暴力被害の男女比を考える

「女性だけの街」という発言が話題になった。賛否はともかく、女性が日常的に「男性からの暴力被害を恐れている」ことを浮き彫りにするものではあったと言えよう。
これに対し、法務省の発表している平成29年版 犯罪白書などを元に「男性の方が倍ぐらい被害に遭いやすく、女性の危機感は幻想」といった反論が見られたのだが、些か論旨が乱暴に過ぎるように感じられたため、少し検証してみることにした。

暴力被害の男女比を計算する

犯罪被害の男女比はこのようになっている。

実際の犯罪発生率それ自体ではなく体感的な「危険性」について考える場合、重要なのは「危害を伴うかどうか」だろう。即ち、この表のうち「窃盗」「詐欺」「横領」に関しては主に金銭被害を生じせしめるものではあっても直接的な危害を生じせしめるものではなく、「危険性」の面からは無視して良いと考えられる。
残る「殺人」「強盗」「強姦」「暴行」「傷害」「脅迫」「恐喝」「強制わいせつ」「略取誘拐・人身売買」について、まずは男女比を見てゆこう。
暴行と傷害はどちらも暴力でもって物理的に相手に攻撃を加えんとした場合であるが、法的には「暴行」はさしたるダメージを与えなかったもの、「傷害」はダメージを与えたものを指すそうだ。
脅迫と恐喝はどちらも言葉でもって精神的に相手を脅し強要した場合であるが、法的には「脅迫」は本人や親族等に対する危害を予期させるもの、「恐喝」は金銭を脅し取ったものを指すらしい。
強制わいせつと強姦は、法律上は強姦が女性器に対する行為のみに限定されているため、被害者が男性の場合や女性器以外への性的強要などは強制わいせつということになる。
これらは分ける意義が薄いため、ここでは合算して示した。

犯罪種別 男件数 女件数 男比率 女比率
殺人 513 376 58% 42%
強盗 1314 797 62% 38%
暴行・傷害 34240 21938 61% 39%
脅迫・恐喝 3596 2182 62% 38%
強姦・強制わいせつ 247 6930 3% 97%
誘拐・人身売買 40 188 18% 82%
合計 39950 32411 55% 45%

こうして見ると、個別の割合としては性的被害および誘拐・人身売買については圧倒的に女性の被害が多く、それ以外の暴力的被害ではおおよそ男女比6:4程度となっていることがわかる。
どうだろうか。総数としてはたしかに「女性の方が危険性は少ない」と言えるのだが、しかしそれほど大きく差が出ているわけでもない。

この差を生じる要因は複数考えられるが、単純な性差あるいは肉体的な差のみでは語れないように思われる。
たとえば暴力的行為が「自分より強そうな相手よりも弱そうな相手を狙う」といった傾向がある場合、恐らくは男性より女性の方が狙われやすくなるだろうと考えられるが、実際には男性の方が多い。また強盗のような、特定人物を狙った行為ではない偶発的被害であってもやはり男性の方が多い。これはつまり、「男性の方が外に身を置く時間が長い」ために犯罪被害遭遇率に差が生じているのではないだろうか。

たとえば内閣府男女共同参画局による統計資料を見ると、就業率は男性の方が1.5倍前後多いことがわかる。これは男女の被害が(性的被害以外では)6:4と男性が1.5倍ほど多くなることと凡そ符合しているように思われる。

つまり、ほとんどの暴力的被害については「就業割合の差などから男性の方が女性より外出傾向が高いために結果として暴力的被害に遭遇する可能性が高い」だけであって実際の被害率には大きな差がなく、一方で性的被害および誘拐・人身売買では明白に女性のみが突出して高い、という事実を総合するに、「実際に女性の方が危険性が高い」のではないかと考えられる。

加害の男女比を見る

法務省の統計には加害者の男女比も掲載されている。これを見ると、男性の犯罪は(上で暴力的危害ではないとして除外した)「窃盗」「詐欺」「横領」で50%弱、残りの、つまりおおよそ暴力的危害を加えたと考えられるものが50%強とほぼ半々となるのに対し、女性の場合は84%が暴力的危害ではない犯罪であり、暴力的な加害は16%程度に留まる。単純な割合で言えば男性の方が女性よりも3倍以上、暴力を振るうということになる。

まあこれは比率であって絶対数ではないのだが、しかし上述の就労割合の差による「他人との接点」の数的差を考えるに、その絶対数的差はむしろ3:1×3:2=9:2ほどにまで拡大すると考えるべきではないだろうか。更に言えば男女の人口比はおよそ105:100と若干ながら男性の方が多く、それらを総合的に勘案すると「男性は女性の4〜5倍ほど暴力加害が多い」ことになる。

男女の被害件数比

今度はグラフを少し変えて、男女それぞれに「被害総数に対する各被害の比」を見てみよう。

男性

犯罪種別 総数 比率
殺人 513 1%
強盗 1314 3%
暴行・傷害 34240 86%
脅迫・恐喝 3596 9%
強姦・強制わいせつ 247 1%
誘拐・人身売買 40 0%
合計 39950 100%

女性

犯罪種別 総数 比率
殺人 376 1%
強盗 797 2%
暴行・傷害 21938 68%
脅迫・恐喝 2182 7%
強姦・強制わいせつ 6930 21%
誘拐・人身売買 188 1%
合計 32411 100%

男性は圧倒的に暴行・傷害が多く、また脅迫・恐喝の比率がやや高い。
対して女性は、男性では合計1%しかなかった強姦・強制わいせつと誘拐・人身売買を合わせて22%にも達している。強姦・強制わいせつがほぼ男性による加害であろうことは言うまでもない。
仮に強姦・強制わいせつを除いた暴力加害が男女分け隔てなく均等に分布しているとすれば、女性に対する男性からの加害割合は更に偏る。

まず、男性からの加害と女性からの加害をパーセンテージで見ると、前項「加害の男女比」での仮定より82%:18%程度となる。
被害の男女比55%:45%より、男女に均等分布とすれば

