地震予知の余地

地震の年表を見ていたら、1975年中国・遼寧地震に「予知に成功」とある。詳しく調べてみたところ、当日に動物の異常行動などが多数報告されたため自治体が住民を避難、その夜にM7.3の地震が発生したものの死者1300人程度で済んだ……という話のようだ。


でも、これって地震予知と言えるのだろうか。
事実として人的被害を抑えられたのは確かなのだろう。避難した住民は100万人にも及んだようだから、何もしなければ万の単位で死者が出ていたと予想される。
しかし、それは結果に過ぎない。実際、この後にも中国での大きな地震は何度も発生しているし、特に翌年の河北省唐山で発生したものは20世紀最大の被害をもたらした巨大地震であったが、まったく予知できていない。
現段階では、遼寧のそれは「偶然」以上の評価を与えられない。


では、予知するためには何が必要となるのだろうか。
天変地異の前触れとしての動物の異常行動その他、所謂「宏観現象」は古くから知られており、それに基づいた研究も続いている。しかし、それでも予知に至った例がないのは何故か。
地震予知を予知として成立させるためには、

  1. いつ
    • 「いつか大地震が起きます」では避難の役に立たない
  2. どこで
    • 「どこかで起きます」ではやっぱり役に立たない
  3. なぜ
    • 最低でも相関性が証明できなければ、自治体として手を打てない

の3点が必要である。しかし宏観現象観測ではこのいずれも満たすことができずにいる。
例えば動物をセンサーとするなら、最低限「対象の何割が」「どういう行動をしたら」という規定が必要だろうし、地震計のように各地に観測施設を置いて震源予想地域を絞り込まねばなるまい。いずれにせよ事前に多くのデータを集め、「観測から何時間以内に発生する可能性が何%」ぐらいのことは言えねばならない。


結論から言えば、宏観現象による予知の可能性は否定できない。しかし残念ながら、現在はまだデータ不足だ。もともと地震の発生割合が決して多くはないものだけにデータ採取機会も限られるのだから仕方ないとも言えるが。
今後予知研究が発達するとすれば、宏観現象によるものではなく地殻センシングによるものの方が有望ではないかという気がする。