異世界禁忌

小説家になろう」などを中心に異世界ものを色々読んでいると、話の面白さとは別のところで「粗が目に付く」場合が少なくない。
基本的には物語の大筋には関わらない、重箱の隅をつつくような話ではあるのだが、実は意外に世界設定の根幹と関わってくるような部分が適当に扱われていると、細かい積み重ねが全体の迫真性を損うことにもなりかねないのではないかと思う。
以下はそうした「私が気になる」部分を列挙したものである。

単位

単位系は量を想像する目安として使いやすいため、意識的にせよ無意識にせよ慣れた単位を安易に使いがちである。しかし世界が違えば基準も違うのが当然であり、どうしても現世地球の単位系に寄せないと説明が難しいというのでもなければ、異なる基準単位を設定しておくか、あるいは単位には言及しないようにするのがいいだろう。

長さ

日本では一般的にメートル法が使われるが、これは元来「地球の大きさを計算し、子午線弧長(つまり「赤道から極までの長さ」)を一千万分割した長さ」を基準としたものである。従って異世界に於いてメートル法を基準とした距離単位、センチメートル・ミリメートル、キロメートルなどが存在するはずはない。
もちろん、「偶然にも」およそ1メートル程度の距離単位が採用されている……という可能性がないわけではないが。

現実世界の単位の中では、1ヤードが0.9mほどと比較的近い長さを持つ。が、副単位フィートとの関係性は1yd=3ft、更に副単位インチとの関係性は1ft=12inとなるためセンチやミリなどの単位とはまったく合わない。

伝統的な長さの単位はだいたい「身体尺」すなわち体の大きさを基準として決められたようなものが多い。たとえば「指先から肘まで」を基準とするキュビト、足の大きさに由来するフィート、他にも「太陽が地平にかかっている間に歩ける距離」に由来するスタディオン、などがある。
こうした単位は身体感覚にフィットして扱いやすい反面、基準が厳密でないために人によって、地域によって、時代によって単位が変動する扱いにくさもあり、商取引などの発達に伴い「どこの地域でも共通で使える明確な単位」が要求されるようになってゆくのだが、逆に言えば国際共通単位が協議されるような近代的時代性でもなければむしろ国によって違いがあるぐらいが普通ということでもある。

重さ

日本で扱われるのはグラム単位で、これは「水1立法センチメートルの重さ」が基準となっていた(正確には1リットルの重さである1キログラムの方が基準単位なのだが)。
異世界でも水は水として存在すると思われるので水を基準とした重量単位が作られても不思議ではないが、長さの単位が違えば基準となる体積も異なるため、グラムに近似した単位系が作られる可能性は小さい。

伝統的な単位系では1ポンドが450gほど、1貫が3.75kgなど単位がぜんぜん合わない。しかしこの400g前後の単位系はむしろキログラム単位よりも手に持った時の重量感とマッチするという話もあり、感覚的単位系としては相応しいのかも知れない。

重量単位は穀類の取引などに用いられるものが起源となったため、たとえば「麦180粒の重量」などが基準単位として用いられ、そこから「一定単位の穀類と等価で取引される量の貴金属」が貨幣として定量化され、同時に重量単位にもなったりしてきた。その名残りなのかどうか、たとえば日本の五円玉は1匁=3.75gなのだそうだ。

時間

時間の単位は地球の自転周期を基準に定められており、1周期=1日を24分割して「時」、60分割して「分」さらに60分割して「秒」が定められるが、異世界の1日が地球の1日と同じ長さであるとは限らない。24や60で分割されたのにはそれなりの理由があり、これは異世界でもそうなる可能性があるものの、必ずしもその長さが丁度良いとも限らない。たとえば江戸時代までの「一刻」は現代のおよそ2時間相当だったし、ついでに日の出と日没を基準に分割するため時期によって長さが変化した。
また1年が365日程度であるのは地球の公転周期がたまたまそうであったに過ぎず、1ヶ月が30日程度であるのも月齢の周期に合わせたものであって、異世界の1年や1ヶ月がそうであるとも限らない。
1週間が七曜であるのは更に理由がなく、単にバビロニア天文学で定めた天体の守護日が各地に伝わったに過ぎない。江戸時代まで日本は六曜だったし、五曜制や十曜制を採った地域もあった。もちろん「月」曜日や「日」曜日はまだしも、火や木などが曜日に使われるべき理由もない。

ところで時間の問題とは少し異なる話だが、実は地球に於ける月というのはなかなかに特異な存在である。主星たる地球のサイズに比して衛星である月が過剰に大きく、地上から見た時の視直径が太陽とほぼ等しいという偶然の故に、月と太陽の重なり具合によっては輝きを完全に覆い尽くせず「金環蝕」などが生じる。他の世界では、同様の光景が見られる可能性は低い。

数字

現在の世界では主に十進法が用いられているが、古くは十二進法も少なからず用いられてきた。今でも1ダース=12や1グロス=144などの個数単位はその名残りだし、1フィート=12インチなど長さの単位としても残存している。
言うまでもなく十進法は両の手指を折って数えたことによるものだが、10という数は分割しにくい。翻って12は4分割できるために(少なくとも10よりは)都合が良く、それもあって時間単位は12分割および10と12の公倍数である60分割を用いたのではないかと考えられる。つまり異世界でも(人類の手指が5本ならば)10進数と12進数が混在し、時間がそれらを基準に分割されるとしても不思議はない。

ところで数の進法は当然ながら物量の単位系や貨幣単位にも影響する。十二進法を基準とした数体系を持つ文化では12個がひとまとまりの単位となるし、通貨も12枚単位で両替されるだろう(そもそも桁の繰り上がりが10ではなく12ごとなのだから当然だが)。
とはいえ、必ずしも10や12単位であるとは限らない。日本は古くから十進法だが、通貨は金貨の単位である「両」の下は1/4にあたる「分」、更にその1/4である「朱」と十進数に沿っていない。銀貨は重量単位で使われていたため銀1貫=1000匁=10000分と十進数基準であり、「銭」の方は枚数で扱うために十進数準拠でありながら(少額貨幣であるため)しばしば紐に通して一定数をまとめて扱う習慣があり、100枚をまとめた「銭緡」はどういうわけか96枚1セットで100枚分として扱われる慣習があったそうだ。
翻って現代では、通貨単位はほぼ10進法に準拠しているが、両替単位は必ずしも1:10のみではなく、日本円では5円・50円・500円など半額通貨が存在するし、20ドル紙幣のように倍額通貨も使われる。