加害\被害 男性 女性
男性 45.1% 36.9%
女性 9.9% 8.1%

となる。
しかし女性に対する被害割合である45%のうち強姦・強制わいせつの21%、つまり被害全数の約10%は男性のみからの加害と見做せるため、その分を全体から抜いて割合を計算し直さねばならない。均等分布であれば男女5%づつであったはずの分が0:10%となることで男女被害割合も5%づつ増減が生じてしまうため、帳尻を合わせる必要がある:男→女が10%増加したということは逆に女→男を10%戻さねばならないはずだ。
つまり均等に割り振るべき分は男性加害72%:女性加害8%、それに男→女10%と女→男10%を加えると、割合は次のように変化する。

加害\被害 男性 女性
男性 39.6% 42.4%
女性 14.4% 3.6%

1%ほどの丸め誤差が生じたが、だいたいこれぐらいの比率だ。
男性被害では男女比2.75:1であるのに対し、女性被害は11.8:1にも達しており、「女性が男性を警戒する」理由を裏付けている。

持続可能な漫画読み放題の可能性を探る

漫画の違法共有サイトが話題である。
実際に覗いたことがないので伝聞になるが、「既存の合法的な電子書籍/Web漫画誌などよりも使いやすい」のだそうで、無料で気軽に人気作品が多数読めることから出版業を大きく圧迫しているようだ。
無論、国内の著作権法からすれば完全に違法行為なのだが、(事実かどうかは不明ながら)「日本の著作権法が及ばない国外にサーバを置く」ことにより取り締りを逃れているようで、対処が難しい。
また、仮に閉鎖に追い込むことが可能であるとしても、同様のサイトが出現し続けるいたちごっこになるだろうことは想像に難くない。利益が見込めれば手を染める者は必ず出現し、無料で読みやすければ非合法性など気にしないユーザは少なからず存在し、「みんな読んでる」となれば心理的な敷居はぐっと下がる。
となれば、「同程度に使いやすい合法なサービスを提供する」ことで非合法サービスの利益を下げるしかないだろう。

というのは例えば日本では知られていない海賊版の新潮流 – P2Pとかその辺のお話Rでも触れられているし、また出版社都合による絶版漫画を作者と読者へ還元する「絶版マンガ図書館」などを運営する赤松健の提唱する「電子書籍YouTube構想」なども、手法の差こそあれ目指すところは似たようなものだと思われる。

で。
問題は、「それって可能なの?」だ。
なにしろ版元は「原稿料、出版社人件費、印刷費」などのコストを賄わねばならぬのに、違法サービスはそこを「成果だけを盗む」ことでコストカットすることによって広告収益だけで黒字を叩き出している(と推測される)。果たして勝負になるのだろうか。

違法共有サイトと既存の合法サービスを比較する

合法的に多数の漫画が読めるサービスといえば、まずは電子書籍だろう。KindleやeBookJapanなど複数の電子書籍サービスが存在し、(一部の電子書籍を提供していない出版社を除き)大半の新刊漫画が読める。各巻購入だけでなく定額読み放題(ただし全作品が対象ではないが)もあり、比較対象としては適切だと思われる。
ただ、使い勝手には色々と難がある。私はほとんどKindleしか利用経験がないが、購入した作品の管理機能は貧弱で、読み終えた巻の続きを開くことすらできず、またブラウザ上で読むには購入作品個別ページの「今すぐ読む」あるいは購入済み作品一覧の「アクション」ボタンから「今すぐ読む」を選択、と少々手間がかかる。
また、未だ電子書籍は全作品を網羅するには至っていない。あくまで版元がデータを用意してこそなので、マイナー作品や古い作品などについてはカバー範囲が足りないし、電書化の遅い出版社などもある。また帯やカバー裏のおまけ印刷、限定配布の特典などまでは付いていないことも多い。

違法サイトに勝てるところまで引き上げようと思えば、「出版業界全体が協力し作品を網羅する」「印刷販売したデータは原則すべて取り入れる」ぐらいは必須、また作品管理機能を大幅に改良し、ブラウザから直接読むにも専用アプリを使うにも手間を抑えて「楽に読める」「続けて読める」ことに気を配らねばなるまい。

獲得すべきユーザ数

Netflixなどの少額固定料金制動画サービスが違法な動画共有の需要を低下させたように、有料であっても少額固定料金ならば無料の違法サイトとの競争に勝てる可能性はある。しかし、気軽に支払える金額を考えると、月あたり1000円がひとつの上限だろうと思われる。
ということは、サービスにかかるコストを計算し料金で割れば、「黒字に転換するために獲得せねばならないユーザ数」が割り出せるはずだ。
つまり問題は「コストをどう見積るか」だということになる。

漫画にかかるコストというのは大雑把に言えば「漫画家への原稿料」「出版サイドの人件費」「印刷・輸送費」といったところだが、今回は紙での出版ではなくオンラインでの出版を前提とするので印刷・輸送費はなくなり、代わりにサーバ運用およびシステムの開発/償却費が加わることになる。

原稿料はいくらであるべきか

まずは「漫画家が食べていくために必要な金額」を考えよう。
スタッフを1名雇い家賃7万円のアパートで漫画を描くために必要な金額|佐藤秀峰|noteによれば、「東京都の最低賃金でアシスタント1人をフルタイムで雇うと」年間350万前後。それに仕事場の家賃などを鑑みるに年間売上が最低でも720万ぐらいは必要と考えられる。
すると月あたり60万、連載が月30ページだとすると1ページ2万円、というのが「最低限必要な原稿料」の水準ということになる。
実際には(雑誌によっても作家によってもピンキリだが)マイナー誌の新人ではページ単価が8000円を下回ることも珍しくなく、Comicoなどでは週刊連載で「1話あたり5万円」(それも売れ行きに関係なく固定、全話フルカラー、しかもWeb掲載と単行本化とでフォーマット変更)などという安さだったりするが、ともあれ「理想的には」最低金額でページ単価2万を確保したい。
従って、今考えている「合法で漫画読み放題」サービスに於いても掲載原稿料は2万円として計算してゆく。

