小説投稿サイトと作品傾向

anond.hatelabo.jp



ということがあって、もっともな疑問だと思うので、ざっくり調べてみた。

調査方法

matome.naver.jp
を参考に、小説投稿サイトからランキングを見て、1~5位に入っている「異世界転生もの」の作品数を見てスコア化する(1位:5点、2位:4点、以下点数下がる)。複数のランキング方式がある場合、もっとも長期のランキングに準拠。ランキングのないサイト、およびデイリーランキングしかないサイトは(調査内容と最新ランキングがすぐ食い違うので)除外。
なお、大元となったはてな匿名ダイアリーの記述に準拠し便宜的に「異世界転生」としているが、「召喚」や「ゲーム内に閉じ込められた」などの転生を伴わない異世界転移系も含めている。ただし舞台が異世界でない異能モノなどは対象外とする。
流石に104ものサイトをすべて調べ尽くすのは辛いので、20までで切り上げることにした。

小説家になろう! 15/15点

本丸。たしかにランキングが異世界系で埋め尽くされている感。二次創作が禁じられている(「なろう」内の作品で作者許諾のあるもののみ可)ため「オリジナル作品なのにどれも異世界ファンタジー転生」。

  • 1位 無職転生 - 異世界行ったら本気だす - (異世界転生モノ:5点)
  • 2位 謙虚、堅実をモットーに生きております! (異世界転生モノ:4点)
  • 3位 八男って、それはないでしょう! (異世界転生モノ:3点)
  • 4位 異世界迷宮で奴隷ハーレムを (異世界転生モノ:2点)
  • 5位 ありふれた職業で世界最強 (異世界転生モノ:1点)

ハーメルン - SS・小説投稿サイト- 10/15点

こちらは二次創作系のため、元となった作品が異世界モノかどうかに左右されるが、それでもランキング内容は異世界モノかそれに近い作品で占められている。

  • 片翼の天使(笑)で剣をふるうのは間違っている (異世界転生モノ:5点)
  • モモンガ様ひとり旅 (異世界転生モノ:4点)
  • はぐれ一誠の非日常 (異世界のある転生モノだが基本現代世界……?:判断保留)
  • 俺だけ能力を持ってない (異世界なのか現世なのか不明だが転生ではない)
  • 思ったより強かったオンライン (異世界転生モノ:1点)

ベストセラー - 小説 - エブリスタ 0/15点

こちらは対象読者層がまったく異なるのか、女性向け恋愛作品、かつ18禁が上位を占める。

  • Liar (恋愛モノ、18禁)
  • ミツのあじ second ver (恋愛モノ)
  • コーヒーに角砂糖 (恋愛モノ)
  • 染色体 (恋愛モノ、18禁)
  • Perfect Crime (恋愛モノ、18禁)

暁 〜小説投稿サイト〜: 日間ランキング 6/15点

二次創作系。上位2作品が異世界転生ではなく銀英伝だが、これは「サイト内トップ作品が全体に影響を与えやすい」と言えるかも知れない。「それが読みたい読者が集まる→集まった人に向けて書く」の傍証。

  • 転がる石の意志 (銀英伝二次創作)
  • 銀河英雄伝説~新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝) (銀英伝二次創作)
  • MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士 (異世界転生モノ:3点)
  • ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか (異世界転生モノ:2点)
  • 転生とらぶる (異世界転生モノ:1点)

日間ランキング 1位-30位 魔法のiらんどNOVEL - 魔法のiらんど 0/15点

「女の子のための小説総合サイト」とあるように若い女性向けに特化しているらしく、ランキングは完全に恋愛モノで占められている。

  • きっと、ずっと一緒。 (恋愛モノ)
  • Stray cat (恋愛モノ)
  • そして言う、『家族をやめよう』と。 (恋愛モノ)
  • 危険人物 (恋愛モノ)
  • 若頭と私 (恋愛モノ)

ランキング | 小説サイト ベリーズカフェ 0/15点

「女性に人気の小説を読むなら ベリーズカフェ」こちらも女性向け。

  • イジワルな男 (恋愛モノ)
  • Again (恋愛モノ)
  • 陽だまりの中で君と恋をする (恋愛モノ)
  • O♡L (恋愛モノ)
  • 絶望エモーション (恋愛モノ)