方位

方位は身体を基準としたローカル座標としての「上下前後左右」と、グローバル座標である「東西南北」が存在する。
このようなローカル方位になるのは、人間が重力圏内という「上下」のある場所に生息し、また移動方向である前後軸に対して左右で対称な構造を有しているからだ。これが水を漂うクラゲのような生き物だったら上下の別はあるが前後左右の区別はないし、重力のない世界だったら進行方向の区別による前後があるだけで上下左右がなくなるだろう。
グローバル方位が4分割であるべき理由はそれほど強くないが、「ある方角の逆」を示すために線対称構造ではあるべきだろうし、また均等分割であるべきとは思われ、従って5方位や7方位は使われにくいと考えられる。
まあ現実問題として「東西南北」の4方位以外の方位を作ると、それを示すための語を当てる必要に迫られるため描写も読解も困難になるという事情もあり、こればかりは現実と同じ4方位を継承するのが妥当だろう。

言葉

当然ながら異世界で現実世界の言葉が使われているはずもないが、作者も読者も現実世界の言葉しか理解できないのだから、ある程度は「翻訳」と考えれば飲み込める。もちろん「明らかに異世界にはないもの」に由来する言葉の使用は避けた方が良いが、そうとは意識しにくい言葉も少なからずあり、切り分けは容易ではない。
むしろ単語そのものよりも、「異世界の語にはないはずの概念」が使われる方が雰囲気を壊すだろう。たとえば等級を示すのに「一等」や「特級」などはわかるが「S級」のような使い方は「そのSってなんだよ」という気分になる。それよりは「金/銀/銅」などの方が相応しかろう(異世界でも金属の希少性評価が同じなのか、という別の疑念は持ち上がるものの)。
逆に言えば、そういった部分に「現実世界とは違う」概念の適用を演出できれば、それだけで異世界感をぐっと高めることができる。

もちろん転生ものなどでは、主人公視点に限れば異世界にない概念を用いても問題はない。しかし他のところでは使われないよう、切り分けが必要になる。

本好きの下剋上 ブックガイド

累計部数100万、2017年・2018年の「このラノベがすごい!」で連続1位という人気作「本好きの下剋上」が、ようやくアニメ化されることになった。
booklove-anime.jp
話題となったので、今から読んでみようという人も多いだろう。しかし刊行数の多さで混乱しがちと思われるので、ガイダンスを書いてみた。

本好きの下剋上」とは

2013年9月から2017年3月まで、3年半にわたり「小説家になろう」で連載され続けた異世界転生ビブリオ・ファンタジー。「本のためなら死んでもいい」書痴娘が、本の手に入らない世界に転生し「だったら自分で作ろう」と奮闘する物語である。
原作となる「小説家になろう」版のほか、TOブックスから刊行中の書籍(現在第四部の半ば)、ニコニコ静画ほかWeb漫画サイト各所で連載中のコミカライズ(第一部完結、現在第二部・第三部平行連載中)がある。

書籍版公式サイト

www.tobooks.jp

漫画版(ニコニコ静画)

seiga.nicovideo.jp
seiga.nicovideo.jp
seiga.nicovideo.jp

本好きの下剋上」はそのタイトル通り、なんの力も持たない貧しい平民の病弱な幼女が、「好きなだけ本を読める世界」の実現を目指して成り上がってゆく物語だ。出世のたびにできることが増え、関わる世界が拡がり、引き起こされる事件が大きくなってゆく。
本作は全五部で構成され、それぞれに主人公の立場が変化し、それを取り巻く環境も大きく変わる。
そのうち第一部および第二部までがアニメ化されるのは確実と見られるが、第三部以降がどうなるかは今のところ不明。
各部の概要を解説する。

第一部

平民編。本を作るために、まずは紙(もしくはそれに代わるもの)を作ろうと奮闘する主人公が、しかし生来の虚弱ゆえに自分自身では何もできず周囲を振り回す。
当初は本を読めないことの絶望と、「見知らぬ家族」への馴染めなさから本作りへの希望に逃げ込み、身勝手な振る舞いを見せるものの、徐々に周囲の人との絆ができ、助け合うようになるまでの成長物語……なのだけれど、序盤の身勝手さで嫌気がさして読むのを止めるという人も少なくない。とりあえず中盤からの重要キャラ、商人ベンノが出るぐらいまでは読んでいただきたいところだが、どうせなら完結済のコミックス第一部(全7巻)から読み始めた方がマイルドかも知れない。

漫画

第二部

神殿編。厳格な身分差のあるこの世界で、貴族社会と平民社会の間に位置する神殿を舞台に、高級品である紙の主要顧客となる貴族との付き合いや、その貴族相手に商売する高級店のやり方を学んでゆく。
第二部もコミカライズされている(第一巻が4月末に刊行予定)が、書籍版で3冊分の第一部を描き終えるまでに3年かかったことを鑑みるに、第二部4冊分も完結までには4年ほどかかると思われ、アニメ放映までに第二部を漫画で読み終えることはできそうにない。ここは書籍版で予習しておきたい。

第三部

貴族編。平民のままでは守り切れなくなったため、貴族としての経歴を与えられ、領主の養女として生きることに。一気に権限が大きくなったので製紙・印刷が急進する一方、取り巻く社会も拡がり、関わる事件も大きくなってゆく。
コミカライズは第二部と平行で進められており、第三部の方が若干早くに刊行されているため漫画で追う人は買い間違いに注意。

第四部

貴族の子供たちが通う魔法学校編。ここからは大人の庇護を離れて子供だけで貴族社会を乗り切ってゆくことになるが、なにぶん貴族の(というかこの世界の)常識に欠ける主人公はあちこちで騒動を巻き起こし、その報告を受けて保護者たちが頭を抱える。
現在書籍が刊行中、コミカライズは未定。また、外伝が1冊刊行されている。

