再読

野尻抱介『太陽の纂奪者』と森岡浩之『夢の樹が継げたなら』を再読。

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

2002年にハヤカワJシリーズで刊行されたものの文庫化。以前のそれが見つからないので買い直した。初出はSFマガジンに掲載された3篇の中篇で、1冊にまとめる形でリライトされている。
クレギオン』シリーズからハードSFとして充分な力量を持ってはいたが、これまでの作品が皆ライトノベルの枠の中にあり漫画的な人物主体の描写を中心に展開していたのに対し、本作は視点こそ一人の人物に据えられているものの装飾的描写を殆ど省いたドライな文章である。ストーリーは概ねファーストコンタクトものの王道を行く展開だが、ひと味違った異知性の設定が光る。
何度読んでも面白い、ハードSFの傑作。

夢の樹が接げたなら (ハヤカワ文庫JA)

夢の樹が接げたなら (ハヤカワ文庫JA)

SFマガジンでのデビュー作を表題作とする短編集。総体としてはやや纏まりに欠ける感があるものの、表題作『夢の樹が継げたなら』の新たな世界を開く言語概念や『夜明けのテロリスト』に見るチャネル→宇宙への流れは神林長平『言壷』にも通じるものを感じさせる。この方向で1冊書ければかなり面白くなるのではないかと思うが……