円形都市の謎

小説家になろう」発の異世界転生系小説「この素晴らしい世界に祝福を!」「盾の勇者の成り上がり」「賢者の孫」のアニメ作品で、登場する都市の形がそっくりだと話題になった。

「このすば」と「賢者の孫」についてはこれ以前にも「屋敷の外観がそっくり」と話題になっており、要するに同じ資料の使い回しなのだろうと考えられる。両者は美術監督が同一人物であるため、同じ画を元資料にしていても不思議ではない。
animanch.com

しかし「盾の勇者」の場合は少し事情が異なる。この作品は他の2本とはスタッフが共通していないため、同じ資料の融通ということは有り得まい。
もちろん、偶然にも同じ資料を元にしてしまうことは充分考えられる。作画資料として都合の良い、つまり「イメージにぴったりで、著作権的な問題のない」画像がそう多くないのであれば、同じ資料に行き当たってもなんの不思議もない。

ならば、どこかに「元になった街」があるはずだ。それを探してみよう。

円形の都市として名高いのはドイツのネルトリンゲンである。

ほぼ真円形をした防壁を有する中世の古都で、イメージにはぴったりだろう。
しかし一見してわかるように、ネルトリンゲンと上記作品の都市には大きな違いがある:川だ。
ネルトリンゲンは街の中を川が流れていない。

そもそもネルトリンゲンは、隕石クレーターによる天然の防壁を利用して作られた城塞都市である。そのため川を中心にしない形で都市が形成されており、この点でアニメのそれとは地形がまったく異なる。

では、「市街の中心を川が流れている古都」はあるだろうか。
すぐに思い付くのはテムズ川を擁するロンドン、セーヌ川の流れるパリ、モスクワ川流域のモスクワ、ドナウ川が貫くウィーン、ライン川に囲まれたケルンなどだ。水利は農業的にも運輸的にも重要な要素であったから古い都市が川沿いに築かれることは珍しいことではなく、候補はいくらもある。
が、その中で「円形の城壁を持つ都市」となると、ぐっと絞られてくる。

都市の形成には、「住みやすい場所に家が増えてゆき都市になってから防壁を構築する」場合と「都市を作りやすい場所を選んで計画的に構築する」場合とがある。
自然形成された都市の場合、地形に沿って野放図に拡がるため、市街域の形状は様々だ。川を含む都市の場合、そこが主要な輸送経路になることが多く、川に沿って居住区が伸びてゆく。
逆に計画的な都市形成の場合は、可能な限り整然と区画が構築され、街路も防壁も幾何学的に整理されがちだ。そういった都市では計画の妨げとなる河川を避けて平野に構築することが多い。あるいは川を天然の防御として用いる場合もあるが、その場合は岸に沿って防壁を形成するのが通例である。

もちろん、川を挟んで円形に拡がる都市が存在しないわけではない。たとえばモスクワやパリなどは、かつては比較的円に近い形状だったことが伺われる。
http://historic-cities.huji.ac.il/russia/moscow/maps/gottfried_1695_b.jpg
http://www.vidiani.com/maps/maps_of_europe/maps_of_france/paris/large_detailed_old_map_of_paris_city_1932.jpg

しかしそれらの都市は川の流れが明らかに一致しない。とりわけ「中心部が川の蛇行部に包み込まれるように形成されている」こと、また防壁の外では河川が大きな蛇行を見せていないことは特徴的で、主要都市ではそういった地形がアニメのそれと一致しない。

結局、様々に手を尽くしてモデルとなった都市の特定に努めたが、絞り込めないどころか可能性のある場所を見出すことさえ叶わなかった。
こうなってくると、可能性としては

  1. 専門のライブラリにでも当たればすぐに出てくるが、ネット検索では引っ掛からない情報
  2. 上述の都市をモデルにしているが改変を加えているためそのまま重なるわけではない
  3. アニメオリジナルの都市であってモデルとなった画像はなく、他作品がそれを剽窃している

のいずれか、ということになってきそうだ。
しかし2は「異なる作品で形状が完全に重なる」ことから否定される。独自の改変を加えて仕上げた結果であるならば、モデルとなった都市が同一であっても改変の違いにより全く異なった様相を生じるはずで、これほどに一致することは有り得ない。
3については、流石に他社作品をそれと知りつつ下敷きにすることは有り得まい。制作側がそこまで意識低いとは考えにくいし、たとえそうだとすれば放映時点ですぐにでも発覚して何らかの声明があるはずだ。
ということでまあ順当に1なのだろうが、だとすれば元画像は一体どれなのか。謎は何一つ解けぬままだ。

海獣の子供

色々な意味で「大変な映画」である。
www.kaijunokodomo.com

原作者の五十嵐大介は、圧倒的な描写力の画風とスピリチュアルな世界観で知られる。その画風をそのままに動画に起こす試みについては、Studio 4℃の技術力が見事にそれを成し遂げた。まずはそのヴィジュアルに翻弄されよう。
俳優の演技も自然で、「誰が声を当てているか」という余計なことを思い起こさずにすっと耳を通る。
エンディングテーマを歌う米津玄師は原作のファンで、自ら売り込んだというだけあって見事に原作を踏まえた歌詞を乗せた。

あらゆる点で一流の仕事によって作られたこの映画の中でたった一つの、そして致命的な欠点が「脚本」である。

元々がコミックスにして5冊分の分量がある物語だから削ぎ落とさざるを得ない部分は出てくるし、一筋縄では行かない物語を噛み砕いて再構築する必要があるのは致し方ない。しかし作品の核を見誤ったままにそれをやると、落としてはいけない箇所を落とし、砕いてはいけないものを砕き、結果として元の形がなくなってしまう。
海獣の子供」は、正にそれをやってしまったのだ。