雑誌数から原稿料の総額を見る

すべての漫画雑誌に於ける原稿料の合計金額を見るためには月間あるいは年間の雑誌の総ページ数を調べる必要があるが、寡聞にしてそのようなデータは知らない。なので、大雑把に見積る。
漫画雑誌の数は、2014年に400誌、2026年には500誌を超える見込み - 情報中毒者、あるいは活字中毒者、もしくは物語中毒者の弁明に拠れば、2016年時点での漫画雑誌数はおよそ500誌にも上るのだという。まあこれは2010年時点での予測値なので実数との一致程度についてはわからないが、ひとまず500という数を採用しよう。
1誌あたりのページ数は雑誌によってバラツキがあるが、一例として週刊少年ジャンプを挙げれば1号あたり450ページ、作家数25人ほどのようだ。
また雑誌は週刊から季刊まで発行間隔に著しい差があり、構成比も不明であるからページ総数で考えるのは困難と言える。
上でページ数ではなく作家1人あたりの必要売上を考えたので、ここでもそれを基準として、ひとまず1誌あたり25人/月×60万円=1500万円を想定しよう。すると500誌合計で75億円/月ほどかかる計算となる。
ただしこれは原稿料2万円を最低基準としての話だからベテラン作家などではもっと高くなり、80〜90億円ぐらいかかるのかも知れない。

編集部の人件費

各誌で編集部の人数も収入もバラツキがあるだろうが、ひとまず作家数25に対し編集者1人あたり2人を担当するとして12.5人、平均年収600万とすると月あたり625万円ほど。×500誌=31億2500万/月。

サービスの運用費

これは、正直ぜんぜん経験がないので読めない。かなり大規模になりそうだけど、開発費用で30億ぐらい見ておけばいい?ぜんぜん足りない?5年間で償却されるのだとしたら月あたり0.5億。
サーバの費用もわからないが、Amazon EC2の16Xlargeあたりを見ると$7778.15/月となっている。80万円ぐらい?これひとつ分で足りるんだろうか。

総計

だんだん算出がいいかげんになってきているので本当にこんな金額で大丈夫なのか色々と不安はあるが、ざっくりと120億円/月ぐらいということにしておく。

損益分岐のユーザ数

上述の通り、ユーザ1人あたり利用料金は1000円ということにしたので、120億円を賄うためには1200万人のユーザが必要ということになる。
これがどれぐらい難しい数字かというと:恐らく日本で一番発行部数の多い週刊少年ジャンプが200万部なので、その6倍である。もちろん、あらゆる雑誌を統合しているからジャンプの購買層と重ならない別の雑誌購買ユーザなどを合算可能ではあるが、それでも最多の6倍というのはかなり無茶ではなかろうか。

広告収入

恐らく「敵」もやっている広告収入。漫画雑誌の場合は掲載位置ごとに料金が決まっており、週刊少年ジャンプの例では80〜350万円ぐらい。何枠あるのかはよくわからないが、平均200万円で20枠ぐらいあるとすれば1号あたり4000万円ぐらいの収入ということになる。
サービス全体としてはジャンプの6倍を誇るユーザがいるのだとして、その広告価値がどれぐらいになるのか、よくわからない。しかし外部の広告サービスに任せるのでなく独自運用するならば、読者ごとの閲覧履歴などからレコメンデーションされた「ユーザの嗜好や今読んでいる作品に合わせた」広告表示などによって価値を高めることは可能になりそうだ。
仮に1作品1広告表示、1pvあたり1円、1ユーザ平均10作品/月だとして1億2千万円……これだけでは費用の1%ぐらいしか賄えていない。ううむ、難しい……

単行本

月額固定料金で読める範囲を、あくまで「雑誌」であるとしよう。毎回読めるのは単話のみ、2〜3号もしくは2〜3ヶ月分程度は遡れるとして、それ以降は読めなくなる。こうすれば、定額とは別に単行本販売で利益を上げることが可能になる。
ただ、これは「無制限に読める」違法サイトとの競合に於いては諸刃の剣でもある。

あるいは、「読める範囲を制限しないが、オフラインで読むためのダウンロードデータあるいは印刷物の所有は有料」という手もあるだろう。その場合、元々定額で無制限に読めるのだから、データはDRMなしでも問題なく、文字通り「所有」させることが可能になる。

クトゥルフ神話TRPG人気の謎を探る

TRPGで今、クトゥルフが人気である。
たとえば2016年時点のコミケTRPGジャンルを見ると、クトゥルフが他タイトルに7〜10倍の差を付けている。
togetter.com
ニコニコ動画でのTRPGリプレイ系動画などを見ても、「クトゥルフ神話TRPG」タグの付いた動画の本数は「TRPG」タグの総数を上回る(つまりTRPGタグのない、個別タイトル動画がかなり多いということなので全数に対する割合が見えるわけではないが、勢いは伺える)。
その他いくつかの状況証拠からも、現在のTRPG界隈に於いて最も勢いのあるタイトルが「クトゥルフ神話TRPG」であることは疑いようがないのだが……正直なところ、ロートルTRPGプレイヤーにしてみればこの状況は不思議で仕方ない。少なくともクトゥルフ神話TRPG(の旧版である「クトゥルフの呼び声TRPG」)が登場した頃、これほどの人気は予想し得なかった。

クトゥルフ神話TRPGは、古いシステムである。
最初に米国で発売されたのは1983年、日本語版の発売は1986年。もう30年以上も前の設計だ。
現在の版は2004年のものだが、これでさえ15年前だし、そもそも30年前のそれとシステムはほとんど変わっていない。
もちろん「古いから悪い」というわけではないのだが、「進化していない」のは確かだ。他のシステムは、30年間のうちに様々な試みを取り入れ、新たな魅力を蓄えてきた。たとえばゲームマスタの負担を軽くして遊びやすくしたり、キャラに予め行動指針を与えておくことでプレイヤーが何をしてよいかわからず戸惑うことを防いだり、世界設定やジャンルを増やしてゲームの幅を拡げたり。
クトゥルフ神話TRPGにそうした新たな工夫はない。それどころか、今となっては固有の特徴、たとえば「正気度および狂気」のルールやクトゥルフ神話世界などについても他のゲームに取り入れられ、より進化し洗練されており、そうして見るとクトゥルフ神話TRPGには「これといって売りがない」ように思えるのだ。

いや別に新しかろうが古かろうが知ったことではなく、やりたい人がやりたいシステムを遊べば良いのではある。別に皆がクトゥルフ神話TRPGを遊んでいる状況にケチを付ける気はさらさらない(まあ業界的都合として特定タイトル以外への拡がりがあった方が嬉しいとかいう話はあるにせよ)。

