赤色矮星と町工場

録画してもらった「地球ドラマチックE.T.の住む星:惑星オーレリア」を視る。太陽の凡そ1/10の熱量しか持たない赤色矮星の第一惑星に発生する生物の話である。
熱量が低いので、主星に近い惑星でなければ生命の生存条件を満たせないと予想される。単純に言えば0.1天文単位(太陽-地球間の1/10)ということになろうか。それほどの距離では主星の引力により自転が止まってしまうので、惑星オーレリアは永遠に続く昼と夜を持つ星となる。
夜半球は凍り付いており生存には適さない。しかしまた昼半球も、熱が強すぎて快適とは言えないし、巨大な熱帯性低気圧(つまり颱風)が絶え間なく暴風雨を撒き続ける。生命が集中するのは、主にその境界線、日暮れの領域である。
例によってハイクオリティなCGの数々。生物の動きだけでなく、水を掻いたり泥を掘ったりする演出も極めて自然に描写されている。
各界の学者が顔を突き合わせて生態系の検証をするシーンでは、部屋の中央に浮かび上がる惑星の映像や、ペンタブレットで直接画面を操作し「必要なパラメータを設定しシミュレートさせると環境ができ上がる」というような演出が為されており、これを見ていると既に立体映像投影装置や量子コンピューティングが実用化されているかのような錯覚を覚える。でも使われているのはどう見てもApple


深夜にはBS2で「クローズアップ現代」の再放送。先日小惑星イトカワへの着陸とサンプルの採取に成功した(と見られる)惑星探査機はやぶさ、及びそれに使われている町工場の技術力を取り上げる。
NHKが「日本のすごい技術力で一発成功しました」的演出をしたがる風であるのに対し、ゲストの松浦氏が「5回、いや6回か、やり直してるんですよ」などと大変さを強調。
「日本の宇宙開発凄いじゃん」はそれはそれで必要な世間評価なのだけれど、「制約が多い中で本当に苦労してるんですから」というのも現場にとっては切実な声だろう。その辺説明がなかったが、例えばターゲットマーカーの製作に町工場の神業的技術を用いざるを得ないのは軽量化が絶対要求だからで、それほどまでに軽量化せねばならないのは打ち上げ用のM-Vペイロードにそれほど余裕がないからで、打ち上げにペイロードの大きなH-II系ではなくM-Vを使用しているのは予算が限られているからで……といった、「日本の宇宙開発は成果を出しているのに予算が得られないんですよ」というのが、多分今一番必要な理解なのだと思う。
例えば今現在はやぶさが直面している問題-----3軸のリアクションホイール中2軸が故障し、正副2系統ある姿勢制御スラスターが両方とも故障している→姿勢制御が行えないと折角サンプル採取したのに地球に帰還できない可能性も-----だって、予算があってペイロードに余裕を持たせることができれば、リアクションホイール自体の冗長化とかスラスターの3重化といった多重の「安全策」を講じることもできただろう。


ところで、イオンエンジンの運用が初めて正確には試験運用は1980年代に、姿勢制御用としては1990年代に行われている。また探査機での運用もNASAがDeep Spaceで行っている。従ってこの表現は「日本での長距離運用としては」初めて、というのが正しいようだのことというのは知らなかった。どうも近未来系SFばかり読んでいると、こういう先端の技術が普通に登場してしまうので、もう実用化されているものとばかり……


リアクションホイールキーワード登録しようと思ったが、「コマを回転させるような機器」程度の説明しか得られなかった。フライホイールの反作用で回転力を得る機構なのか、ジャイロ効果で軸周り安定を図る機構なのか、それとも歳差運動を利用して傾きを変える機構なのか。