星の砂 0/15点

ケータイ小説&コミック」とあるように携帯特化型。月間ランキングとレビュー数ランキングのどちらにするか悩んだが、変動の少なそうなレビュー数ランキングを採用した。そもそもあまり活発でない感はあるが、その代わりランキングは多様性のある内容に。

  • ひまわりの笑顔 (恋愛モノ)
  • 犬を侮れば「犬」 (ジャンル不明)
  • あたしのカレは不良です!? (恋愛モノ)
  • High School Again (ジャンル不明)
  • 緑花火 (家族モノ)

すぴばる小説部 - 小説投稿SNSサイトはすぴばる 3/15点

ランキングが読み切りと連載に分かれ、デイリーとウィークリーしかないようなので、連載のウィークリーランキングを採用した。

  • 滅びの国の王子と魔獣 (非転生系ファンタジー)
  • 魔法少女リリカルなのは~夜天のなのは~ (異世界は絡むが転生ではない)
  • 神の子ハンター世界に行く (異世界転生モノ:3点)
  • 拝啓、苦しみます (恋愛モノ)
  • 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~ 戦争回避成功ルート (ファンタジー)

総合ランキング - FC2小説 2/15点

作品点数も多く、かつジャンルもバラけている。

  • 大嫌いな、好きな人 (恋愛モノ)
  • 彼・・・ (恋愛モノ)
  • リヤカーに乗った白い花。 (家族モノ)
  • 光の姫と魔法の一カ月 (異世界転生モノ:2点)
  • 『楽園』。 (ジャンル不明)

投票ノベル一覧 | ネット小説SNS - dNoVeLs 0/15点

タグクラウドを見ると、上位が恋愛(839) 短編(575) ファンタジー(561)となっている。年間ランキングトップのジャンルが「短文(詩・俳句・短歌) 」、詩と短編集がランキングを占めているというのも珍しい。

  • Deep Blue (詩)
  • 封筒 (家族モノ)
  • 心の かけら (詩)
  • 短編集 「シナモン・シュガー」 (ジャンル不明)
  • 競馬道一直線 (ジャンル不明)

オンライン小説ランキング(週間) - オンライン小説投稿SNS「ノベリスト.jp」 0/15点

長期ランキングは作者準拠のためウィークリーを採用した。BLが上位というのはそう不思議でもないが、それと並んで医者のエッセイがランクインしているので読者層がよくわからない。

  • 女性は寄せられる好意に鈍感である (現代BL)
  • 君ト描ク青空ナ未来 (現代BL)
  • 特別強攻機動隊 美少女拷問惨殺団 (猟奇)
  • 新 ドクター・ヤブ田の「医者だって笑いたい」 (エッセイ)
  • らくらく、医学講座 (エッセイ)

ケータイ小説サイト 野いちご 0/15点

若い女性向け携帯小説サイト。タイトルからBLかと思った作品がいずれも「男子校に女の子が」妄想系だった。

  • そんなに、可愛い顔すんな。~男子校は、ドキドキですっ!!~ (恋愛モノ)
  • 甘々100% (恋愛モノ)
  • ♡ケダモノだらけの男子校LIFE♡ (恋愛モノ)
  • 酷男子の溺愛 (恋愛モノ)
  • 保坂クンは私のことが大嫌いなんです。 (恋愛モノ)

ランキング - ぱろしょ 3/15点

個人運営。小規模ゆえか、ジャンルはわりあいバラけている。

  • 連載小説 - SF ハンドロイドGG ⑬ (SF)
  • 羨望の高市 ( 仮 ) - 第一話 「嫉妬」 (恋愛モノ)
  • 途越ゑシリーズ - 途越ゑノ御噺 其の壱 (異世界転生モノ:3点)
  • いい加減な奴ら (実話系)
  • 第二次世界対戦 戦後 - 原爆ドーム 平和の記念碑 (戦争モノ)