表面的には、素晴らしい技術に支えられて原作の形を見事に写し取ったように見える。実際、その迫力は素晴らしく、それだけに「なにか凄いものを見た」感動を覚え、傑作を見たような錯覚に陥る。しかしその内実は単なるハリボテであり、なまじ表面加工の技法に凝っているが故に名品に見えはするが、その中心には何もない。
賛否いずれの感想も口を揃えて「わからなかった」と言う。それは決して「難解な物語だから理解に時間がかかる」のではなく、単に「理解すべき内容がない」だけだ。逆に、これだけ中身のないものを、演出のみで何らかの感動を励起するまでに高めてみせた(脚本以外の)技術には敬意を表したい。

(以下、多少のネタバレを含む)

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位置情報ゾンビゲー「The Walking Dead:Our World」

タイトルからもわかる通り、ゾンビ・アポカリプスものドラマ「ウォーキング・デッド」世界のサヴァイヴァーとして、地図上に表れるゾンビを狩るゲームである。
t.co
言ってしまえばポケモンGOのゾンビ版みたいなものではあるが、なかなかに工夫されていて面白い。今ほかに位置情報ゲームをやっていなければ、おひとつ如何だろうか。

基本プレイ

基本的には「スタミナを消費して周辺に出現するゾンビを掃討する」だけのゲームである。
ゾンビとの戦闘は「タップした場所に銃弾を撃ち込む」ことでダメージを与える形で、ほかに同行する「ヒーロー」が敵を攻撃してくれる。ヒーローはゾンビに組み付かれると攻撃できなくなりダメージを受け、そのまま放っておくとやられてしまう。また自分自身がゾンビに組み付かれると失敗である。負傷したヒーローは、ダメージに応じて一定時間使用不能になる(回復アイテムによって治すことが可能)。
ミッションを解決すると、何らかのリソースが得られる:ゾンビと戦闘するだけの「エンカウント」では武器やヒーローなどのカード、襲われている人を助ける「救出」ではサバイバーの確保、3回以上の連戦を行なう「大発生」では戦闘ごとにコインが、全戦をクリアするとカードやコイン、アイテムなどを手に入れることができる。サバイバーは各地にあるセーフハウスに連れてゆくと、武器庫からは武器カード、シェルターからはヒーローカード、倉庫からはパークカード、交易所からはコインを得ることができる。
カードを一定数集めることにより、コインを支払ってアップグレードが可能になる。カードには★1〜4(コモン、レア、エピック、レジェンダリー)の4段階のレアリティがあり、同じカードレベルでは高位レアリティのものほど性能が高い(そのぶん入手可能性が低く、またアップグレードコストも高いため育成は困難になる)。
ゾンビだけでなく、ときには人間の襲撃者(レイダー)やアイテムの入った箱も出現する。
レイダーとの戦闘は、ヒーロー4人とチームを組んで行なわれる。遮蔽物の陰から攻撃してくるレイダーを迎撃し、こちらのヒーローが全滅する前に敵を殲滅すれば勝利となる。
箱からは追加スタミナ、および消耗品が補充できる。
建設資材を集めると、セーフハウスを建てることができる(ただし周囲のセーフハウスから一定距離が必要になる)。

出現するゾンビはランダムだが出現位置は固定であることもあって、漫然とプレイしていると行動が単調になりがちだ。それはそれである意味「ゾンビアポカリプスのリアルな日常」ぽくもあるが、ゲームとしてはやはりそれなりの張り合いが欲しいところである。
そのため、定期的にデイリーミッション──「大発生を何回掃討しろ」「何人のサバイバーをセーフハウスに連れてゆけ」など──が出され、行動にちょっとした変化を与える。べつだんクリアしなくてもペナルティなどはないが、報酬が得られるので積極的にこなしてゆきたい。

また、個々人にランダム提示されるデイリーミッションとは別に、所属グループで共有される「エピックシーズンチャレンジ」が存在する。
これは6週間の周期で毎週のチャレンジをクリアしてゆくもので、5x5のビンゴ形式で数々の課題が出される。縦横列を消化すると交点にあるカードパックが得られるほか、全課題のクリア時にも報酬が得られ、次の5x5が表示されてゆく。
1週間以内に3回のチャレンジを全クリアするとティア(階層)が上がり、より難易度の高い/より報酬の良いチャレンジが始まるが、3チャレンジすべてをクリアできなかった場合は次週でまた同じティアをやり直さねばならない。
課題を効率良くこなすためには出現頻度の低いターゲット(たとえば「レア敵をいくつ撃破しろ」など)を共有したり、育成戦力などでの得手不得手に応じて課題を分担したりと効率化を図りたいところだ。
こういった課題には少なからず「この武器で倒せ」「このヒーローで倒せ」などカード指定が含まれるので、レアリティの低いカードにも使いどころが出てくる。
いずれにせよチャレンジのクリアには手数が必要になるため、グループへの所属は必須だ。

後発位置情報ゲームとしての洗練

位置情報ゲームは「現実世界の位置とリンクする」ことに面白さがあるのだが、同時にそれが問題点ともなり得る。
たとえば得点源がランダムな位置に出現する場合、現実世界では到達できない場所に出現してしまうような場合がある。逆に現実世界の位置に沿ってポイントが設定される場合、設定しやすい場所とそうでない場所の差が出てくる(都会では申請者が多いため登録済みポイントも多いが地方では少ない、など)。
また、現実世界でのプレイヤー密度差も問題となり得る。たとえばIngressでは、「都会ではプレイヤーが過密すぎるので自分がプレイした結果がすぐかき消されてしまう」「地方ではプレイヤーが過疎すぎて環境に変化が生じない」といった問題が発生した。すれ違いで地図を交換するドラクエでも、入手機会の差が問題となった。
かといって現実世界とリンクさせないのならば、位置情報ゲームである必要がない。現実世界を取り込みながら、それに振り回されすぎない調整をどうするかは悩ましいところだ。