書籍

E-M1X:手ぶれ補正のウェイト/コストパフォーマンスを考える

オリンパスが世界最高の手ぶれ補正を誇るフラグシップ機「OM-D E-M1X」を発表した。
www.olympus-imaging.jp
ボディ内手ぶれ補正機能のみで7.0段、レンズ側の手ぶれ補正機能との連動によって7.5段という飛び抜けた性能である。7段の補正があればISO25600が必要だった明度をマイクロフォーサーズの基準感度であるISO200で撮影可能だということになり、増感ノイズに不利のあるマイクロフォーサーズにとっては大きな意義がある。
反面、マイクロフォーサーズ機とは思えぬサイズと重量、そして価格に対しては懐疑的な声が少なくない。「マイクロフォーサーズのくせに」 的な表現はともかく、要約するならば「これだけの重さを我慢してでも使うべき/この金額を払ってでも手に入れるべき性能なのかどうか」に尽きる。

カメラというのは高いものでも安いものでも基本的な機能自体にそう大きな差はない。ならば何に対してその差額を支払っているのかといえば、要するに「限界の高さ」、性能ギリギリを攻めた時に「どこまで使いものになるか」の余裕の違いだ。普段そこまで使うことはないとしても。
個々の性能について優劣を競うことは可能でも、「大きさや金額に見合う性能か」を問うことは難しい。そのあたりは価値判断の問題で、どうしても必要な性能ならば重量も価格も障害とはならないし、逆に制約があるなら性能を諦めざるを得ない。
つまり価格や重量と性能は比例的関係になく、個々の要不要は段階的であるため価値を相対化するのが難しい。
しかしそれでは「性能の割に高い/安い・軽い・重い」といったことを判断しにくいので、乱暴なやり方ではあるが「補正力1段分あたりの重量および価格」を計算してみた。

手ぶれ補正力の重量・価格比

現時点でボディ単体での販売がある、5軸手ぶれ補正搭載の全機種について、価格.comに記載された最安価格とカタログスペック上の重量(バッテリ等を含む起動時の重量)を手ぶれ補正の段数で割って、補正力1段あたりのパフォーマンスを算出した。

メーカー 機種 手ぶれ補正 重量 重量比 価格 価格比
オリンパス OM-D E-M1X 7段 997g 142g/段 ¥328,530 ¥46,933/段
オリンパス OM-D E-M1 mk2 6.5段 574g 88g/段 ¥159,988 ¥24,614/段
オリンパス OM-D E-M5 mk2 5段 469g 94g/段 ¥59,938 ¥11,988/段
オリンパス OM-D E-M10 mk3 4段 410g 103g/段 ¥52,731 ¥13,183/段
オリンパス PEN F 5段 427g 85g/段 ¥95,000 ¥19,000/段
メーカー 機種 手ぶれ補正 重量(本体/起動時) 重量比 価格 価格比
パナソニック LUMIX DMC-GX7MK2 4段 426g 107g/段 ¥39,980 ¥9,995/段
パナソニック LUMIX DMC-GX7MK3 4段 450g 113g/段 ¥71,979 ¥17,995/段
パナソニック LUMIX DMC-G8 5段 505g 101g/段 ¥82,600 ¥16,520/段
パナソニック LUMIX DC-G9 6.5段 658g 101g/段 ¥125,968 ¥19,380/段
パナソニック LUMIX DC-GH5 5段 725g 145g/段 ¥172,000 ¥34,400/段
メーカー 機種 手ぶれ補正 重量(本体/起動時) 重量比 価格 価格比
富士フイルム X-H1 5.5段 673g 122g/段 ¥178,769 ¥32,503/段
メーカー 機種 手ぶれ補正 重量(本体/起動時) 重量比 価格 価格比
ソニー α6500 5段 453g 91g/段 ¥96,572 ¥19,314/段
ソニー α7 II 4.5段 599g 133g/段 ¥103,591 ¥23,020/段
ソニー α7R II 4.5段 625g 139g/段 ¥174,868 ¥38,860/段
ソニー α7S II 4.5段 627g 139g/段 ¥238,804 ¥53,068/段
ソニー α7 III 5段 650g 130g/段 ¥187,381 ¥37,476/段
ソニー α7R III 5.5段 657g 119g/段 ¥265,820 ¥48,331/段
ソニー α9 5段 673g 135g/段 ¥370,000 ¥74,000/段

5段手ぶれ補正機構を搭載したカメラの中で最安なのは、既に後継機が登場し絶賛型落ち中のLUMIX GX7mk2である。5軸補正機の中では4段分と性能はやや劣るものの、4万を切る価格は飛び抜けて安い。そのため手ぶれ補正力の価格比は突出しており、また小型で軽い機種のため重量比も悪くない。入門用や手軽なサブ機などにおすすめできる。
価格比では発売時期がやや古いOM-D E-M5 mk2、エントリーモデルのOM-D E-M10 mk3が続く。マイクロフォーサーズ以外ではソニーα6500が比較的コストパフォーマンス高めだが、PEN Fとの比較では若干見劣りする。全体に、安価軽量で手ぶれ補正に優れたマイクロフォーサーズの優秀さが見える結果だ。

本体重量が軽いのはOM-D E-M10 mk3だが、補正力の弱さから重量比では最高とは言えない。11gほど重量が増えるものの5段の補正力を持つPEN Fが、軽い割に強い補正力で優れている。ただ価格は少々高めで、気軽には勧めにくい。
面白いことに、本体価格ではもう一段高いLUMIX DC-G9が、手ぶれ補正力の高さゆえに価格比では近い数字を叩き出している。というか6.5段で13万弱って、安すぎませんか……

肝心のOM-D E-M1Xは、バッテリ2個搭載ということもあり重量比142g、価格比も¥46,933と、コストパフォーマンスはあまり良くない。バッテリ装着時の重量でいえばLUMIXのGH5に続いて悪い値で、価格比でもα9ほどではないものの4番目に悪い数値だ。もちろん、これらの数値は手ぶれ補正のためだけにここまで嵩むものではなく、他の様々な性能を加味して判断すべきものだが、とはいえ「既に6.5段分が実現されているところで+0.5段のわずかな違いにそこまで出せるか」という観点で見ると、たしかに厳しいものがある。

