やってみなけりゃわからない

Googleストリートビューに対する(主として否定的な)反響は大したもので、Geek多めなはてなslashdotでさえ半数以上は否定的見解である。
賛否をどうこう言うつもりはあまりないが、正の可能性にせよ負の可能性にせよ、長期的に様子を見なければ判らないものではないかとは思う。
インターネットが「世界中と繋がっている」ということが感覚的に理解できずにいる人たちによって「無断リンク禁止」騒動が引き起こされるように、今までプライヴェートに近いパブリックだと思っていたものが世界レヴェルのパブリックな状態にされてしまったことに対する戸惑いはあろう。だが一方で「近所に公開」と「世界に公開」の間に質的な差はないのではないかとも思う。


公道に向け表札を出し、案内地図にも個人宅名が載り、電話帳に氏名と連絡先が掲載されるのが当然だったものが、この10年ぐらいの間にプライヴァシへの意識が急激に高まり、可能な限り個人情報を出さないようになってきた。その背景には勿論、コンピュータ・ネットワークの発達により情報の結び付けが容易になってきたこと、その結果として個人のプライヴェートに肉薄することが可能になってきたことが挙げられる。今回の騒動にしても、住所情報さえあれば住居の外観から生活レヴェルその他の「書類からは得られない」情報が詳細に見えてしまうことへの嫌悪感/恐怖感があるだろうことは想像に難くない。
一方で「他人はそれほど自分に関心を持たない」「情報の洪水から偶々自分が選ばれる確率は極めて低い」という常識についても思い起こす必要があろう。もしストリートビューがストーキングなどに利用されるとすれば、それは自分の住所を入手できる程度には近しい人物に限られるし、そういう人にはストリートビューがあってもなくても大した差はない。空き巣の下見に使われるという意見もあるが、その道のプロが撮影時期も不明な写真ひとつで下見を済ませるとは思えない。
その他にちょっとデメリットを思い付かない。あるとしても後ろ暗いことが明るみに出てしまうとかいった可能性ぐらいではないだろうか。


可能性については、今のところ単なるヴァーチャルツアー程度に留まっている。が、Googleの対応次第ではストリートビューを組み込んだアドヴェンチャーゲームやストリートビュー対応迷路などの遊び方も考えられる。あるいはナヴィゲーションへの応用として、予め経路の景色を動画再生するなど。また、これが契機となって公共施設の内部案内を同様の手法で構築するかも知れない。実際の駅内部を見渡しながらの乗り換え案内など、かなり便利になるのではないだろうか。


なんにせよ、今何か言えることはすべて可能性の域を出ない。少なくとも先行した米国で明らかに開始時期以降の犯罪発生率が増加している……などのデータでもない限りは、現段階で厳しい措置を講じる理由もまったくない。
まずは見守ろう、話はそれからだ。