ただ、どうにも「クトゥルフ神話TRPGでなければならない」理由が見えてこないというか、「人気になるべくしてなった感じがしない」ので落ち着かない。
というわけで「なぜクトゥルフ神話TRPGはこんなにも人気になったのか」を調べてみよう、というエントリである。

いつから人気になったのか

人気の要因を探るために、まずは人気が沸騰した時期を確認しよう。
ascii.jp
これは2014年時点での、ニコ動のTRPGジャンルに於ける動きをまとめた記事である。グラフを見ると、2012年初頭から急激にクトゥルフ神話TRPGが立ち上がっているのが伺える。この時期に何があったのだろうか。

ニコ動だけの現象ではない、ということを確認する意味も込めて、全体的な動きを確認してみよう。
TRPGの人気度を精確に測ることは難しいが、「クトゥルフ神話TRPG」に関して言えば言葉からある程度の推測が可能である。何故ならば、Cthulfuという単語の日本語表記が異なるからだ。
文学方面では概ね「クトゥルー」、TRPGでは「クトゥルフ」が使われているので、クトゥルフの語が使用される頻度を見ればTRPGの流行時期がだいたい解る、はずだ。
Googleトレンドで「クトゥルー」と「クトゥルフ」を比較してみると、当初ほぼ拮抗していたものが2008年末頃から若干の差が見えはじめ、2012年4月の大きなピークで引き離されたことが伺える。その後は2014年10月から上昇基調となり2015年10月にふたたび大きなピークを迎え、その後下降基調になったかと思えば2017年12月にまたピークを生じている。

では、これらのピークが何によって生じたのか、原因を探ってみよう。

前述の通り、クトゥルフ神話TRPG自体の発売は2004年。この時点では差がない、ということは特段盛り上がっていなかったと判断できる。

クトゥルフ神話 TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

クトゥルフ神話 TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

2008年には神格・神話生物大全「マレウス・モンストロルム」が刊行される。これが2008年からクトゥルフ優勢の原因……かどうかはわからない。
クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

更に2012年初頭には現代社サプリメントクトゥルフ2010」が発売、これによってクトゥルフTRPGが一気に遊びやすくなり人気大爆発──なわけがない。それなら旧版時代の現代社サプリメントクトゥルフ・ナウ」の頃から大人気だったはずだ。
クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

クトゥルフ神話TRPG クトゥルフ2010 (ログインテーブルトークRPGシリーズ)

再びニコニコ動画に視線を戻すと、このピーク以前にも何度かクトゥルフTRPG隆盛に繋がる流れが生じている。
まずは2008年のiM@STRPG動画「アイドルたちとクトゥルフ神話の世界を楽しもう!」シリーズ。
www.nicovideo.jp
ただし冒頭に挙げた記事にグラフを見ても、iM@S系はTRPG動画そのものの隆盛を牽引した立役者ではあったものの特定タイトルと結び付いてはおらず、この時点ではクトゥルフTRPGの流れを作ったとは言えない。
次に2011年3月、「ゆっくり達のクトゥルフの呼び声」シリーズ。
www.nicovideo.jp
「ゆっくり」は(少なくとも2014年までは)明らかにクトゥルフ神話TRPGとほぼシンクロしており、どういうわけかクトゥルフ=ゆっくりという図式が出来上がっていたらしいことが伺える。
もっとも、「ゆっくり」自体は2008年のSoftalk流行によって成立したキャラクター・アーキタイプであり、それ自体がクトゥルフを牽引したとは言えまい。むしろ、Googleトレンドで見る「ゆっくり」自体の言及頻度は(この言葉自体がごく一般的な語であるためにキャラクターとしての「ゆっくり」のみを抽出するのは困難だが)初出時のピークから2011年末頃までは下降基調であり、それが2012年の「クトゥルフ」のピークと共に上昇に転じているので、(関連性は不明なものの)「ゆっくりがクトゥルフを牽引した」よりはむしろ「クトゥルフによってゆっくりが牽引された」ようにも思われる。
すると、「これらの動画がクトゥルフ神話TRPGの人気を作った」わけでもなさそうだ。

結局この界隈に於いて2012年のピークがもたらされた原因は不明なままであったが、改めてTRPGおよびニコ動から目を離すと、どうやら原因らしきものが見えてくる:ピークの立ち上がり始める2012年初頭に発表されピーク形成の4月より放映開始されたアニメ、「這いよれ!ニャル子さん」だ。
www.tv-tokyo.co.jp
注意すべきは、この作品にはクトゥルー/クトゥルフは登場せず、従って直接的言及は見られないということ。にも関わらず鋭いピークの立ち上がり時期は本作こそが「クトゥルフ」言及数増大の原因であることを強く示唆しており、またニコ動に於けるクトゥルフ神話TRPGの急激な伸びもこの時期と完全に一致している。
つまり、どうやらニャル子さんの放映に伴うクトゥルー神話の認知上昇が、アニメと親和性の高いゲームジャンルから情報がもたらされたことで「クトゥルー」ではなく「クトゥルフ」を定着させ、また同時に主要情報源としてのTRPGに注目を集め、あるいは動画勢が知名度の上昇を背景に動画を量産する体制に入り、これが現代TRPG界でクトゥルフ神話TRPG一強という状況を生み出したのではないかと推測される。

なお2015年と2017年のピークはどうやら、モンスター・ストライク2周年で新キャラにクトゥルフが登場した時と、Fate/Grand Orderの新シナリオ「禁忌降臨庭園セイレム」が公開された時であるようだ。

なぜ人気は定着したのか

アニメ自体は2012〜2013年、OVAまで含めても2015年。また原作も2014年で完結しており、新たな盛り上がりを呼ぶ余地はない。にも関わらずクトゥルフ神話TRPGの人気は衰えない。
「アニメが人気を牽引した」のは良いとしても、それが放送終了後まで継続した、どころか現在でもなお盛り上がりを強めているのは何故だろうか。