E-M1Xの真価

このように、単純に重量や価格との比較で見るとE-M1Xは「お買い得とは言えない」。とはいえ、他メーカーを突き放す絶対的手ぶれ補正能力に加えて「手持ちハイレゾ」や「電子NDフィルタ」といった他機種では得られない機能は、それだけのために重量を我慢し高い金を払っても惜しくないと思わせるものがある。

E-M1Xは恐らく「最高の手ぶれ補正」だけを突き詰めて作られた機種だ。レンズとのシンクロで最大7.5段、「手持ちで4秒が実用域」という恐るべき性能をまずは現実のものとし、「だったら何ができるか」を問うた結果としてライブNDによる「日中でもスローシャッターを常用する」カメラが実現した。ND2〜32相当、即ち最大5段分のスローシャッターを、フィルター装着も三脚利用もなしに、気軽に利用できる。そのことに価値を見出すかどうかが、E-M1Xに対する評価の分かれ目ではないかと思う。

「工事の要らない食洗機」を導入してみた

自動化できる仕事はなるべく自動化するべきだと思っている。
最近は家事の自動化がずいぶん進んだ。洗濯機は自動家事装置の中でも古い存在で18世紀頃には既に存在したが、20世の終わり頃には乾燥機能の導入によって干し物という作業がなくなり、また天候に関わらず洗濯できるという大きな利点も得た。
掃除についてはまだ自動化の幅が狭い、というか床のゴミ除去や拭き掃除程度までは実現できているものの他の場所までは手が回らず、また自動化の困難な「片付け」との関係性が深いために導入可能環境が限られる。
衣類については最近ようやく自動畳み機が登場したが、複雑な動作の故に高価で大型、まだ一般家庭に導入できるレベルではない。

家事の中では洗濯乾燥と並んで自動化の進んだ分野のひとつが、食器洗いだ。実はその成立は古く、19世紀の末には現代のものとほぼ同様の水圧式温水洗浄方式が発明されている。しかし日本で家庭に普及し始めたのは21世紀に入ってからだ。
我が家でも食洗機の導入は検討していたのだが、如何せん住居の設計時期が古いために食洗機の存在が考慮されておらず、置き場の確保が難しかったために見送りとなっていた。しかし近年、小型で水まわりの工事も必要がない機種が登場したので、導入してみることにした。

本体サイズは高さ42cm、だいたいA3サイズの長辺ぐらいである。幅もほぼ同一。奥行は若干控え目の38cmだが、背面には取り外し可能な水タンクがあるので、壁との間は少し空けておいた方が良いかも知れない。
設置は、基本的に電源ケーブルをコンセントに挿すのと排水ホースをシンクに入れるのと、それだけで終わりである。あとはカゴを取り出して付属の金網フィルタをセットしておく程度。

水タンクは本体裏側にあり、上部に直径8cmほどの注ぎ口がある。ここに6リットルの水を注ぎ入れてやればいい。タンク右側面には注ぎ入れるべき最低量と最大量を示す線があるが、これはかなり接近している(つまり、「最低でもここまでは入れなければならない」分量と「これ以上入れてはならない」分量の差が小さく、注意を要する)。水を注いでいると、動作に必要な量が確保された時点で本体から短かく電子音が鳴るので、それを目安にするといいだろう。
付属の水差しで何度かに分けて注ぐのでもいいし、それが面倒ならタンクを外して蛇口から直接注いでもいい。

コンパクトな機種だけに、内容量は小さい。メーカーによる収納例ではたとえば椀・平皿・コップ・箸・フォーク・スプーン各4ぐらいを一度に洗える、とあり、4人程度の一食分を確保できそうにも見えるが、 たとえば飯椀と汁椀と取り皿、それに惣菜を盛った大皿が2枚……ぐらいになるともう溢れる。というか普段使っていた直径25cmほどの平皿が収まらなかったりするので、この辺りは「食洗機に合わせて食器や料理の数を最適化する」必要がありそうだ。

食洗機用洗剤を入れる口などはなく、固形洗剤は「排水フィルタの上に置く」、液体あるいは粉末洗剤は「ドアにぶっかけておく」……いいのかそんな適当で。とりあえずJOYのジェルタブレットを買ってきた。

【大容量】 ジョイ ジェルタブ 食洗機用洗剤 60P 930g

【大容量】 ジョイ ジェルタブ 食洗機用洗剤 60P 930g

コースは「ソフト/強力/標準/スピーディ」および乾燥のみ、の5コース。このうちソフト洗いは乾燥を行なわないコースで、強力/標準/スピーディは要するにすすぎ洗いを3回/2回/1回行なうコース。大雑把に、すすぎ1回あたり10〜15分程度、+乾燥工程に30分〜1時間程度でコースが構成されている。コースにもよるが、1回の処理で1〜2時間程度だろう。

専用洗剤にはクレンザー成分も含まれているんだろうか、洗い終えた食器は曇りなく磨き上げられて人の手で洗うより余程綺麗になる。ただ、表面にプリントしてあるものなどはそれも剥がれ落ちてしまったりするので、手洗いにしなければならないものも出てくるが。

手作業での食器洗いにかかる時間というのは、まあシンク一杯に溜め込んでいても精々30分ぐらいだろうか。それを食洗機に任せると1時間ぐらい、分量も1/3ぐらいしか入らないので3倍ぐらいかかることになる。これは大型の機種ならばその分だけ効率が良くなるけれども、単純比較してしまうならば人力よりも効率は悪い。
けれども溜め込まず、1回で洗える分だけ適宜処理してゆくならば極端に悪くはないし、なにより人の手がかからないのは大きい。
家族がちょっとづつ使用する、箸や小皿やコップ……その度に洗ってくれれば、一人あたりの労力などそう大したものではないが、食器棚から出してきてはちょっと使ってすぐ流しに下げて、また新しいものを出して……とやられるとあっという間に溜まり、量があると洗いものも億劫になる。そういう積み重ねを断ち切って、都度食洗機に入れ、一杯だったら水と洗剤を放り込んで回す、というサイクルができれば、家事はまたひとつ楽になる。