結論のようなもの

リスト20までのうち、ウィークリー以上の長期ランキングがあるものは12だった。そのうちランキングの比重が異世界転生モノに寄っているのは「小説家になろう」と「ハーメルン」の2つのみ。意外に世界は異世界転生モノ全盛というわけではないようだ。まあこれは当然といえば当然の話で、小説のすべてがラノベではないように、他ジャンルが隆盛なサイトでは別の尺度があるということだ。
サイト別にランキングを見ると、最人気作品と同じジャンルがその下に続く傾向が伺える。「サイトの傾向がランキングを決める」のか、「ランキングがサイトの傾向を決める」のかは定かでない──というか相互に作用しているのだろう。従って新規サーヴィス立ち上げ初期にどのような人気作が投稿されるかで、その後の傾向がある程度固まるのではなかろうか。
また、今回は単に誰かの作ったリストの頭から20を見るという乱暴な方法を取ったが、たとえばユーザ数や投稿数で見た場合、あるいは書籍化作品だけをリストアップした場合などではまた傾向が違ってくる可能性はある。

伊藤計劃の遺した屍者の帝国

劇場版アニメの評価が、賛否両論著しい。「原作たる円城塔版から改変された部分」もさることながら、「伊藤計劃自身の書いた冒頭を削ぎ落とした」として批判が少なくないようだ。
元より伊藤の遺した冒頭部分とプロットとも言えぬメモ程度から書き起こされたものとはいえ、「冒頭と違う」から(プロジェクト伊藤計劃としては)駄目だ、というのであればそれはむしろ屍者の帝国に対する伊藤の影響力を冒頭の文章それ自体にしか認めぬ謂いと受け取れる。
そんなにちっぽけなものであるものか。

以下に、伊藤計劃の手になる冒頭部分を手がかりに、円城塔の書籍版および劇場アニメ版が「どこまで伊藤計劃であるか」を検証する。
当然のことながらネタバレを含むので、そのつもりで。

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日出処の屍者

屍者労働社会に於ける目下の問題は、社会の高齢化である。
労働力として重宝されるのは若く壮健な肉体だが、自然死は当然ながら老齢のものが多く、それらは肉体機能が低下した状態で提供される。かといって、若い肉体であっても事故死では肉体の損壊著しくまともに利用できない。
皮肉にも、高齢化すなわち平均余命の上昇をもたらしたのもまた屍者であった。肉体を酷使する長時間単純労働が屍者に置き換わったことにより下級労働者の余命が伸び、また社会全体の経済発展による貧困の減少も生活を改善したのだ。
屍者そのものの利用だけでなく、関連技術の発展もまた社会を変えた。屍者のメンテナンス需要は解剖学・外科医療の発達に繋がり、また肉体の腐敗防止技術は食品の保存だけでなく防疫にも役立った。
つまるところ、死亡率の高さが生み出した潤沢な屍者供給が社会を発展させ、社会の発展が屍者需要を引き上げると共に死亡率を低下させたことになる。

短期間のうちに生じた急激なバランスの変化は様々な歪みを引き起こす。需要の高騰はときにモラルを踏み越えさせるに値するだけの利益をもたらし、「若く損傷のない死体」を得るための毒殺事件や誘拐など陰惨な事件が各国の新聞を賑わせた。警察機構は人手不足に悲鳴を上げたが、こればかりは屍者に任せるわけにも行かない。そこでスコットランド・ヤードは捜査の一部を民間に委託する措置を講じ、これを機に犯罪捜査を行なう私立探偵という業が成立したが、犯罪の解決はともかくとして根本的な原因である屍者向けの死体不足は如何ともし難く、各国は屍者技術の普及が遅れている植民地、たとえばかつて奴隷を買い付けていたアフリカなどから死体を輸入するようになる。奴隷制の横行していた当時そうであったように、現地では輸出可能な死体を調達するための「狩り」なども行なわれたという。

日本では更に事情が異なる。開国後の日本は欧米諸国の生産力に追い付くべく富国強兵を国是としたが、そのためには出生率と共に平均余命も伸ばす必要があり、一方では屍者を増産する必要もあるという矛盾を、初期のうちに抱え込んでしまった。
その上、国内の屍者技術水準は低い。供与されるのは形式の古い輸出型、お雇い外国人技術者も決して腕利きではなく、国内の技術者養成も覚束ない。そんな状況下で必要な屍者素体は、とにもかくにも頑健で長持ちのする死体ということになる。
そんな都合の良い死体が、偶々国内にあったのだ。

