ボーダーブレイク戦術総論

ボーダーブレイク戦術については様々に論議されているが決定的なものがない。無論マップごとの差違や新武装による変化など種々の要因があって一概には言えないというのが実情ではあろう、が逆に言えばそれら要因が一意でさえあれば状況に応じた有利不利を判断することも不可能ではないということだ。


そもそも、ボーダーブレイクに於ける戦術とは何か。
戦術とは、戦闘に勝利するための手法である。敵を斃すための技術ではなく、戦争に勝利するための計略でもない。つまりBBに於いてはコアにダメージを与えるための方法と言える。
無論、41の投げ入れ方ではない。それは戦技の一部に過ぎない──そうではなく、「41を投げ入れる位置まで安全に移動するための方法」の方だ。大雑把に言えば、見付からないように単騎で敵ベースまで接近するか、敵ベース付近のプラントを占拠して物量で押すかの2パターン。


単騎潜入の利点は敵に防衛に回る時間を与えないことだ。ベース内に踏み込んだ時点、あるいはレーダー破壊後であればコアがダメージを受けた時点で敵軍全体に警報が発せられるが、敵が戻る迄に充分なダメージを与えることができるだろう。
対してベース前占拠の利点は飽和攻撃にある。余程火力の高い攻撃でもなければ、耐久力を削り切るまでには時間がかかるため、コアへのダメージを完全に防ぐのは難しい。41が1発でも入れば1/30以上ゲージを削ることができるわけで、防衛機と攻撃機が同数以上であれば一度に削れる量は単騎とは桁違いに多くなる。また撃破後すぐにコアに到達できるため連続して削ることができる上に、敵の大半が防衛に回らざるを得なくなるので奪還されたとしてもその他のプラントがフリーとなり、全体として戦線が大きく押し上がる。


では、どちらの方が有利なのかを検証して行こう。
まずは単騎潜入時のダメージ効率を考える。この場合、更に選択肢が2種類:レーダー破壊後に潜入するか、無視してコアを攻めるか。
レーダー破壊の利点はベース内での安全時間が延長されることと敵を長くベースに引き付けること、欠点は攻撃までに時間がかかることとベース警戒レベルを上げてしまうこと。言うなればレーダー破壊という選択肢はベース前プラント占拠とレーダー無視コア凸との中間的な選択肢と言える。
単騎でコアに与えられるダメージは時間によって増大するが、41の有無で随分変わる。フルE.D.G.で腕がβだとリロード時間が50%以上短縮されるため41の投擲間隔がおよそ0.7秒になる。シュライクIIだと20%短縮で1.12秒。実際には狙いを付けてAボタンクリックまでのタイムラグなどもあるのでもう少し時間がかかるだろうが、起爆まで3.5秒の遅延があるのでレーダー破壊後であれば初発起爆する頃には3発投げ終えることができる筈だ。1発あたりのコアダメージは12000程度。


レーダーを破壊しない場合、ベースの敷居を跨いだ瞬間に警告が発せられる。そこから敵が到達し自機が撃破されるまでの時間と、コア下に到達し攻撃を開始するまでの時間差を計算する。
まずは自機のコア到達までの時間。ダッシュ速度が最速だとしても(前回の計算に拠るとブーストステップでの移動速度は21.6m/s、ACで43.2m/s。ベース入口からコアまでの距離はマップにも拠るが、およそ60m〜100m程度。つまりACでも2秒ほど、ダッシュのみでは5秒ほどの時間が必要になる。連続でダッシュ可能な距離はブースト供給量にも依るので、実際には5秒連続での移動が行なえず1〜2秒余分にかかるかも知れない。突入前にACを使い切るのは致命的だ。
次に敵機到達までの時間。
エリア移動は最短で3秒だが実際には再出撃ポイントを選択のち着地までに更に時間がかかる。ポイントの選択にほぼ1秒、「出撃」を押してから機体が操作可能になるまできっかり3秒。つまり、無人のベースなら警告が出た瞬間から7秒は完全にフリーということだ。
ということはレーダー破壊なしの場合、ベースまでが遠くダッシュのみでの移動であると41を1発投げるかどうかといったあたりで敵が到達する計算になる。逆にレーダー破壊後であれば41が3発入ったあたりで警報が鳴るため、その後主武装を1マガジンぐらい撃ち込む余裕がある。7秒で敵到着+1秒で撃破だとすれば持ち替えを考慮してもサーペントを1マガジン撃ち込むだけの余裕がある。


更にレーダー破壊後には周辺砲台を破壊する選択肢もある。ベース内の砲台を一掃してしまえば安全にコアを攻撃でき、敵到着後の生存時間も延伸する。生存時間が3秒に伸びればサペで1マガジン半、M91を丸々1マガジン撃ち込める。なおこれぐらいのタイミングだとM91の方が総火力に勝る。
ただし時間をかけた分だけ敵がマップアイコンから潜入者の存在に気付く危険性も高まる。攻撃開始前に殺られたのでは元も子もない。内側向き砲台のうち敵の再出撃位置であるコア後方から離れた、ベース前側を狙うものを1〜2基破壊する程度に留めるのが良かろう。


ここまでの火力を計算すると、レーダー破壊なしの場合は41×2発=24000ダメージぐらいに留まるのに対し、レーダー破壊後であれば50000〜60000ダメージが期待できる。ベース巡回の可能性が低い、開始3分程度で中央付近に膠着が発生して注目が集まっており、また敵に狙撃兵がいない状況であればレーダーは破壊した方が多くのアドヴァンテージを得られるだろう。逆に開始5分を過ぎており、敵が潜入工作を警戒し始めている状況ならばレーダーに構わず強引にねじ込む方が効果的だと思われる。