冬支度

今年の夏前から、雨の中で撮影できるように雨具を傘ではなくレインジャケットに替えた。軽くて邪魔にならないし、ちょっと肌寒い季節には上着代わりにもなる。なにかと便利ではあったのだが、冬が迫ってくると流石にこれでは対応できなくなってくる。コートの上から羽織れるものではないし、かといって防寒能力はない。
となれば冬季には別の雨具を用立てる必要がある。しかし保温性と防水性を両立させようと思うと意外に難しい。
というわけで、冬に雨と寒さを防ぐための防水コートを探してみる。

防水性のあるコート

最近はコートにも撥水加工を施したものは少なくないし、撥水スプレーなども売っているから、普通のコートで雨を凌ぐこともできないわけではない。けれど撥水はあくまで表面に付着した水が落ちやすいだけであって、雨が染みるのを防ぐものではない。
あるいは労働着やフィッシングウェアなどで耐水性の防寒具はないこともない。ただ、どちらもスーツの上から着るにはちょっと向かない感じがする。
またスノーウェアならそこそこの耐水性が付与されていて、当然ながら保温性も高い。ただ基本わりとカジュアルなデザインなので、やはりスーツに合わせるものではない。
というわけで百貨店の紳士服売り場やアウトドア系の売り場で「スーツに合う防水・耐寒のコート」について相談してみた結果、候補として挙がったのが以下のふたつ。

MICHEL KLEIN HOMME ダウンコートブルゾン

「アウトドアにもスーツにも合う」をコンセプトにした、耐水圧11,000mm、透湿度8,500g/m^2/24hの防水透湿アウターとダウンブルゾンのインナーという組み合わせのコート。暑ければアウターだけでもインナーだけでも羽織れるし、合わせれば相当な保温性を発揮する。

Haglöfs SILJAN Parka

スウェーデンのアウトドアブランド「ホグロフス」のロングコート・パーカ。
ほとんどのアウトドア系防水ジャケットは表面がナイロンなどのシャリシャリした生地であることが多いが、これはポリエステルとコットンの混紡による、帆布のような手触りの生地を用いている。また深いフードの縁が厚手で直線的に揃えられており、これが襟を兼ねるデザインが特徴的。
内側は上半分がボア、下半分が中綿入りで非常に暖かい。また袖口にも内側に雪や風を通さないリブ付きで、防寒への配慮が徹底している。

タッチパネル対応の手袋

ところで新しいiPad ProがFaceIDに対応した。これまではTouchIDのために冬でも手袋を脱いで指を当てる必要があった(それを回避するための手袋に貼る指紋風シールまであった)のだが、これからは顔さえ出ていれば認証が可能なので手袋を着けたまま操作はApplePencilですればいい、と思ったら認証の後画面下からスワイプで開く必要があり、この動作はApplePencilではできないのだった。
もちろんタッチパネル対応手袋を使えばその問題も乗り切れる……はずなのだが、実際には結構反応の悪い手袋も多く、使えるものを見極める必要がある。
売り場で片っ端から手袋を試着してみた結果、ちゃんと反応する手袋はかなり限られた。その中でいちばんデザインが好みだったのがMackintosh Philosophyのヘリンボーンツイードだったのだけど、Amazonには商品がないのでZOZOタウンをリンクしておく。
http://zozo.jp/shop/mackintoshphilosophy/goods/35258775/?did=60676072
まあでもタッチパネル手袋は指を奥まで入れないと反応が鈍るので、自分の手に合ってちゃんと操作できるものを試着して選ばないと巧く行かないと思う。

花井沢町公民館探訪(1):花井沢町はどこにあるのか

「花井沢町公民館便り」は、架空の小さな町に引き起こされた「生物だけを通さない」障壁の暴走事故と、その結果として外界と隔てられた閉鎖社会を描くSFである。

「一生この町に閉じ込められ、決して出られない」ことを除けばごく普通の町である花井沢町。それは一体この日本のどこにある町なのか。

作中の描写を確認する

作中では花井沢町の場所が明らかにされたことはない。そもそも架空の自治体であるから明確にこれと比定することも難しいが、しかし断片的な情報から漠然と位置を想像することはできる。
まず、「町」であるから区政を敷く東京23区や政令指定都市内ではなく、また市制ではない地域に限定される。都内でいえば西多摩郡あたり、もしくは隣接県のどこかということになるだろう。
また作中の描写から、だいたいの距離関係が推定できる。

乗り換えなしで妻の職場へ40分 ぼくの職場へ25分
都心へ出るのも楽ちんな 小さな町です
(3巻 15号)

「ねー 花井沢って行ったことない どんな?」
「えー どんなって フツーだよ フツーの…ベッドタウン?」
「へー うちのまわり高層マンションばっかだよ うちもだけど」
「えーまじで そゆとこ入ったことない うち一軒家」

「花井沢は〜〜一軒家が多いかも〜〜♪」

「家までどんくらいかかんの?」「40分くらいかなー」

「てか花井沢で止まっちゃってるぽくない? あたしの線動いてる」
「他の線とかバスで遠回りして帰れないの?」
「1本しか通ってない」

「全然帰れない感じ?」
「これ動いてなかったら無理」「急行停まんないような小ちゃい町だからさー」
(3巻 19号)

公民館便り19号では、少女たちがカラオケやショッピングに繰り出した先が「花井沢から40分ぐらい」と3巻15号の「妻の職場」と同じぐらいの距離で、「都心へ出るのも楽ちん」。都心というのは大都市圏の中心部を指す語であるから地方大都市について用いることもあろうが、一般には東京都の商業中心部、つまり渋谷・新宿・池袋あたりを指すと考えるべきだろう。作中に方言が見られないことからも地方都市ではなく東京である可能性が高いと言える。
また、ここで言う急行はJRのような急行券を必要とする特別列車の類ではなく、普通乗車券のみで乗れて途中駅を飛ばして停車するタイプの私鉄急行であろう。
以上から、池袋・渋谷・新宿を起点とする私鉄のうち、各駅停車で25〜40分ぐらいの距離にあり、かつ急行停車駅ではない駅のうち23区外、できれば町に所在するものがあれば、そこが花井沢のモデルである可能性が高いのではないかと思われる。
駅間経過時間をおよそ2〜3分程度と見積れば、起点駅から数えて13〜20番目ぐらいの範囲に、高層マンションがなく一軒家の多い「花井沢」駅が存在するだろうと想定される。