The Walking Dead:Our Worldの場合、まずゾンビやアイテムの出現位置を「立ち入り可能な場所」に限定。具体的に言えば公道および公共空間からアクセス可能な範囲のみに、自動的に出現する形を取った。これによって都会でも地方でもアクセスすべき地点の密度には差があまり生じない。
出現地点は共通だが、その消化は他プレイヤーと共有されないため、少ないリソースを取り合うようなことにもならない。逆に言えば、その分だけ他プレイヤーとのインタラクションが低くソロゲーム的になりがちではあるが、その点は救出した生存者を連れてゆく(ことでカードやコインなどのリソースを得られる)「セーフハウス」を全員で共有すること、およびグループ内で協力して達成を目指す「チャレンジ」によって補完されている。

現実感

位置情報戦闘ゲームにはありがちだが、AR機能によって現実の光景にゾンビの姿を重ねて戦闘ができるようになっている。夜に人気のない路地裏などでゾンビと戦闘するのはかなりのサバイバル感が得られる。
またセーフハウスは、建設から10日が経過するとレイダーの襲撃を受けて破壊される。このタイムリミットはサバイバーを集めてアップグレードすることで延長可能だが、セーフハウスが大きくなるほどアップグレード困難になり、いつかは破壊されてしまう。「大きくなりすぎた拠点は襲撃者にとって美味しい獲物」ということで、ゲーム的な都合としての環境変動の仕組みと世界設定とが巧く噛み合っている。
一通りの操作説明や基本行動指針こそチュートリアルが示されるものの、「武器/ヒーローごとのゾンビとの相性」などの情報はまったく説明がなく、「自分で試行錯誤しろ」感はむしろゾンビサバイバルの雰囲気を高めている気もする。
詳しく知りたい向きは攻略情報サイトを。
ourworld.gameinfo.io

カメラ遍歴


いつの間にか所有したことのあるカメラも増えてきたので、メモ代わりに。

ポケットインスタマチック

最初の自分用カメラは小学生の頃、たぶん父がくれた110カメラだったと思う。厚みより前後方向が長い箱型ボディで、色は黒だったか銀だったか、もちろんメーカーなんて憶えていない。
他にも、父のOM-1を借りて撮ったりもしたが、どうも私はファインダを覗いた状態では自身の認識する視野と実際の撮影範囲をうまく切り分けられないようで巧く撮れず、次第にカメラからは遠去かっていった。

その後、写真趣味に復帰するのはずいぶん後のことだ。

SONY Cyber-Shot DSC-F505V

rikkie-camera.sweet.coocan.jp
2000年か2001年ぐらいだったろうか。どういうきっかけで買ったのかはよく憶えていないが、単にガジェット趣味のひとつだったような気がする。当時としてはハイスペックな260万画素、光学5倍ズーム機で、本体と同じぐらいの大型レンズを備え、ヒンジで上下に回転できてローアングルやハイアングル撮影が容易というフラグシップモデルだった。たぶん7万円ぐらいしたと思う。
ここで初めて「撮影イメージを確認しながら撮れる」デジカメの楽しさに目覚め、インターネットで知り合った人たちとカメラを持ち寄って撮影会をやったりした。新婚旅行の時もこのカメラを使っている(妻用にはCyber-Shot DSC-P1を買い足した)。
当時のデジカメは接眼ファインダがなく背面液晶のみで撮影するのだが、それが却って私には合っていたようだ。特にF505のようなスウィーベル機構を持つ機種では画面を上向きにしてウエストレベルで撮影するスタイルを取りやすく、その後の撮影スタイルに大いに影響を与えている。
この頃は空模様などを多く撮っており、広角側38mmでは画角が足りなかったため外付け魚眼レンズなども導入。

SONY Cyber-Shot DSC-F828

www.itmedia.co.jp
後継のF707はスルーしたが、2003年に発売されたF828は即日購入。画素数が800万となり、レンズも換算28-200mm F2.0-2.8という大口径に。しかもRGBに加え青緑画素を持つ4色CCDで色再現性を向上させた、現在でいえば「ネオ一眼」に当たる立ち位置の高級機である。実売で13万ぐらいだったか。
残念ながらこの後ソニーは(というか他社も含めて)デジカメの構造をフィルムカメラスタイルに近付けてゆき、レンズ回転機構を捨ててしまったため、乗り換えるべき後継機も出ることはなかった。今ではバリアングル液晶などで需要が満たされてはいるが、「左手を鏡胴に、右手をシャッターボタンに固定したままモニター角度を変更できる上、各種ファンクションボタンにもアクセスできる」使い勝手に優れたデザインだったと今でも思う。
既に使うことはないが処分するにも忍びなく、コレクションとして保管してある。