これに関しては恐らく、(身も蓋もないが)「人気だから人気」なのだろうと考えられる。
ネコぶんこ「テーブルトーク・ロールプレイング・ゲームという趣味の縮小」という米国のTRPG業界分析記事があるが、この中でTRPGの価値を「ネットワーク性」、つまりは"君がゲームをプレイできるかどうかは、君が所属する社会的な繋がりのネットワークに依存する"と説明している。「人気作ほど遊べる機会が多く、遊べる機会が多いものほど買う価値があり、皆が買うものほどよく遊ばれる」傾向がある、と言い替えても良い。
また、これらはリプレイ動画に対しても言えることだ。どうせ投稿するなら閲覧して欲しいし、ならば人気ジャンルを狙った方が良い。同じジャンルにたくさんの動画があれば目にする機会は増え、それを入口に入ってくるプレイヤーはまずそのシステムを遊びたがるだろう。人気のポジティブ・フィードバック。

新たなTRPGプレイヤー層の遊び方と広がり

クトゥルフ神話TRPGの人気爆発以降にTRPGに入ってきた新しいプレイヤーに話を聞いていると、どうもオールドプレイヤーとは少し違った遊び方が見えてくる。

たとえばニコ動のTRPG動画をざっと見ると、「知名度の高いキャラにプレイヤーを仮託した」リプレイ(あるいはリプレイ風)動画がいくつも出てくるが、2011年頃まではTHE IDOLM@STERのキャラを流用した「卓M@S」シリーズや東方系など、主に女性キャラものが中心となっていた。これらキャラのファン層は主に男性で、従ってこの当時のユーザ層には男性が多かったものと考えられる。
しかし2012年からは黒子のバスケ、また近年ではおそ松さん刀剣乱舞など、女性に人気の作品が大きく盛り上がってきている。これは明らかに、TRPG界隈への女性プレイヤーの流入の証拠と言えるだろう。
かつてのTRPG界隈はかなり男女差著しく、少なくともコンベンションなど公的な場ではおよそ9:1ぐらいの比率だったと認識している。当時から「潜在的にはもっと女性がいるはず」と言われてはいたものの、身内のみで遊んでいるのか観測範囲に出てこない、という印象があった。
しかし現在の勢いを見るに、男女同程度──どころか男女比逆転しているのではと思わせるほどの勢いである。

そして、その結果としてTRPGに求められる遊び方にも変化が生じているようだ。キーワードは「なりきり」と「ウチの子再現」である。
「なりきり」とは要するに、オリジナルではなく既存作品に登場するキャラをPCとして作成し、そのキャラを演じることに重きを置くスタイルだ。
昔からある遊び方のひとつだが、「同卓の参加者全員が元作品の知識を有し、キャラを担当する形式に合意する」環境下でないと摩擦を生じやすく、従来はあまりメジャーな遊び方にはならなかった。これは、原作付きTRPGが定着しなかったことなどからも明らかだろう。
ところがオンラインセッション時代にあっては「同じ作品のファンで繋がる」ことが増えたためか、なりきりがスムーズに受け入れられる環境が整ってきた。あるいは逆に、「なりきりチャット」などの文化圏にTRPGが輸入されていった、とも言えるかも知れない。

「ウチの子再現」の方は、主に同人界隈を中心とした遊び方である。
仲間内で画や漫画、あるいは文章などで発表したオリジナルキャラである「ウチの子」を、親しい間柄の人が(あるいはキャラを気に入った人たちが)「描かせてもらう/描いてもらう」といった交流形態。その延長線上に、「ウチの子をPCとして登場させてTRPGを遊ぶ」という形式がある。

なりきりにせよウチの子再現にせよ、ゲームよりも先にまず完成されたキャラ設定があり、それをTRPGのシステムに応じたフォーマットに流し込む遊び方だ。ここで重要になるのはシステムや世界設定の魅力などではなく「どの程度のキャラ再現性を有するか」であり、むしろ独自の個性は邪魔とさえ言える。
この部分に、現代社会のごく普通の人を幅広く扱えるように作られたクトゥルフ神話TRPGはうまく嵌まったのだろうと思う。常軌を逸した特殊能力などはなく、しかしオカルト的技能や戦闘技術などのちょっとしたアクセントは盛り込むことができ、シンプルでわかりやすい。その上で「クトゥルフの神格/神話生物」という使いやすいフックがあり、正気度ロールというアクシデント機能だけでハプニングの面白さが演出できる、癖がなく手軽に遊べる身内向けのゲーム。
冒頭にて「クトゥルフ神話TRPGでなければならない理由が見えてこない」と書いたが、むしろ「強い理由がないからこそ、クトゥルフ神話TRPGが最適だった」のだ。

「本好きの下剋上」を追う博物館の旅


印刷博物館

2018年1月初頭まで、文京区の凸版印刷小石川ビル内にある印刷博物館にて「本好きの下剋上」コラボが行なわれている。
www.printing-museum.org
といっても、常設展示のうち作品に関係のある部分にちょっとした立て札があるのと1階ショップでグッズ販売が行なわれている程度なので、既に見学済の人が改めて訪れるほどではあるまいが、逆に「本好き」から印刷技術に興味を持った人にとっては良い展示内容だろう。

まずは印刷以前の記録から始まり、印刷の発展を一瞥する壁展示を見ながら進む。ここは「本好き」とは関係が薄い感はあるが、それを抜けるとガラス壁の向こうにグーテンベルクの「ブドウ圧搾機を改造して作った」印刷機の復元品がある。これは80%縮小模型なので実物よりは小振りだが(それでも結構大きい)、これこそがローゼマイン工房が最初に導入した印刷機そのものだ。
その奥の、企画展コーナー(現在は子供向け絵本「キンダーブック」の足跡を特集している)を抜けると、プランタン=モレトゥスの印刷工房が見えてくる。
ここからは様々な印刷技術や製本の発達を追う総合展示コーナーである。木版印刷/銅版印刷/石版印刷/孔版印刷(ヴィルマの繊細な絵を印刷するために用いたガリ版も孔版印刷の一種だ)の比較や活字の字母(活字を量産するための原型となるもので、ヨハンもまずこれを作るところから始めたものと思われる)、グーテンベルクの42行聖書(西欧最初の印刷物は聖典であった)やチェーンドブック(神殿図書室にもあった、稀覯本を書棚に繋ぎ持ち出せぬようにしたもの)なども。またヴァチカンから寄贈された羊皮紙やパピルス(マインは草を織っていたが、実際には薄く削いだ茎を縦横に重ね圧着して作る)の写本などもある。
奥には活版印刷ワークショップがあり、(ローゼマイン工房で使っているものとは異なるが)活字を並べて印刷する体験ができる。またザックの改良による「てこの原理やばねを利用した」印刷機も置いてある。