都心駅から40分の駅を探す

新宿駅

新宿には複数の新宿駅があり、7本の私鉄が乗り入れている。
そのうち23区内を巡る山手線、東京メトロ丸の内線および都営大江戸線新宿線の4路線については条件に合わない。残る埼京線湘南新宿ライン中央・総武線西武新宿線京王線小田急線の駅をカウントしてゆこう。

西武新宿線

西武新宿線は13〜20駅の間に各駅のみ停車の駅がひとつもない。準急まで許容するならば武蔵関、東伏見西武柳沢の3駅が候補となる。
なお16駅目の田無以遠は急行が各駅に停車するようになるが、所要時間情報で見ると各駅停車で40分の距離にあるのは19駅目の久米川である。

京王線

新宿から数えて13駅目に当たるのは「つつじが丘」。ただしこの駅は急行停車駅である。だとすれば柴崎・国領・布田のいずれかだろうか。
調布駅以降の西調布・飛田給・武蔵野台は快速が、相模原線に分岐した京王多摩川京王よみうりランドは快速および区間急行が停車する区間となる。

小田急

13番目の成城学園前は急行停車駅。各駅のみ停車する駅ならば喜多見および読売ランド前、準急も含むならば狛江および生田も候補になる。

渋谷駅

都区内の東京メトロを除くと東急東横線東急田園都市線京王井の頭線の3私鉄が走っている。

東急東横線

13〜20駅範囲内で各駅のみ停車するのは大倉山・妙蓮寺・白楽・東白楽・反町の5駅。
ただし東横線は横浜へ向かう線であるため、この範囲からであれば渋谷へ向かうより横浜へ向かう方が繁華街へ向かうには適切と思われ、またいずれも横浜市区内であるため、花井沢町の立地条件に合わない。

東急田園都市線

13〜20駅目では江田・市が尾・藤が丘・田奈の4駅が各駅のみ停車する。

京王井の頭線

17駅しかない路線であるため終点の吉祥寺まででも渋谷から40分かからず、また吉祥寺がなかなかの繁華街であることも考えると条件に合わない。

池袋駅

東京メトロの他は西武池袋線東武東上線の2私鉄のみとなる。東京メトロ有楽町線は珍しく区内を出る線であるが、8駅目の和光市以降は東武東上線への乗り入れとなるので今回は考えない。

西武池袋線

13駅以降で準急・通勤準急・快速の止まらない駅はなく、急行が止まらないのは清瀬・秋津のみ。

東武東上線

13〜20駅目のうち柳瀬川・みずほ台・鶴瀬・上福岡・新河岸の5駅が、各駅のみ停車する駅である。

これで「都心から40分」「急行が止まらない」を満たす駅をリストアップできた。次にこれらを地図上にプロットして半径1km円を描いてゆく。これは「鉄道路線が1本しか通っていない小さな町」であることを確認するための作業である。
一見して、新宿からの京王線および渋谷からの田園都市線西武新宿線の新宿寄り側などでは駅間が狭いことが見て取れる。
花井沢町にはあくまで「線路が1系統しかない」のであって「駅がひとつしかない」とは限らないのだが、1巻2話で「1丁目の端っこを横切ってる電車」とあることから市街の中心を抜けてゆく感じではなさそうで、しかも小さな町であることを考え合わせるに、駅ひとつのみである可能性は高そうに思われることから、駅間が1km程度しかない場所は候補地から外しても良いのではないだろうか。
だとすると候補駅はぐっと絞られ、西武池袋線 清瀬駅東武東上線 上福岡および新河岸ぐらいしか該当がない。

花井沢町の場所を確認する

ただ、上でも述べたように花井沢はそもそも架空地名であるから、すべての条件を満たす場所があるからといってそこが即ち花井沢だということにはならないし、逆にこれまでの条件から外れる場所であっても「花井沢のモデル」となっている場所というのは有り得る。
たとえば都内で町政を敷くのは西多摩郡に属する瑞穂町、日の出町、奥多摩町の3町しかないが、このうち山間の奥多摩町は面積的に決して小さくなく、また都心から40分の範囲をかなり離れる。また日の出町には鉄道駅がない。瑞穂町は鉄道が八高線箱根ケ崎駅しかない点で花井沢の特徴に近いが、JRを乗り継いで1時間以上と少々遠く、少なくとも花井沢そのものでは有り得ない。

さて、ここでひとつ気になるのが、西部新宿線 花小金井駅である。
新宿から各駅で17駅目、花と井を含む地名……と条件適合率は高く、また周辺駅からは距離があり孤立している。駅周辺に5階建を越える高い建物はなく、主に一軒家で構成される住宅地である点も、花井沢町の描写と合う(まあこの周辺は大体どこでも似たようなものか知れないが)。ただし特急および通勤急行こそ通過するものの急行は停車する駅であるし、小金井市自体が町ではなく市であり、西武鉄道路線だけで4系統に加えてJRが走る場所であるから自治体としては条件に合っているとは言えない。
だが、それはあくまで花井沢ではない自治体としての話であり、仮にこの辺りに小金井市とは別の自治体として花井沢があったとすれば、かなりそれらしくなるのではないだろうか。

となると、だいたい「瑞穂町を花小金井の位置に持ってきた」ぐらいが、作中の架空地域としての花井沢町のイメージにもっとも近いのではないだろうか。

「都心」駅はどこなのか

3巻19号には、カラオケで夜を明かした女子高生が帰ろうとして鉄道事故で足止めを食らうシーンがあり、ここで花井沢へと向かう鉄道の駅入口が描かれている。
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明らかに「JR」と書かれているので、この駅はJRと私鉄各線の改札が隣接するタイプの駅なのだろうと推測されるが、残念ながらこの入口のモデル駅がどこなのかは判明していない。
今後の検証が待たれる。

iOSアプリ内での課金承認がトラブった

iOSのゲーム内課金でトラブって、操作ができなくなってしまった。
運営元に問い合わせたら「Appleに問い合わせろ」というのでそうしたけど、Apple側には課金情報がなかったので対応しようがない。
そのように運営に伝えても「Appleに」の一点張りで、埒が明かない。