ローライMiniDigi

Rolleiflex MiniDigi (ミニデジ) AF5.0 ブラック 24611

Rolleiflex MiniDigi (ミニデジ) AF5.0 ブラック 24611

ローライフレックスを模倣したミニサイズのトイカメラ。デジカメとしては安物だが外装は凝っており、トイデジの範囲に収まらぬ価格だった(たしか5万ぐらいしたのでは)。
デジカメなのにフィルム巻き上げレバーを回さないとシャッターが切れないという無駄に凝った構造などに遊び心が見られる。ファインダもちゃんと上部に小さな正方形液晶があり、ウエストレベルファインダで撮影可能である。
CCDが安物のため色再現性は悪く、しかも読み出しの遅さにより風景撮影ですら手ぶれによるローリングシャッター現象を生じたが、それが却って面白く昼休みに首から下げて付近をうろついたものである。
後にCCDの性能を向上し300万画素パンフォーカスから500万画素オートフォーカスになったモデルも登場し、こちらも買い足した。またローライではなくライカM3を模したモデルもあったが、こちらは所有していない。

iPhone 3GS

カメラ遍歴としては外せない。それまでもカメラ付き携帯は所有していたが積極的に撮るようなものではなかったところ、iPhoneはカメラとしての機能それ自体よりも「画面が大きい」「撮ったものをすぐ加工/共有できる」強みで完全にメイン機の立ち位置を奪っていった。この後長いことiPhoneでの撮影を中心にして、デジカメはお蔵入してゆく。
それが覆るのは、スマートフォンでは撮りにくい接写などの需要が増えてからだ。

SONY Cyber-Shot DSC-T900

これはまあ私のというか、主に妻が使うためのものとして買ったのだが。
名刺サイズの薄型ボディに光学手ぶれ補正付きの4倍ズーム屈曲光学系を仕込み3.5インチタッチパネル液晶という、なかなかに盛り込んだ仕様で重量わずか150g、鞄に入れて邪魔にならない日常携行用カメラとして優れた代物だった。しかしこの後「スマホカメラの方が取り込む手間もないし即座に加工・共有できるし」という時代になり、この手の小型コンデジは居場所を失ってゆく。

リコー GXR

RICOH デジタルカメラ GXR+P10KIT 28-300mm 170550

RICOH デジタルカメラ GXR+P10KIT 28-300mm 170550

2013年購入。
仕事用にマクロ撮影などを主体として新たなカメラを物色していた時期で、しかしレンズ交換式は沼だと聞いていたので手を出しかねていたところ、既に事実上のディスコンだった本機が処分価格で流通しているのを発見。キットの10倍ズームユニット付きで2万弱だったと思う。これにAPS-Cセンサの50mmマクロを追加購入してしばらく使った。
「センサーとレンズが一体化したユニットごと差し替える」機構にはギミック趣味を刺激されたし、マクロレンズユニットの描写は充分に満足行くものではあったが、AFが不安定であるなど使い勝手としてはイマイチだった。
結局これが沼の始まりで、なんのかんのとレンズ交換への警戒心が薄れたことでこの後マイクロフォーサーズに傾倒してゆく。

リコー WG-3

これも2013年。なんで買ったのだったか既によく覚えていないが、レンズ前1cmまで寄っての強力マクロとレンズ周囲LEDライトはGXRのマクロとは別方向に強力だった。また落下高度2mの耐衝撃性と水深14mの防水はラフな扱いに耐え、屋外の水辺などで結構重宝した。
とりわけ小学校低学年の次女が自由に写真を撮るカメラとして活躍したが、のちに彼女に自前のiPadが割り当てられたことで役目を譲った。

Panasonic LUMIX GM1

GXRに見切りを着け、次の機種への乗り換えを再度検討していた2013年末に発売された新機種。なんといってもオールドスタイルに寄せたシンプルなデザインと、マウント径ギリギリまで削ぎ落としたスリムなボディは魅力的であり、なんとコンデジサイズの小型センサー機であるPENTAX Qよりも本機の方が小型軽量であったという。付属の12-32mmレンズも沈胴式でコンパクトなパンケーキサイズに仕上がっており、望遠の不足はあるものの広角〜標準域を押さえている。
逆に本体がコンパクトすぎるためレンズとのアンバランスが問題になる傾向があり、マウント径以上に拡がらない細身なレンズを中心としてM.Zuiko 12-50mm F3.5-6.3やLUMIX G X 45-175mm F3.5-5.6、LUMIX G 30mm F2,8 MACROなどを追加していった。
鞄に入れても邪魔にならず首に下げても負担ない小型軽量さは散歩カメラとしてたいへん重宝したが、とはいえコンパクトさ故に機能性を犠牲にした感は否めない。とりわけ方向キーの周囲をダイヤルとしたデザインは、F値シャッタースピードなどを回転で切り替えたい時に方向キーを押して機能選択が切り替わってしまうことが多く、またレバー部が飛び出した電源リングは鞄の中で引っ掛かって外れがちで2回も紛失。そうした操作性や耐久性の改善を求めて機種変更に至る。
今でも強い愛好者がいるのだろうか、発売から半年後の時点では新品で5万ぐらいだったかと思うが、ディスコンになって久しい現在でも8万ぐらいで販売している店があるようだ。

OLYMPUS PEN E-PL8

LUMIX GM1を3年ほど使った後、2017年に6万ぐらいで購入。
既にGM1用にレンズを増やしていたのでマウント替えは考慮外であり、マイクロフォーサーズ機から選ぶことは決定事項である。またGM1の欠点である方向キーとコマンドダイアルの複合構造を避けることは重要だったため、後継機であるGF9は候補から外した(GM1譲りの小型軽量デザインにチルト液晶を追加した、魅力的な機種ではあったのだが)。
コマンドダイヤルさえ使いやすくなれば、他の機能はそれほど重要ではなかった:今やどの機種でも背面液晶は可動式だし、GF9を除けばすべての機種で手ぶれ補正を備えているので、GM1より機能性が向上することは間違いないからだ。あとはサイズと価格次第ということになるが、ハイエンド機を除けば大きさも重さもさほど大きな差はない。
金額面ではLUMIX GX7が最安だがボディサイズはやや大きめ、また外観があまりに素気ない。カメラはある意味でファッションの一部であり、外観は意外に重要なファクタだ。
デザイン上の好みからすればモダンなLUMIXよりもクラシックスタイルのOM-DやPENが好ましいが、撮影スタイルから接眼ファインダ不要派であるためPENが最適と判断。オーードクスなブラック+シルバーと悩んだが、妻との共有も視野にオレンジブラウンを選択。
GM1の倍という本体重量に最初はやや抵抗を感じもしたが、代わりに得た手ぶれ補正(3軸ではあるが)とチルト液晶は撮影幅の向上に大いに役立ってくれた。