なかなかに充実の展示ではあるのだが、如何せん説明が足りない。一つひとつの展示物に、これは何なのか、印刷史上どういった意義があるのか、といった説明があるべきではなかろうか。
館内撮影禁止なのが惜しまれるが、ワークショップ参加者は工房内については撮影OKなので活版印刷機などを撮影したい人は是非。わりとすぐに定員埋まってしまうようなので、できれば見学よりも先にワークショップに参加するといいかも知れない。
ついでに曲面パノラマスクリーンに投影する「VRシアター」を見るのも良いだろう。現在のプログラムは印刷とは何の関係もない、ロシア・クレムリン中央にあるウスペンスキー大聖堂の内部再現映像だが、雪深い地の神殿イメージの参考にはなるかも知れない。どうせなら世界の名図書館ウォークスルー映像とかだと嬉しいのだけど……

プリンティング・ミュージアム

印刷博物館の最寄り駅からだと江戸川橋から有楽町線で8駅、新富町付近にも別の印刷博物館がある。
www.mizunopritech.co.jp
ただしこちらは独立した博物館ではなく社内なので見学は平日のみ、要予約。

紙の博物館

印刷博物館の最寄り駅(のひとつ)、後楽園からだと東京メトロ南北線で5駅。王子駅飛鳥山に、王子製紙の紙業史料室を前身とする「紙の博物館」がある。
www.papermuseum.jp
こちらは特にコラボはしていないが、ローゼマインのもうひとつの中核事業である製紙について学ぶことができる。洋紙の機械製紙についてはあまり関係がないものの、和紙の方はエーレンフェスト紙の製法のモデルでもあり、色々と参考になるかと思う。
また土日の昼頃には使用済み紙パックを利用した紙すき体験ワークショップも。

プランタン=モレトゥス印刷博物館

江戸川橋から有楽町線で池袋へ出て成田エクスプレスで空港からおよそ15時間、ベルギーはアントワープ/アントウェルペンに今も残る、かのプランタンの印刷工房が、今そのまま博物館として公開されている。
www.hollandflanders.jp
「書物および写本3万、木版画1万5千、銅版画3千、インキュナブラ150、その他絵画やデッサンなど、世界最大のコレクションを誇る印刷博物館」だそうで是非一度は訪れたい場所である。

NERFレビュー:Rebelle Charmed:Dauntless & Fair Fortune


Rebelle(反抗)はNERFシリーズの中で女性向けを意識したラインである。とりわけ、そのサブシリーズである「Charmed(魅了された/魔除け)」は蔦模様とチャーム付きチェーンで装飾された、優美なデザインに魅力がある。
中でも3連発のハンドガン「Dauntless(不屈)」とクロスボウ「Fair Fortune(幸運)」は魔法少女めいた、あるいは18世紀の前装銃的な雰囲気を持ち、スチームパンク方面でも人気が高い。つくづく国内販売されなかったことが悔やまれるが、平行輸入品がそこそこの価格で入手可能である。

Nerf Rebelle Charmed Dauntless Blaster [並行輸入品]

Nerf Rebelle Charmed Dauntless Blaster [並行輸入品]

Nerf Rebelle Charmed Fair Fortune Crossbow Blaster

Nerf Rebelle Charmed Fair Fortune Crossbow Blaster

普段あまりNERFについて性能レビュー的なことはしないのだが、なにしろ国内販売のないモデル故、所有者が書かないと情報がどこにもない。
まあDauntlessの中身はほぼTriadなので、性能面で目新しさはないのだが、Fair Fortuneの方はなにしろ空気圧でも電動ホイールでもなくゴム紐の張力でダーツを引っ掛けて飛ばす、本当に「弓」タイプのブラスターで、かつ6発装填のリヴォルヴァーという他にあまり類例のない構成であるため、ここでその特徴を詳細に記しておくべきであろうと考えた次第。

Dauntless

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他のブラスター同様に本体が樹脂製の紐で固定され、ブリスター入りのカラフルなプリントダーツ3本が付属しているが、シリーズ共通で本体に取り付けるチャーム付きチェーンが同梱されているのが特徴的。これはトリガ前方とグリップ下部のフックに取り付けるか、輪にして手首に着けても良い。
DauntlessのチャームはRebelleの翼ロゴと炎をあしらった金古美色である。

サイズ

銃口先端からグリップ後端まで26cmほど、コッキングフック後端までで28cmぐらい。
重量は200gちょっと。内部構造の同じTriadが120g程度なので倍近いが、あれは全長が12cmしかないのでサイズの割には軽め。
グリップもTriadと同程度の長さながら、湾曲しているため私の手では小指が少し余る感じがある。とはいえホールドに不安はない。

デザインなど


右側は前面に蔦模様があしらわれ、ミントグリーンの本体側は金色に塗装されている。白色の銃身にも蔦模様があるが、こちらは無塗装。
左側はRebelleロゴの他はほとんどが注意書きに覆われており、模様はごく一部のみ。
グリップ〜本体下部パーツは銀色で、グリップ左右はキルトクッション的な丸みを帯びた凹凸が付けられ白色に塗装されている。
コッキングレバーはマゼンタ色で、指をかけるリング部分がハート型で蔦模様の装飾が施されている。トリガも同じくマゼンタ。
オレンジのマズル+本体色2色程度に抑えられているELITEシリーズなどと比べると格段にカラフルである。

操作

銃口先端からダーツを詰め、コッキングレバーを引いてプランジャーにエアを満たし、トリガを引いて発射。シンプルなスタイルだ。グリップとレバーの距離が近く、ちょっと引きにくい人もいるかも知れない。
3本の銃口は奥にそれぞれダーツ装填時にのみ開く弁を備え、ダーツのある部分から順次発射される。Triadでお馴染の機構である。
しかしTriadは複数ダーツを装填した時には最初に下が発射され、次に右という順だったが、Dauntlessはまず右、次に下が発射された。つまり弁の順序が逆回りで、単純にTriadの内部パーツをそのまま流用するのではなく(基本設計は一緒だろうが)新造しているのがわかる。
ところでDauntlessの銃口は斜めに切られているが上下の銃口で弁の位置がずらされているわけではないので、ダーツ装填時は上下のダーツは同じ長さに揃い、つまり下は銃口よりいくぶん前に飛び出るスタイルとなる。