京都は大江山の麓。
平安の頃、この地に君臨した三本角の巨鬼、朱点童子。それを討ち果たした一族がいる。
言い伝えによれば、彼らは朱点童子にかけられた呪いにより、幼少のうちに成人へと成長し、僅か数年のうちに死を迎えるのだという。鬼をも討つ力は鬼神の血を引いているためだともいわれるが、事実その肉体は鬼をも討つに相応しい膂力を有し、また死の床にあってなお肉体は若々しく、少なくとも外見的には衰えた様子を見せない。
「我ら一族が身をば、生くる時も死して後も、御国の為に捧げ奉らむ」
もはや討ち果たすべき鬼を持たぬ鬼狩の一族は、そうして生前は帝の守護職を得、死後その遺体を国に納めたという。

余人の十分の一という短期間で供給される頑健な死体は不慣れな技術者の拙い保守にも耐えて経験の蓄積に貢献し、あらゆる点で日本の屍者技術の基礎を支えた。無論、十倍を越える生産量とはいえど供給源の人数規模からして国内のあらゆる需要を支うるような数ではないが、それでも退役させた諸外国供与の旧式屍者を解析に回す余裕を得るには充分なものであった。
また、「大江山の屍者」は卓越した肉体能力がとりわけ軍事用途に最適と見做され、「特屍」と呼んで重宝された。当初は宮城警備などに優先配備されたが、これは「死してなお帝をお護りする」と国民から好意を以て受け入れられ、屍者の印象改善にも大きな効果があったという。
国産屍者が充分に供給され始めると、特屍はその精強さを買われ特別部隊を編成、後に日清戦争で陸戦を制し、日露戦争に於いてもロシアの最新鋭を相手に互角以上の性能を見せた。
この屍兵隊の強さが後年に仇となり、陸軍は対屍戦術/兵器の開発を怠ったままあの泥沼の総力戦へと突入してゆくのだが、それはまた別の話。


…………………………
屍者の帝国×俺の屍を越えてゆけ」というネタで一本書いてみた。

劇場版を見る前におさらいする屍者の帝国

「原作未読で今から読める気がしないけど映画を見に行こうと思ってるので勘所だけ押さえた解説が欲しい」人のための、あるいは「原作未読で映画観たんだけどよくわからないところが色々あるので簡単な説明が欲しい」人のための、ちょっとした記事を書いてみた。
解説するのは映画に登場しながら説明されていないモチーフだけで、ストーリーについては基本的に触れないが、それでもネタバレは含まれざるを得ないのでその辺注意。
なお、ここでは主要なモチーフについて軽く解説を加えたのみに留まっているが、「原作読んだけどよくわからない」という人は用語集をどうぞ。

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屍者の帝国 劇場版を原作と比較して

劇場版「屍者の帝国」を観てきた。
多数の史実虚構を織り交ぜ、数ヶ国を横断して繰り広げられる複雑で壮大な物語を2時間に落とし込むという難題によく応えた作品だが、そのために削り落とされてしまった部分が多いのは、致し方ないこととはいえ理解を難しくしている感は否めない。
そもそも原作は無数の外部参照で成り立つ衒学的小説であり、つまりは盛り込まれた情報量に対し圧倒的に説明が少ないのだが、それでも物語上重要な情報にはそれなりの説明が行なわれる。しかし映像では「目に見えるもの」は把握しやすいが背景情報などの伝達は難しく、この時点で決定的に齟齬がある。

(ここからはネタバレになるので隠す。)

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ダイスと判定とTRPG

TRPGではダイスを振る場面が多い。キャラ作成時の能力値決定や、表の中からランダムに項目を選択する時、行動の成否判定や武器のダメージなど、あらゆるシーンでダイスを使う。
ルールを把握していれば「何のために」振るのかは自明なのだが、まだルールをよく知らず、ゲームマスターの指示するままに振っているプレイヤーなどは「それぞれの場面で振ったダイスの意味」が区別できない。同じようにダイスを振っているのに、その時々で意味が違ってくることに混乱する。
この混乱は、特に何らかのアイテムや技能などによってダイス目を操作できるようなルールがある場合に顕著になる。「判定をやり直せる」能力でダメージ決定ダイスを振り直そうとしたり、表の参照にダイスを振り足そうとしたり。
もちろん、こうした混乱はゲームマスターが「何のためのダイスロールか」を明示するなどの方法で回避できる問題ではあるのだが、シナリオ運用の都合上、GMはしばしばその辺りを隠して振らせたりするものだし、そもそも運用で解決するというのはデザインとしては敗北だ。