経緯

課金に関するトラブルが発生したのは、A社が運営するTオンラインというiOS用のオンラインRPGである。購入リクエストが承認状態にならず、「承認を待っています」のまま一切の操作ができなくなってしまった。

iOSでは、自力決済手段を持たない未成年のアプリインストールやアプリ内購入については、決済権を持つファミリーアカウントに承認リクエストが送信され、パスワードあるいは生体認証によりこのリクエストを承認するとダウンロードや購入が可能になるという仕組みがある。
子供からアプリ内課金の申請があったため了承し、支払いリクエストを承認したところ、完了前に予期せぬ割り込み操作が発生したために承認が立ち消えてしまった。
どうやら、AppStoreだかiOSの設定だかで予め承認だか設定だかをしておかないと課金処理ができなかったらしく(子の端末側で何かダイアログが出たので操作したのだけれど、具体的な内容は失念してしまった)、要求に基づいて操作を行なったものの、途中でそのようなインタラプトが発生することは想定外だったのか、承認済みという情報がアプリに届くことなく消えてしまったようだ。

ところがアプリ側では課金承認待ちの表示が出たまま待機中で、一切の操作を受け付けない。どうやらリクエストに対してタイムアウトなどの処理は存在しないらしく、以降何日経過しても状況に変化がない。
iOSかアプリ側で引っ掛かっているだけという可能性を期待してどちらも再起動し、またAppleIDの認証にエラーがある可能性も考えて一度サインアウトしてから再度サインインし直してもみたが、結果は変わらず。
このままでは課金以前にゲームが続行不能であるので、サポートに問い合わせることにした。

運営への問い合わせ(1回目)

通常、ゲーム内のトラブルはアプリ内から問い合わせを送る。この時、アカウント情報や端末情報などが吸い上げられるため、運営側が問題発生の原因を絞り込みやすくなっていると思われる。
しかし今回はアプリ内での操作が不可能であったため、代わりにアプリ公式サイトの問い合わせフォームから使用中の端末種別やOSバージョン情報などを記入して、問い合わせを送った。
これに対する回答は以下の通り。

お問い合わせありがとうございます。
(T) サポートです。

お問い合わせいただきましたファミリー決済の件でございますが、ファミリー決済の承認が完了されていない場合には、iOS側で承認かキャンセルを行っていただく必要があり、弊社のアプリ内で承認及びキャンセルを行うことができません。

また、弊社ではお客様の端末の設定状況を把握するのが困難であり、Apple ID等の個人情報を頂戴して対応することが出来ません為、大変お手数ではございますが、Apple社のサポートを受けていただきますようお願い申し上げます。

※本件は、Apple社のオンラインサポートでは、対応を行ってもらえません。
※本人確認の都合上、保護者の方とお近くのApple Store、及びApple正規サービスプロバイダの店舗に行かれますようお願い申し上げます。

この度はご連絡のお手数をお掛けしておりながら、誠に恐縮ではございますが、上記内容のご確認の程を宜しくお願い申し上げます。

要約すれば、「課金処理の問題はApple側の担当なのでデベロッパー側では対応できない」「課金承認かキャンセルを送ってもらう必要がある」「本人確認が必要になるためAppleのオンラインサポートでは対応できないので、必ず対面サポート窓口に端末を持ち込むこと」。

Appleへの問い合わせ(1回目)

しかしAppleStoreへの持ち込みでは平日に親子揃っての行動が難しく、また予約も一杯で対応まで非常に時間がかかる。そのため、まずはAppleの電話サポートに頼ることにした。
結論から言えば、Apple側では端末のシリアル情報とAppleIDへのログイン操作によって本人確認を行なうことで、AppleID内の課金記録を確認してもらうことができた。つまり「オンラインサポートでは対応できない」という運営側の認識は正しくないと考えられる。

なおAppleIDには課金の事実は記録されていなかった。これは処理の流れ上、

  1. 子のIDから親のIDへ課金リクエストを投げる
  2. 親のIDから子のIDへ課金承認を返す
  3. 子のIDからアプリへ課金の成功を戻す
  4. アプリ側からAppleへ、課金承認済として投げる
  5. Apple側で課金処理

という段取りの、2から3に至る途中でエラーが発生したために3以降の処理が行なわれていないことによるものと思われる。処理が完了していないため、課金は発生しておらず、従ってApple側では関与できない。
(この流れは筆者の想像によるもので、事実と異なる可能性がある:たとえばAppleによる課金が先に処理されてからアプリに情報が戻されるのかも知れない。いずれにせよ課金処理自体が成功していないため、取り消すべき課金が存在しないことに変わりはない)
もちろん、端末側では既に1回限りの課金リクエストを送信し、承認を返信済であるため、これらを再送する方法もない。

こうなると、他にユーザ側でできることは何もない。そしてApple側としても、記録がない以上は何もしようがない。
つまり、これはもう運営側の問題で、処理待ち状態のまま引っ掛かっているものを解除してくれれば話は終わる、というかそれ以外には解決方法がないものと考えられる。

運営への問い合わせ(2回目)

ここまで確認した上で、(ほぼ上記の内容をそのまま)運営側に再度メールする。しかし返信は「とにかくウチじゃなくAppleで、それもオンラインでは駄目だから対面サポートに持ち込め」。こちらの書いた内容を読んでいないとしか思えない。

Appleへの問い合わせ(2回目)

念の為、Appleのサポートに再度問い合わせて「運営側からはAppleストアに持ち込めとしか言われないんだけど、これ持ち込みでなら解決できる問題なのか」と訊いてみた。しかし「ハードウェアの修理ならばともかく、AppleIDでの課金処理とアプリ動作に関してはAppleストアで解決する問題ではない」との回答を得た。まあそうですよねー。

運営への問い合わせ(3回目)

というわけで再々度、運営に対してApple側の見解も添えてメール。しかし返答は相変わらず「Appleストアへ行け」。

つまり、A社のサポート窓口は客からの問い合わせ内容を碌に読みもせず、問題の解決をサポートするつもりがない、と判断せざるを得まい。
埒が明かないので社の代表電話番号(なぜか会社概要などには掲載されていないので求人情報に掲載されていたもの)をググり、電話してみる。しかし「運営サポート側ではメールでしか問い合わせを受け付けない」との返答。そのメールで問題が解決しないから直接電話してるんですが。