では次にベース前プラント占拠と単独コア凸の比較を行なう。
ベース前を占拠単独奇襲する場合、中立化に10秒、自軍占拠に10秒かかる。最速では中立化直後に露見した場合、占拠完了時点で既に敵がベース復帰している可能性もある。すると41を投げ始めた頃、あるいはもっと早くベース突入から迎撃を受けることになり、単騎でコアへ与えられるダメージは決して大きくない。
ただ、占拠さえ完了してしまえば敵がそれを機能停止するまでの10秒ほどの間で軽装機が移転可能だから、少なくとも3機ぐらいのコア凸が期待できる。防衛機と同数以上の攻撃機がいる場合、うち1機程度がほぼフリーになってフルセット攻撃できる可能性は少なくない。単騎での攻撃と違い、突撃する機数によって成果はかなり違ってくる。


プラント=ベース間距離はマップによって違うが概ね150〜200m程度。最速だと6〜10秒程度で到達可能だ。
つまりコア到達までに10秒+破壊されるまでに41×2発=3秒+再出撃待ち10秒+出撃ボタンまで1秒として、24秒間維持できればコア攻撃組は更に攻撃を繰り返すことができ、ダメージは倍加する。
ベース前を取らずに再出撃する場合、中央付近で膠着しているとするとコアまでの距離は2〜3倍に伸びる。移動に+20秒として44秒ごとに1回のコア攻撃。実際には距離が伸びる分だけ途中迎撃の可能性は高まり、迂回のため更に時間がかかったり、突破に41を使わざるを得ずコア攻撃火力が減少したりもするだろう。


さて、ここまでを踏まえて時間効率を求めよう。

レーダー破壊なしでの単騎攻撃
ダメージ30000/移動10秒+攻撃10秒=ダメージ効率1500
レーダー破壊しての単騎攻撃
ダメージ70000/移動10秒+レーダー破壊20秒+攻撃15秒=1555
ベース前占拠による飽和攻撃
ダメージ15000×攻撃機数^2/移動10秒+占拠20秒+攻撃5秒=429/1714/3857/6857/10714(1機/2機/3機/4機/5機)

移動についてはすべてベース前プラントからコアまでの移動時間として考えている。
こうして見る限り、レーダー破壊の有無は効率に大きな差を与えていない。またプラント占拠は一件大きく見えるが、機数も増えているので単騎攻撃と機数あたりダメージ効率で比較するならば429/857/1286/1714/2143となり、頭数が揃わない限り効率が悪い。
ただ、機数さえいれば(2機以上の時点で既に)単純に作戦時間あたりの火力では他を上回ることになる。つまり41数個分のリードを取るのではなくゲージ逆転を狙うなど、大きく削る必要があるならば他に選択肢はない。


レーダー破壊やプラント占拠の強みは2撃目以降の間隔にある。レーダー破壊までの時間を必要としない2回目以降はダメージ効率が上がるし、プラント占拠に至っては波状攻撃により第一波撃退よりも早く第二波、第三波が押し寄せ、防衛を上回る効率でコアを削り続ける。第一波の再出撃までは24秒かかるが、その前に他の機が移動してくることが可能であるから、10秒程度の間隔で攻撃が継続する。
もうひとつ、単騎凸の難しい重量機や強襲以外の兵装が参加可能である点も見逃せない。機動力を含めた総合的なコア攻撃力でこそ強襲兵装はずば抜けているが、機動力が無視できる戦況であれば重火力や支援のリムペットVの方がコア攻撃力は高いし、また再出撃を待つまでもなく再起動することで攻撃効率を更に増加させることすら可能である。
先程の時間効率を、2回分/3回分で考えると以下のようになる。

レーダー破壊なしでの単騎攻撃
ダメージ効率1500
レーダー破壊しての単騎攻撃(2回目以降)
ダメージ70000/移動10秒+攻撃15秒=2800
ベース前占拠による飽和攻撃
ダメージ15000×攻撃機数^2/移動10秒+攻撃5秒=1000/4000/9000/16000/25000(1機/2機/3機/4機/5機)


ここまでは時間効率を語ってきたが、実際のところは秒数より回数の問題だ。1回あたりの時間が短かく済むとしても回数こなせないのでは、長時間かけるのと大差ない。
単騎攻撃の問題点は、防衛が複数いた場合の効率の悪さだ。1回あたりの瞬間火力は決して大きくない以上、回数を重ねてこそ意味がある。しかし実行の度に警戒レベルを上げてしまい、成功率はどんどん落ちる。
自機より多くの防衛がいると、強引に入り込んでも一瞬で溶かされてコアに届かないので、精々外側から4pを狙うぐらいしかできない。当然ダメージ効率は半分以下になってしまう。そればかりか凸を警戒されてルートで待ち伏せを受けることで4pシュートすら覚束ない。初回こそ効果を期待できるが2回目以降はよほど慎重にタイミングを見計らわないと、勝利に貢献どころか無駄死にとなりかねない。
対してプラント占拠では、占拠中及び占拠直後の味方機移転前段階での阻止が最も危険性の高い瞬間となるが、移転開始後は手数で圧倒できるために継続的に大きな効果が期待できる。たった1回であってもコアゲージが大きく削れるので効果は非常に大きい。また敵を防衛に釘付けにすることでベース前以外のプラントも手薄となり、一気に占拠を押し進めて独占を狙ったり、ベース前が奪還されてもやや下がった場所に橋頭堡を確保して押し続けることができる。
ただし総攻撃に注意が向く分だけ、カウンターへの警戒を要する。移転の早い軽量機は一度ベース復帰してから敵前へ移転など、リードを守るための行動も必要になるだろう。


以上から、戦術としては基本的に単騎潜入よりも総攻撃をお薦めしたい。