OLYMPUS PEN F

OLYMPUS ミラーレス一眼 PEN-F Body SLV

OLYMPUS ミラーレス一眼 PEN-F Body SLV

PENへの買い替え時には価格面と不要なEVF装備の点で候補から外していたが、ニコンZ登場前の「新型ミラーレス予想」の素材として使われたPEN Fが思いのほか格好良く見え、またPENよりも直接制御できる範囲が広く、手ぶれ補正も強くなることを考えると急激に魅力が増した。
当時オリンパス創業100周年で記念モデルの登場が噂されており、既にヨーロッパで限定販売されていたPENのブルーモデルがPEN Fにも来るのでは、という噂と共に花文字のFを彫り込んだボディの画像が出回っており、期待を込めてこれを待っていたのだが結局フェイクで、それどころかPEN Fがディスコンとなり買い時を逃がしてしまった。
買えないとなると却って欲しくなるもので、マップカメラの入荷情報に網を張って良品を確保。
往年のハーフカメラPEN Fとほぼ同サイズ同重量で、露出補正ダイヤルやトーンコントロールダイヤルなどマニュアル機の手触りを残した独特の操作感が好ましい。

紙幣の肖像権

20年ぶりに一新される新紙幣のデザイン案が色々と話題である。従来の紙幣レイアウトからは趣を変えた、見慣れぬデザインゆえに少なからぬ反発も生じているようだ。
デザインの善し悪しはさて措いて、五千円札に使用される津田梅子の肖像がオリジナル写真から反転されていることについて批判が出ている。




ちょっと気になったので考えてみる。

著作人格権と肖像権

著作者人格権は、大雑把に「著作権」と括られる権利のうち、譲渡できない「著作者の名誉」に関わる部分の権利である。この中に「同一性保持権」があり、著作者は改変を禁じる権利があることになっている。
写真の反転も改変であるには違いなく、従って新札のデザイン案は同一性の保持に抵触している。
ただし、この写真の場合に著作権が存続しているかどうかは疑わしい:現在もなお著作権が存続しているためには2019年の50年前(1969年)まで撮影者が存命である必要があるが、当該の肖像写真は津田梅子が開校した津田塾大学開校当時(1900年)撮影のものであるらしく、1900年当時に撮影技術を有した人物が1969年まで生きられたかというとかなり怪しくなる。仮に撮影当時に20歳だとして89歳まで、有り得ないというわけではないが今よりも平均余命の短かかった時代の生まれであり、なおかつ数度の戦争や震災などの激動を鑑みると、存命可能性はかなり薄そうだ。
そもそも、仮に著作権が存続していたとして、反転使用に異議を唱える権利があるのはあくまでその遺族のみである。外野がどうこう言うべきところか。

(ところで今回の話とは直接関係ないが、写真の反転と同一性保持の関係性について言えば、「裏焼きかどうか」は重要ではなく、「発表された形態と差異があるかどうか」の問題になる:写真はあくまで表現の道具であり素材に過ぎないので、撮影者自らが発表に際し反転させたり修正したような場合、そこを含めて適用したものこそが「オリジナル」であり、軽々に素材の状態へと戻すことは許されないという話になる。)

肖像権の方は更に微妙だ:肖像権自体が、法的な定めの明確でない代物であり、「人権の一概念として提唱されつつある」域を脱していない代物なので、どこまでがOKでどこからがNGなのかの線引きは難しい。
そもそも顔写真の反転使用はどこまでNGなのか。人の顔は厳密ではないがおおよそ左右対称に近い構造であり、反転の違和感はさほど強くない。無論、ほくろなど目立つ特徴がある場合や髪の分け目などを非対称にしている場合、また服が左右対称なデザインでない場合などの問題は発生し得るが、当該の写真について言えばおおよそ左右対称で着物の合わせが問題になる程度でしかなく、写真をそのまま使用するのではなく絵に描き起こした上で細密銅版画に起こすのだから当然ながら着物の合わせなど修正済であり、それが肖像権を侵害すると言えるかどうか。
www.youtube.com
更に言えば、津田梅子自身は1929年に亡くなっている。著作権でさえ死後50年で消失する以上その肖像権もとうに失われていると考えるべきだろうし、だいたい生涯未婚を貫いた津田梅子には肖像権を受け継ぐべき遺族もない。

肖像の反転はNGか

「たとえ著作権や肖像権が許しても文化的にNG」的な反応も少なからず見られるのだが、他国の紙幣や日本の過去紙幣でも反転は見られる。
たとえば米1ドル紙幣のジョージ・ワシントンや2ドル紙幣のトーマス・ジェファーソンは、その元となった肖像画から反転されている。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/7b/United_States_one_dollar_bill%2C_obverse.jpg/2880px-United_States_one_dollar_bill%2C_obverse.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b6/Gilbert_Stuart_Williamstown_Portrait_of_George_Washington.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c5/US_%242_obverse.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/44/ThomasJefferson-Painting.jpg
あるいは日本の新旧500円札に使用された岩倉具視も反転である。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/67/Series_B_500_Yen_Bank_of_Japan_note_-_front.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/26/Series_C_500_Yen_Bank_of_Japan_note_-_front.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/26/Tomomi_Iwakura_3.jpg
https://kotobank.jp/image/dictionary/nipponica/media/81306024000792.jpg
とすれば、少なくとも「紙幣の肖像画を元写真から反転で描くのはNG」ということはなさそうだ。