飛距離

初速を計測する装置も、飛距離を実測するスペースもないため箱書きの紹介に留まるが、裏面には75Ft/22mとある。同じ構造のTriadに対し内部スペースに余裕がある分だけプランジャーを大きく取り得るので威力が上がりそうな気もしたが、オレンジトリガのTriadには90Ftと書いてあるのでむしろ控え目のようだ。

総評

「スタイルの良いTriad」に尽きる。隠し武器めいたサイズではなくなったが、その分だけホルスターなどで携行しやすい。
サイズの割には装弾数が少ないのでメインアームとしては物足りなさがあるが、再装填の容易さは乱戦に強く、「不屈」の名に恥じない活躍が期待できる。

Fair Fortune

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販売時点では、左右に出っ張る弓部分と銃口の一体化したパーツは取り外され、弦が本体に通されて片側が弓に張られていない状態で箱に収まっている。組み立ての際は弦の固定パーツの向きを合わせ押し込み、また銃口部分を本体前面の切り欠きに押し込むのだが、この銃口がなかなか噛み合わせにくい。適正位置まで押し込まれた状態では銃口のオレンジ色パーツが本体の紫色パーツに噛み合って一体化するのだが、そこまで押し込まれず隙間のある状態でもそれなりに固定されてしまう。しかしその状態では正しく射出できず不具合を生じるので、必ず奥まで押し込むように試行すること。
付属のダーツはカラフルな3色だがプリントは施されていない。チャームはRebelleロゴと八芒星で、こちらはシルバー。

サイズ


全長約40cm、全幅約30cmと、クロスボウタイプの中では比較的コンパクト。
グリップは細身で、手の小さい女性でも握りやすい。その割に長さがあるので男性の手にもフィットする。
重量は293g、プランジャーがない分だけサイズ的にも内部機構的にもシンプルなのか、6発リヴォルヴァーとしてはかなり軽い方だと思われる(無改造のものが手元にないので参考値ながら、外装を剥いだハンマーショット285g、先端部にパテを盛ったストロングアーム385gほどだった)。

デザインなど


弾倉の後ろにプランジャーを置く必要がないためトリガのすぐ前に弾倉が置かれたリヴォルヴァーらしいスタイルである。シリンダーは6発装填のものにしては細身だが、これはダーツ後端に弦を引っ掛けられるようダーツの4割程が露出する程度の直径になっているため。

上端は弦を引くグリップがスライドするための専用レールが設けられており、オプション取り付け用のタクティカルレールなどはない。
Dauntlessは右側にのみ蔦模様に塗装が施され左側はほとんど注意文だったが、Fair Fortuneは左右ともに蔦模様があり塗装されている。ただしRebelleロゴの塗装は右のみ。

飛距離

箱裏面には75Ft/22mとあり、公称値はDauntlessと同一。もっともエアプランジャー式ではなくゴム紐の張力次第なので、伸びてくれば落ちる。劣化を防ぐには未使用時は弦を緩めたいところだが、外す方法がないので必要に応じ張り替えるしかない。

操作


シリンダが籠状のフレームに囲まれスイングアウトしないので、フレーム下部の凹みに沿って左右から1本づつ装填してはシリンダを回転させてゆく必要があり、装填速度はかなり遅い。
本体丈夫のサドルめいたグリップを引くと、下部の可動爪が弦を引っ掛け、またフレーム側の爪を引っ掛けて後ろに引っ張ることでシリンダの回転と弦の張りを同時に行なう。弦はそのままシリンダを越えて引かれ、フレーム後端のフックに落とされる。
ポンプアクションのようだが、他のブラスターのようにグリップを戻さず、そのまま後部に引いたままにしておく(戻すと発射できなくなるので、引き直すこと)。
グリップが後端にあり、かつダーツが上シリンダに装填されている時のみトリガの安全装置が解除され、フックが下がって弦が外れ、ダーツ後端に引っ掛かって勢いよく押し出しながら元の位置に戻る。
グリップを前に戻すと、弦に当たって引っ込んだ爪が弦を乗り越え、ふたたび引き戻しできる状態になる。

なお、稀に弦がダーツを押し出し切れず外れてしまうことがあり、その場合フレームの隙間から指などを突っ込んでダーツを押し戻すなどしないと、引っ掛かってシリンダが回転できず次弾発射できない状態になってしまう。ジャム時のアクセスドアなどはない。
特に銃口パーツが正しい位置まで押し込まれていないとジャムり易いので注意。

総評

装填や発射手順などを鑑みると総合性能は決して優れているとは言えないが、独特の発射感はなかなか気持ち良い。
全長に比して射出機構のストロークが長く切り詰め加工などの改造には適さないため、加工用途ならばパーツの追加か、もしくは塗装のみに留めておくことをお勧めする。

NERF互換系ブラスター

ウレタンスポンジのソフトダーツを射出するエアブラスター「NERF」は米Hasbro社の商品だが、他にも各社から類似商品が販売されており、多くは大体同じようなダーツを使用するため互換性がある。しかし国内ではNERF以外の商品はあまり流通せず、実態が把握しにくい。
主要な製品をまとめてみた。

米国

Mattel

Hasbroと並ぶ、米国を代表する大手玩具メーカー。2014年頃から、NERFとの互換性のない独自のエアブラスター「BOOMco.(ブンコ)」シリーズを展開している。

ブランド
BOOMco.
テーマカラー
赤+灰色+水色

他社商品とは異なりウレタンフォーム製のダーツではなく薄い樹脂製のダーツを使用する。先端には粘着性のゴム弾頭が取り付けられており、専用のターゲットに吸着する。
また連射型ブラスターはマガジンもダーツを2列に並べたものを使用し、交互に発射するなど他社製品にはない特徴を持つ。

メインシリーズは動きの面白いギミックを全面に押し出したデザインで、「おもちゃの銃」というよりもスポーツトイ的なイメージだが、その他にゲーム内の銃を再現した「HALO」コラボシリーズが存在し、こちらはぐっと質感の良いデザインになっている。
残念ながら国内での流通は薄く、正規入手が難しい。今後の展開に期待したい。

