそ、この機能が復活を果たすべき時だと思うのだが。