もちろん、写真を反転使用すること自体、原著作物としての写真の撮影意図を損ねる場合があるし肖像権の侵害となる場合もあり、軽々にすべきことではないが、それと今回の新札デザインでそれが許されないかどうかとは別の話である。

なぜ反転しているのか

反転してはいけないわけではない、という点はご理解いただけたかと思うが、それはそれとして「なぜわざわざ反転させたのか」についても考えてみよう。
新五千円紙幣のデザインは、右側に肖像画、左に額面および透かしというレイアウトになっている。この配置であれば、人物像は左向きであるべきだ:一般に顔が描かれる場合は見る者の視線が肖像の視線方向に誘導される傾向があり、それは左側の額面に向かうのが正しい。
ならば左側に肖像を配置し右に額面を置くようにすれば、わざわざ反転した肖像を作る必要もなかったのではないか、というのはもっともな疑問である。これについては「他の紙幣に合わせた」のだろうと思われる。
これまでに発行された日本円紙幣を確認すると、いずれも右側に左向きの肖像を配置していることがわかる。唯一の例外は肖像画のない二千円紙幣だが、これも右に置かれた守礼門が左向きになるようレイアウトされており、肖像と同様の視線誘導効果を発揮している。
従って新紙幣についてもこの基本レイアウトを崩さぬ形でデザインする都合で肖像の反転が行なわれたものと考えられ、この点についてはデザイン技法上妥当な判断であると思われる。

踵の高い靴を探す

左足を痛めた。
怪我というわけではない。整形外科医の説明によれば「骨密度が低下してきているため腱に引っぱられて骨が変形する」ことによる症状、なのだそうだ。アキレス腱付着部症、なのかな。
https://www.jssf.jp/pdf/pamph_akiresu.pdf

ともあれ、整形外科的症状というのは病原体による症状などとは異なり、投薬でたちどころに病原が消失し症状が治まるようなものではなく、基本的には「痛みなどの自覚的症状を緩和させつつ自然治癒を待つ」しかない。私の場合も、「骨密度を上げるためにビタミンDとKを処方するので毎日飲んでください」「痛みの方はロキソニンテープ出しときます」「あまり動かさないでください」ということで、しばらくは左足をひきずる生活となる。

要するに「腱の引っ張る力に骨が負けた」のであると思われ、実際のところ足首から下について、アキレス腱が伸びる方向に曲げると痛みを生じる。激痛というわけではないものの、自然な歩行動作の度に痛むので、自然と歩行が制限される。
逆に言えば踵を伸ばさないようにすれば痛くはない……ということがわかってきたので、歩き方が「左足を鉛直より後方に出さないように」半歩づつ歩く、もしくは「左足を前後に振らないように」外向きに90度開くことで足首に対して左右方向に振る形で歩く、といった妙な動きとなる。
常歩行よりも移動力は落ちるものの、慣れればそれなりに移動できるので日常生活に大きな支障があるわけでもない……と思っていたら、3日目にして右下半身の筋肉に硬ばりが生じた。左足を庇って動くことにより負荷が右側に集中、腰=尻=腿のラインおよび脹脛までの筋肉が張ってしまう。
わりと由々しき事態である。早急に痛みをなんとかして、歩き方を戻し、負荷のバランス改善を図らねばならない。

で。
要するに爪先=足首=膝の成す角が90度よりも鋭角になる時に痛むのだから、踵側が高く爪先側の低い靴があれば足の振り幅制限をかなり緩和でき、存外普通に歩けるのでは……と考えた。
つまり、ハイヒールである。

妻のサンダルを借りて(彼女とは背格好が割と近いため、衣類履物はサイズ的にある程度共用が可能である)歩いてみたところ、履き慣れぬ踵=爪先の高低差(およそ7cm)に起因する若干の歩幅制限こそ生じるものの、痛みに伴うバッドステータスについては概ね解除可能との知見を得た。これは僥倖。

というわけで自分用のハイヒールを物色することにした。私服ならばまだしも、流石に出社時のスーツ姿に妻のヒールサンダルを履いてゆくのは若干気が引けるので、さほど違和感のない革靴系でヒールの高いものを探さねばならない。
男性向けにもヒールのある靴というのは存在しないわけでもないのだが、わりとパンクロックな方向に走りがちで、これはこれでスーツとは合わせにくい。むしろ女性向けのものからサイズの合うものを探した方が選択幅は広そうだ。

ただ、女性用の靴というのはどういうわけか非常にサイズ幅が狭い市場で、大半は22.5-24.5cmの範囲、大きい方で25.5cmぐらいまでしか展開がない(それもサイズ表記はS、M、L、LLの4段階で0.5cm刻みでのサイズ表記がない)場合が多く、男性の足に合うサイズを手に入れるのはなかなか難しい。海外ブランドではもっと大きなサイズも普通にあるのに、国内には上記の幅しか輸入されない……などということも珍しいことではない。
大きいサイズを謳う販売店のページでも、「取り寄せになるので3〜5週間かかります」というような場合が多い。つまりは需要が少ないために国内製造がなく、在庫も持たず、注文が入ってから海外の商品を買ってくる、ということなのだろう。それはそれで致し方ないが、今回は既に出つつある体調不良への対応が目的であるから、悠長に1ヶ月も待ってはいられない。
そんなわけで無数の候補から「ヒール高さが適度なもので」「サイズが合うもので」「数日のうちに発送してくれる」商品にアタリを付けて発注する。しかし「2〜3日で出荷」とあるのに注文時に通達された到着予定日には1〜2週間の幅があり、「すぐ発送するとは言ったがすぐ到着するとは言ってない」まあそれでも1ヶ月待たされるよりはマシか。