終わり

以上、ユーザ(の保護者)から見た、オンラインゲームのサポート不備問題についてまとめた。問題は未だ解決しておらず、もうゲーム自体をやめる以外の手がないのではという気がしている。
あくまで一消費者の視点からは運営のサポートがとんでもなく不誠実に見えているんだけれど、ゲーム運営に詳しい人から見ると違ってくるんだろうか。

とにかくまともな答えが得られないので、ちょっと質問状を送り付けることにした。
質問に回答があり次第(あるいは回答が得られない場合はその事実を)、公開することにする。

追記:質問状その他

運営に対し、3回の問い合わせメールの後にこのような質問状を送付した。
回答が来る(か、あるいは期限が過ぎる)まで掲載を待とうかと思ったのだが、その後プレイヤー当人からの問い合わせというか症状報告のメールに対して「同じ内容を何度も送ってくるからもう返答しない(大意)」との返信があった一方で私からのメールには一切の返信がなく、つまり対応する気がないという意思表示であろうと判断したので、回答を得ることを諦め、質問内容のみここに公開する(一部の伏せ字以外は原文通り)。

これまで再三にわたり、T オンラインのアカウント動作不具合に関して質問をお送りしました(プレイヤー当人のメールアドレスからお送りしています)が、こちらの説明と要求に対して誠実な回答が頂けていないと感じております。
つきましては、保護者のアカウントより質問状を送付致しますので、下記質問に対してご回答を頂きますよう、宜しくお願い致します。
回答期限は10日後の2018年11月24日中とします。期限内にお答え頂くことが困難な場合、理由を添えてその旨ご連絡下さい。

なお、この質問・回答内容およびこれまでのメールによる回答につきましては、経緯説明と共に公開させて頂きます。


■経緯の確認
iOS用のゲーム内に於いて、未成年であるプレイヤーがアプリ内課金を行ない、保護者のAppleIDに対して課金承認リクエストが送信された。
保護者のAppleIDではこれを承認したが、この時プレイヤー側のAppleIDで、課金を処理するために何らかの設定が不足している旨ダイアログが示され、設定画面に移行した。
これによって課金承認済の情報が行き場を失い、アプリが課金完了を認識することなく消えてしまった。
アプリ側では依然として課金リクエストの承認またはキャンセル待ちの状態にあり、操作がロックされているが、承認もキャンセルも返らない状態であるためロックが解除されなくなった。
これを解除するためには、なんらかの方法で課金リクエストの承認またはキャンセルをアプリへ返す、あるいはアプリ側で課金承認待ち状態を解除する必要があると考えられる。
既にプレイヤー側でも保護者側でも課金リクエストの承認操作は完了しており、再度リクエストを発行する手段もなく、端末の操作では問題を解決することができない。
そのためAppleのサポート窓口に連絡し、本人確認を経てプレイヤー及び保護者のAppleIDに記録された課金情報の確認を行なったところ、当該の課金処理が記録されていないことが判明した。従ってApple側でも、(そもそも課金の事実がないため)これを運営側に通知あるいはキャンセル処理を行なうことができない。
つまり、問題を解決可能なのは唯一、T オンラインの運営会社であるA株式会社のみであると思われる。

■要求内容
T オンライン内の、課金リクエスト承認待ち状態でロックされている当該ユーザアカウントを特定し、その課金リクエスト解除を要請すること。
また、そのためにプレイヤー側でなければ不可能な行為あるいは情報提供の必要があれば、その内容を示すこと。Apple社に対し要請すべき内容があれば、それを示すこと。


■質問状

◆1◆「AppleストアまたはApple正規サービスプロバイダに行く」ことを要求する理由
これまでのメールによる回答で、運営側は常にこの内容を繰り返していますが、その理由として「本人確認の都合」としか書かれていません。
これは「AppleID上での決済情報を確認するために本人確認が必要であり、それは対面窓口でしかできない」との認識によるものでしょうか?
だとすれば、既にオンラインで本人確認が済んでおり、当該AppleID(プレイヤー当人、および保護者の両方とも)に於いて課金が行なわれていないことを把握済みですので、対面窓口に行く理由はないはずです。
それとも他に何か対面窓口でなければならない理由がありますか?

◆2◆課金承認待ちを解除できない理由
今回の件は、そもそも課金処理が途中で消えてしまっており、決済情報が存在していないためにAppleでは処理の取り消しなどの操作が不可能で、またユーザ側でも既に承認を求めるリクエストが消えており再送もできないため、手の施しようがありません。
しかしながら運営からの回答メールでは「Appleからユーザを特定可能な情報が提供しなければ対応できない」と繰り返すのみで、そもそも決済の事実がない旨が無視されています。
もちろん、「課金情報がない」というのはユーザがAppleから確認した情報であって運営側が確認できた情報ではないため、それのみを以て取り消しに応じることが難しい事情はあろうかと思いますが、だとすれば運営側からAppleに確認する以外では取り消しようがないため、ユーザに対してAppleへ問い合わせをさせる理由がなくなり、メール内容とは矛盾します。
また、ユーザ個人情報やAppleIDなど運営側でユーザ情報を特定するために必要な情報についても、指示があれば提供の用意がある旨も伝えておりますが、それについても無視して「運営側ではできない」と繰り返されるのみです。ならば「どうすれば可能なのか」あるいは「運営会社以外のどこならばこの問題に対応可能なのか」を明らかにしてください。

◆3◆ユーザアカウント特定のために必要な情報について
プレイヤー当人の認識によればユーザ名はユニークでなければならないため、ユーザ名のみで当該アカウントが一意に特定が可能と考えられます。
あるいは課金リクエストが行なわれた時期は(±30分程度の幅で)特定可能であり、その時期にリクエストが送信された中で未だに承認もキャンセルも行なわれていないデータを抽出することでも特定は可能(あるいは、少なくとも候補をごく少数に絞り込めるの)ではないかと考えられます。
そうした運営側でのアカウント特定をしていただけない理由はなんでしょうか?
もし特定のために(そもそも存在しないAppleの課金情報以外に)何か追加情報が必要であるとすれば(操作しようがないアプリ内でのみ確認可能な情報を除き)、それを提示いただくようにお願いします。