K'NEX

ブランド
K-FORCE
テーマカラー
黄色+黒

本体をブロックによって自由に組み立てるというユニークなアイディアのブラスターシリーズ。
とはいえ発射機構は基本的にほぼ一体化されており、それに支持フレームでグリップをどう取り付けるかぐらいの違いになるようだ。当然ながら銃らしさは薄い。

香港

Buzz Bee

ブランド
Air Warriors

テーマカラーを持たずカラフルな商品を展開する。デザインはいかにも子供のおもちゃめいた曲線的で実銃指向の薄い、良く言えばレトロフューチャー、悪く言えばチープなものが多い。本体色は成形色+シールのみ。
ただ近年はデザインについてもカラーについても変化が見られ、統一された路線へ移行しようとしているようだ。

Zuru

ブランド
X-SHOT
テーマカラー
黄色+深青
国内販売
CCP(バンダイナムコ系)

メインシリーズX-SHOT EXCELは未来的デザイン路線で、NERF N-Strike ELITE系に相当する。カラーヴァリエーションとして白+黒のZombie、ピンク+紫のPink Seriesがある。
その他、デザインの異なるサブシリーズとして虫型モンスターを仮想敵に実銃に似せたデザイン路線のBUG ATTACKを展開している。こちらはNERF ZombieStrikeに相当し、テーマカラーも類似の黄緑色となっているが、水色の「粘液」状のアクセントが付着している点が特徴的である。
更にはNERF Modulusよろしくオプションパーツ付け替えを意識した新シリーズをメインカラー赤で展開するつもりのようだ。
塗装はなく、いずれも成形色+シールではあるが、パーツごとに色を分けてカラーリングを整えることでチープさを抑えており、デザインと相俟って見栄えのする仕上がりになっている。
内部機構は良く言えば堅実、悪く言えば単純で、その分だけ動作はしっかりしている。反面、マガジンやレールなどのオプションが規格化されておらず、互換性には難がある。
国内の正規流通も開始され、総じて今後に期待のかかるブランドといえる。

Prime Time

ブランド
Dart Zone Covert Ops、Adventure Force(過去シリーズ?)
テーマカラー
黄緑+深青

連射にこだわる傾向があり、ドラムマガジンや給弾ベルトによる大型多弾ブラスターを多く取り揃えている。電動のガトリングなど他社にはない路線も多く、BOOMcoと並んで国内流通が期待される。

Lanard

ブランド
Huntsman、Total X-Stream Air、TOTAL CLASH

香港系の中では実銃に寄せた形状のブラスターを多く展開している。構造はシンプルだがデザイン面でファンも多い。

その他

トイザらス

NERFの独自カラーヴァリエーションを販売するトイザらスは自社でも(ZURUのX-SHOTなどのOEMとして)AirZONEやStats Blastといったブランド名でブラスターを展開している。

掃除観の変わるスティッククリーナー RACTIVE Air

掃除機を買った。

買い替えではなく買い足しである。

現在、メインの掃除機としてダイソンのキャニスター型を使っており、性能には満足しているのだが、これは普段収納してあり使用時には5kgぐらいの重量物を取り出し電源ケーブルを引き出してコンセントに繋ぐという手間が生じるため、いささか手軽さを欠く。
工作による削り屑だとか料理で散った粉だとか、「大型の掃除機を使うほどでもないがちょっと掃除したい」と思うことが多かったので、小型掃除機の購入を決意した。

用途によって重視すべき点は異なるだろうが、今回はあくまで「取り回しの良いサブ機」としての使用を念頭に、軽量なコードレス機を選出した。また紙パックは規格乱立の傾向があり消耗品の入手に不安があること、ゴミの溜まる様子が見えるかどうかがやる気に影響することを考慮しサイクロン機に絞った。
小型軽量タイプの掃除機では持ち手から吸入口までが短かく手元に近いところで使うハンディタイプと長い柄あるいは吸入管を持ち立って使うスティックタイプがあるが、長くも短かくもできるスティックタイプの方が用途が広いと思われたためハンディを除外した。

軽量を謳う機種でも、本体にバッテリーやヘッドなどをセットした全備重量で2kgを下回るものはそう多くない。
紙パック式ではアイリスオーヤマのKIC-SLDC4が全備重量で1.2kgと驚異的な軽さを実現しているが、今回の要求仕様には合わない。

また同じくアイリスオーヤマのラクティは1.35kgでサイクロン式だが、吸入管ではなくハンドル部分が長いタイプであるため床以外の掃除には不向きであり、これも除外した。

全備で2kg以下のスティック型コードレスサイクロンは、上記のラクティを除けば2機種しかない。

東芝トルネオVは本体1.4kg、全備重量で1.9kg。シャープRACTIVE Airは本体1.1kg、全備重量1.5kg。今回はハンディ用途のため軽さを取ってRACTIVE Airを選択した。

実際に使ってみると、想像以上に軽い。いや、もちろん1.5kgだからそれなりの重量感はあるのだが、これは普通のキャニスター型掃除機のヘッド+パイプ部の重量よりも軽いぐらい(ダイソンDC63で計ってみたら1.6kgあった)で、引きずって歩く本体がない分だけ明らかに取り回しが楽になっている。
その上、ヘッドがブラシの回転で自走する構造になっているため、動かすのにほとんど力が要らない。

カップが小さいので一部屋かけるとすぐ一杯になるが、これを捨てるついでにブラシに巻き付いた髪の毛も除去しておくとメンテナンスも楽に済むことに気が付いた。
大型の掃除機だと「取り出すのが面倒なので」掃除の頻度が低くなる(すいませんズボラで)のだが、これだと毎日ちょっとづつかけておくのも苦にならないので、掃除のやり方が変わってくる。軽い掃除専用のサブ機と侮っていたが、むしろメインに常用してもいいくらいかも知れない。

ちょっと気になるのがオプションノズルで、キャニスター型だと本体に収納スペースが設けてあったりするのだがコンパクトなスティック型にはそれがない。据え置きのバッテリーチャージャーが用意されているのだから、そこにノズルスタンドが付いてたりしても良かったのでは、と思うのだが、どうだろうか。