結局期限ギリギリで半月待たされることになったが、とりあえず靴が届いた。6cmヒールは丁度良い高さで踵の痛みもなく快適に歩ける。ただ、女性用の靴はどうも幅が狭めなことが多く、甲高幅広な私の足だと圧迫感は否めない。
2足買ったうち、ボア付きのショートブーツは内側がふんわりしているせいか圧迫も少なく履ける。

ただ、折り返し部分がスーツと合わせにくい。とりあえず上部を立てて裾に入れてみたが、そうすると脱ぎ履きが若干面倒になる。
他にも、もう少し革靴らしいデザインのものも買ってみたのだが、同じメーカー(と思われる)でも素材の違いによるものか、若干キツくて甲の部分や指の付け根あたりが当たって痛む。こちらはやめておいた方が良さそうだ。やはり靴の通販は難しい。

仕方がないので路線変更する。
要は踵側が高くなりさえすれば良いわけで、「そういえば昔シークレットブーツてのがあったよね」調べてみると今でも「背を高く見せるための靴」というものは存在している。なるほど、その手があったか。
ただこれら、「なるべく自然に見せる」ために踵の内側を高めにしてはあるのだが、根本的には底上げが目的なので全体が厚底だったりする場合もあり、どの程度の傾斜が付けられているかは履いてみないとよくわからない。
東京駅八重洲口側に専門店があるとのことで、行ってみた。
www.tallshoes-s.jp
特殊需要向け製品であるので、店舗もそれほど大きくはない。壁には代表的な製品がワンサイズだけ展示してあって、それ以外のサイズは声をかけて探してもらう感じのようだ。
スエードのショートブーツ風のものを履いてみた。傾斜はゆるめだが用途的には十分か。靴底はエア入りなのか弾力感があってクッション性が高く、負担は少なそうだ。サイドジッパー付きで、靴紐をしっかり結んでも脱ぎ履きに問題はない。

歩いてみた感じ、問題なさそうだったので高さは確認しなかったのだが、どうやら+8cmのようだ。「もっと高さが必要ならインソールを追加もできますよ」とのこと。

ところで世の中にが「素足を3cmぐらい底上げする」ためのシリコーン製付け踵というものも売られているらしい。

これはこれで、室内でも踵を上げ気味にしたい私には良いような、いちいち付けておくのも鬱陶しいような……

軽くてコンパクトな三脚を探す

桜の季節である。




昼の桜も良いが、夜桜も撮りたい。そうすると暗いのでシャッタースピードを落とす必要が出てくる。必然的に、手持ちでは撮影が難しいので、三脚を導入することにした。

今まで三脚を持っていなかったわけではない。しっかりしたやつはひとつ持っているのだが、如何せん重くてデカいので家の中での使用ならばともかく、持って歩く気にはなれない。
だいたい、写真というのは一期一会だ。撮りたいと思ったその時に撮れる機材が手元にあるかどうか、は非常に大きい。だからこそ画質より携帯性を採ってマイクロフォーサーズを使っているのだし、三脚についても同様に「普段から携行できる」ことが望ましい。
色々と機材を持ち歩いてみて、つくづく重さが堪えることは身に沁みている。日常の鞄は肩掛けのメッセンジャーバッグだが、その中に500g弱のiPadと400g弱のカメラ、日によってレンズ1〜3本ぐらいが入っている。鞄と合わせてだいたい2.5kg前後、これぐらいならばまあ行動に支障はないが、あと1kgも増えると重さが肩にのしかかってきて体が痛くなってくる。
つまり欲しいのは、鞄にすっぽり収まって重量も1kgを切るような軽量三脚だ。

要求性能

求めるスペックとしては、だいたい次の通り。

縮長

なるべく短かくなるもの。具体的には、普段使用しているバッグのサイズが幅だいたい35cmぐらいなので、そこに収まる程度の長さ。多少長くても斜めにすれば収まりはするが、できれば横にしてすっぽり収まるのが望ましい。よって縮長35cm以内を目安として探す。

重量

なるべく軽いこと。可能ならば500g程度だと望ましい。重くても1kgを越えない範囲としたい。

伸長

屋外で立って使うことを想定しているので、テーブル三脚のような短かいものは無視する。目の高さにレンズを合わせようとすれば150cm以上の高さが必要になるが、そこまでとは言わぬものの1m前後は欲しい。

耐荷重

少なくとも望遠レンズ付きのミラーレスを載せるのだから、せめて800g程度は支えられる剛性と安定性が欲しい。

候補を探す

軽量三脚というのは意外に多くない。そもそも三脚を必要とするのは主にレンズ交換式の大型カメラで、その重量を最上部に載せる以上はトップヘヴィで転倒しないよう三脚側にも相応の重さが求められる傾向があり、逆に軽い三脚の需要は主にスマートフォンなどを用いてセルフタイマーで撮るような方向がメインとなるため脚の短かいテーブル三脚で足りてしまう。
「小型のミラーレスと軽量三脚を携帯する」という需要自体が少ないために製品の数も少なくなってしまうようだ。
それでも、いくつか候補を探し当てたので、軽い順に紹介する。

自重500〜600gの超軽量三脚

とにかく軽さを最優先した選出。その分だけ他の性能には妥協があるが、他カテゴリに比して200gぐらい軽いというのはそれだけでアドヴァンテージだ。

SLIK 450G-8

伸長
900mm
耐荷重
1kg
縮長
315mm
自重
510g
雲台
3Way

軽量コンパクト三脚の大本命。縮長わずか315mmなので鞄に入れて邪魔にならず、重量510gという驚異的な軽さで負担もない。
その代わり耐荷重1kg、伸長900mmとやや物足りなくはある。スペックに妥協してでも軽さを求める人向け。

