根拠のない話

某所でマイナスイオン絡みの談義をしていたときにもそうだったのだが、こちらにとっては自明と思えるだけの根拠を示して、またその理由を噛み砕いて説明しているにも関わらず、「根拠も示さず否定する」と言い続ける人がいる。決して日本語を理解していないわけでもない、理論的な判断ができないわけでもなさそうなのに、特定の問題については頑なに拒む。
せめて「感情面で納得できない」などの結論に落ち着くのであれば、それはそれで善しとするのだが、そうではなくて……なんというか、SF的に表現すると「脳の一部にロックがかけられていて、特定の話題に触れることができない」ような感じ。しかも本人にその自覚がないから、相手の理論はすべてスルー、「自分がこれだけ説明しているのにどうして理解できないんだ」ということになる。
あるいは、「普段は温厚だが特定の場面では人格が自動的に切り替わる」?まあMacの話とか、あまり他人事でもないのだけれど。


最近のSFではサイバーパンクにはじまるをはじめとする「記憶改竄によるアイデンティティ問題」から更なる進化を遂げ、「ナノマシンによる強制的な意識の書き替え」が流行りだしているようだ。カルト的な宗教家たちが教義を広めるためのナノマシンを散布し、感染した人は自動的にカルト化する。物理的な、イデオロギーの(あるいはミームの)生存競争。
イデオロギーとは一種の病である。感染した者はその教義の遵守と伝播こそを至高とし、他者を恭順させようと試みる。イデオロギーの維持に都合の悪い存在は無意識下で却下されるが、どうしても無視しきれぬほどの存在である場合は迅速に殲滅することで平穏を維持する。
それは傍から見れば異様な状態だが、本人にとってはこの上ない幸福である。たとえ殉教したとしても。