知識よりも調査力を

私は15年来Macを使い続けてきた生粋のMacユーザだが、どういうわけか社内のPCサポートよりWindowsのトラブルに強い。当然ながら自分で経験を積んできたわけではないから、知識として知っている量が多いというわけではなく、単に適切な解決方法を調べるのが速いだけのことだ。
予め豊富な知識を有しているその道の達人は、検索などするまでもなく適切な答えを出すことができる。それは重要な能力だ。けれど、そこまで到達できる分野というのはごく限られる。人はすべての分野で充分なリソースを振り分けられるほどにキャパシティがないから。
ならばその限られたリソースを、検索能力へ重点的に割り振ってみてはどうか。エキスパートというほどまでではないにせよ、情報検索可能な環境さえあればそこそこの知識を持っているに等しい能力を発揮できるだろう。


初心者の質問を見ていると、ちょっと調べればすぐ判りそうな質問がかなり多い。これは正直言ってサポートする立場からすれば少々気に障る状況だ。つい「それぐらい調べろよ」と思ってしまう。
しかし、彼らの反応を伺うに、どうやら知識がない以前にどうやって調べたら良いか判らないらしいことが見えてくる。つまり、根本的にここを解消しない限り、彼らは教えて君に留まらざるを得ないということになる。


では、一体何が障害になっているのか。分析してみる。

その方面に疎いので適切なキーワードを思い付かない

これは結構多いと思う。単純な知識不足で、その業界で一般に使われる用語を知らないので自分なりの表現で検索した結果、適切な情報を得られずにいる場合だ。
対処は非常に簡単で、単に適切な検索語句を指示するだけでいい。あとはそこから自由に情報を得てゆくだろう。
ただ、根本的な対処として、専門用語解説データベースの蓄積などが望まれる。特殊な用語を一般語で解説することで、用語を知らずに検索しても必ずそれが提示され、すぐに必要な語句が理解できるような構成のものがあれば、毎回新人にキーワードを教示することなく問題は解決するだろう。

検索技術を知らない

用語が適切でないとしても、明らかにノイズになりそうな結果を除外してゆくことでかなり高精度に情報を絞り込むことが可能だが、そもそもこうした検索オプションを知らないということも考えられる。
少し解説する。尚、以下は基本的にGoogleの利用を前提としている。Yahoo!、その他を利用する際にも類似するオプションが用意されていると思うので、それぞれの検索オプションを参照のこと。また、記号は原則として半角表記であることに注意。

and検索

複数キーワードをスペース区切りで指定すると、そのすべてを含むページのみに絞り込むことができる。ごく一般的な単語などでは膨大な検索結果が出てしまうが、その中から必要とする情報のみが使用しそうな単語を指定することで、かなり精度を高めることが可能である。例えばリプトンのピーチティーについての情報が欲しいが商品名を覚えていないとする。「ピーチティー」だけでは他社の製品も色々出てくるので、追加情報として「紙パック」「ピンク」などを同時に指定することで、ピンク色の紙パックに入ったピーチティーの情報取得が期待できる。

or検索

ひとつの検索対象を指す表現が複数考えられ、そのいずれが用いられているか判らないときは、複数キーワードのうちどれか一つでも含まれていれば表示するようにオプションを指定することができる。複数キーワードを|で区切って列記する。
先の例では、「ピーチティー」以外に「桃の紅茶」なども考えられるので、「ピーチティー|桃の紅茶|ももの紅茶」などと指定すれば良い。

not検索

検索結果から不要な情報を省くためのオプションである。キーワードの先頭にマイナス記号を付けることで、その単語を含むページを除外する。
例えばピーチティーの情報から喫茶店のメニューを省くために「-メニュー」などと指定しておく。

フレーズ検索

普通に文章で検索しても単語を抽出してand検索されてしまうが、必ず一連の文章で検索したい場合は文章全体を"で挟む。
"500mlの紙パック"など。

範囲指定検索

検索の対象範囲を特定のサイト内に限定したい場合は、「site:」に続いてhttp://を除いたURLを指定する。検索範囲は、そのURL以下のページに限られる。検索機能を持たないサイト内のページを検索するときなどに便利。

キーワードが抽出できない

これは主に国語の問題になるが、想定する質問内容から重要なキーワードを拾い出すことができない場合である。例えば「都市が移動する世界を描いたSFのタイトルが知りたい」という場合、その文章をそのまま入力しても検索結果は出ない。ここから知りたい内容を特定するに足る最低限の単語を残し、他を切り捨てる必要がある。
知りたいことは何か?「タイトルが」とあるから、重要なのはタイトルだ。しかし「タイトル」で検索しても意味がない。では、どんなタイトルか?「SFの」そう、SFだ。けれどSFといっても色々ある。どのようなSFなのか?「都市が移動する世界」を描いたSFだ。これで、内容のうち必要な部分は取り出した。
次に、これを単語に切り分ける。「都市」「移動」「世界」このあたりが、検索に必要なキーワードになる。これで調べてみると、フィリップ・リーヴの「移動都市」が見付かった。
実は移動する都市を扱うSFは他にもあるので、探している情報はこれではないかも知れない。その場合、以下の方法で抽出条件を変えてみる。

  1. 見付かった情報に含まれ、目的とする情報にはない特徴をnot検索する
    • 「移動都市」では都市が都市を「食べる」ので、例えば「-食べる」と指定してみる。或いは主人公のいる移動都市の名前がロンドンであると検索結果から拾えるので「-ロンドン」としてみる。
  2. 目的とする情報の詳細を思い出し、別のキーワードを付け加える
    • 例えば「線路」とか。

1のパターンで検索してみると、「都市 移動 SF -ロンドン」で"なんか似たような設定のSFありませんでしたっけ?"という一文が見出せる。これを開いてみたところ、「逆転世界」というタイトルが登場した。
2のパターンでは"「地球市」は線路の上を走行する移動都市であり"という一文から逆転世界へと辿り着く。
問題が言語能力に依存するものであるから、こればかりは場数を踏むことで慣れるしかない。

諦めずに何度も検索する

http://www.chimimo.com/2007/08/post_61.htmlにて、ここで書き忘れたことについて指摘が。要約すればそもそも「検索クエリーを一回投げてあきらめる」のがだめなんじゃないんでしょうかということ。確かに。