KING Fotopro DIGI-204

伸長
~1200mm
耐荷重
1.5kg
縮長
380mm
自重
570g
雲台
3Way

SLIKの450Gに比べ縮長が長く鞄への収まりには不安があるものの、その分だけ伸長には余裕がある。また自重はほとんど同じなのに耐荷重は1.5kgにまで増えており、そしてなんといっても安い。この金額なら駄目で元々、気軽に手を出しやすい。

SLIK Baby

SLIK 三脚 ベビースリック GR 4段 旅行用三脚 215388

SLIK 三脚 ベビースリック GR 4段 旅行用三脚 215388

伸長
970mm
耐荷重
2kg
縮長
360mm
自重
600g
雲台
2Way

ほとんどが黒一色の三脚界隈にあって水色、黄緑、ピンクのパステルカラーが特徴的な軽量三脚。自重600gながら耐荷重は2kgと、結構余裕がある。ただ雲台は縦向きに開けない2Wayなので使い勝手はやや劣る。

縮長を抑えたコンパクト三脚ファミリー「エアリー」シリーズ

縮長のコンパクトさを念頭に作られた三脚で、わずか300mmから伸長1014mmという伸び率が魅力的。同じSLIKの三脚としては450G-8に比べやや重いが、これは削り出しの金属球を用いる自由雲台の採用が影響しているものと思われる。脚を大きく開くことができるため最低地上高158mmでのローアングル撮影も可能で、運用の自由度は高い。流石にLサイズでは縮長40cmを越えてしまうが、その代わり伸長1543mmのアイレベル撮影が可能。

SLIK エアリーS100

伸長
1014mm
耐荷重
1.5kg
縮長
300mm
自重
750g
雲台
自由雲台
SLIK エアリーM100

伸長
1241mm
耐荷重
1.5kg
縮長
350mm
自重
895g
雲台
自由雲台
SLIK エアリーL100

伸長
1543mm
耐荷重
1.5kg
縮長
417mm
自重
980g
雲台
自由雲台

機能性を突き詰めた超コンパクト三脚

パイプ断面の形状により、ひねるだけで固定できる脚ロック機構を持ち、素早くセッティング可能な三脚。またロック金具が省略された分だけ縮長を稼ぐことができ、300mmを下回る驚異的な縮長を実現している。コンパクトさを求める場合の本命。

Velbon UT-3AR

伸長
1355mm
耐荷重
1.5kg
縮長
295mm
自重
786g
雲台
自由雲台

耐荷重2kg以上

軽量三脚の中では比較的重いカメラを支えられるカテゴリ。使うカメラによっては再軽量だけが最適解とも限らない。

SLIK スプリント MINI II

SLIK 三脚 スプリント MINI II GM N 4段 旅行用三脚 106556

SLIK 三脚 スプリント MINI II GM N 4段 旅行用三脚 106556

伸長
1090mm
耐荷重
2kg
縮長
350mm
自重
780g
雲台
自由雲台

エアリーS100ほど縮長がコンパクトでないが、その分耐荷重に余裕がある。こちらも脚を開いて最低地上高150mmのローアングル対応。

KING Fotopro X-Aircross 1 Carbon

伸長
1315mm
耐荷重
2.5kg
縮長
380mm
自重
820g
雲台
自由雲台

カーボン三脚。耐荷重2.5kgと比較的余裕のある方だが、縮長380mmとやや長め。

KING Fotopro X-Aircross 1 Aluminum

伸長
1315mm
耐荷重
2.5kg
縮長
380mm
自重
960g
雲台
自由雲台

Fotopro X-Aircross 1のアルミ版。重量がわずかに増えた代わりに金額は2/3。65gの重量差にこだわるのでなければこちらの方が手軽ではある。

Manfrotto Compact Light

伸長
1310mm
耐荷重
1.5kg
縮長
398mm
自重
816g
雲台
自由雲台

耐荷重が足りていないが、他のカテゴリに入れるに入れられなかったので暫定的に。
どうにも競合に対して優位性が見られない微妙な性能。

高級カーボン三脚

このカテゴリは重いカメラを支えるに充分な剛性と安定性を、それにしては極めて軽くコンパクトに持ち運びたいという、プロ向けの機材である。その分だけ価格も相応に高価い。

SIRUI T-1205X

伸長
1305mm
耐荷重
10kg
縮長
340mm
自重
900g
雲台
別売
GITZO GT0545T

GITZO 三脚 トラベラー 0型 カーボン 4段 脚のみ GT0545T

GITZO 三脚 トラベラー 0型 カーボン 4段 脚のみ GT0545T

伸長
1225mm
耐荷重
10kg
縮長
366mm
自重
1055g
雲台
別売

選定

縮長が35cm以内に収まるのは軽い順にSLIK 450G-8、SLIK エアリーS100、Velbon UT-3AR、SLIK スプリント MINI II、SIRUI T-1205Xの5本のみ。
もっとも軽い450Gは次点のエアリーS100の2/3しかなく、この点で圧倒的といえる。その代わり耐荷重も2/3になってしまうので、それを許容できるかどうかが分かれ目だろう。
逆に耐荷重1.5kgは欲しいということになればエアリーS100とUT-3ARには重量も縮長もほとんど差がないが、それだけに「ひねるだけで脚を固定/解除」というクイック操作のUT-3ARに軍配が上がる。
耐荷重2kg以上の枠ではコンパクトさを採ってSLIK スプリント MINI IIか耐荷重の高さと伸長を採ってFotopro X-Aircross 1 Aluminumか。重量ほぼ変わらず価格が1.5倍のカーボン版にする理由は薄い。