デザイン上の観点からは、理想的に言えばダイスはロールの種類ごとに異なるものを用いる方が混乱しない。たとえば用途に応じて面数を変えたり、あるいは同じD6でも複数の色をセットして「ここでは黒を振ってください」とか指示できれば認識はかなりシンプルになる。専用の目を持ったダイスが使えるならばもっといい。
でもそれはコストや入手性などの問題から現実的ではない、とするならばルールの側で対処するべきだろう。

経験的に言えば、もっとも混同しがちなのは「戦闘時の攻撃解決とダメージ決定」だろうと思われる。
能力値決定などのロールはゲーム開始前にしか行なわれないためにあまり混同が生じないし、表の参照はその表さえ示せば意図が明確になる。しかし攻撃判定ロールとダメージ算出ロールは「攻撃の結果を示す」点に於いて非常に似通っており、混同しやすい。
また、攻撃という1回の行為に対して複数回のロールが発生することもルール全体からは異例であり、これも混同を発生させる要因になっていると考えられる。

もっとも単純な解決策は「ダメージ決定にダイスを振らない」ことだ。たとえば武器のダメージ値が固定ならば、攻撃の成否が解決した時点で再度ダイスを振ることなくダメージが決定できる。ただし戦闘の振れ幅が小さくなるので、何か一工夫必要になるが。

あるいはダメージ用に別の乱数装置を導入する手もある。6面ダイス以外の導入や色違いのダイスなどをユーザに用意してもらうのは少々難しいが、入手しやすい乱数装置としてトランプなどは利用できるだろう。数字以外に2色4種の属性を持つこと、また(都度切り直すのでなければ)一度引いたカードはもう出て来ないことなどを利用すると、ダイスとはちょっと違った味付けのシステムになりそうだ(たとえばスペード=頭、ハート=胴、クラブ=手、ダイヤ=足などに割り当てて命中箇所判定を兼ねるとか)。まあ、あまりやりすぎるとルールのわかりやすさを損なうことになるが。

実際のゲームシステム事例

ソード・ワールドRPG

行為判定は2D6上方ロール、効果判定は2D6で「レーティング表」を参照する形とし、両者を明示的に切り分けた点で工夫が見られる。ただしどちらも2D6であるために混同が残り、「都度チャートを参照する」点では少々慣れを要する。
また、攻撃の命中判定能力を「攻撃力」、ダメージ決定能力を「打撃力」とするなど異なる機能に類似する用語を割り当てているために混同を生じ易いなど、判定システムとは別の点にデザイン上の問題を抱える。

ガンドッグ

D10を2個用いて、パーセンテージロールによる成否判定と2D10による成功度算出を1回のロールで同時に行なう「デュアルロールシステム」を採用し、切り分けと振れ幅の維持を両立させている。1行為に対し1ロールで対応しているという点でも好ましいが、代わりに1回のロールを異なる方法で2回利用することになる。

深淵

攻撃の成否判定のみをダイスで処理し、ダメージについては別途「運命カード」を適用する形で区別している。このカードは戦闘専用ではなく、ゲームを通じて様々なシーンで活用するものだが、「用途別の乱数派生装置」に相当するものであり、簡単に取り入れられる手法ではない。

シノビガミ

戦闘ダメージを固定値とし、代わりに1ダメージの重みを極端に増加させることで、固定ダメージによる戦闘が問題にならないダイナミックなルールを採用している。
同システムではダイスロールが「表の参照」か「行為判定」にしか用いられないため、この種の混乱はまず発生しない。

彷徨える積層廃墟群、第N無人居住区

神保町駅すぐそばのギャラリーで開催されている、N区の展示を見てきた。blog.livedoor.jp
もう10年以上、段ボールで街を作り続けている燈さんの個展。無人なのに居住区。増築を続ける廃墟。
縮尺はまちまち、展示の度に組み合わせ方も違うし分譲や新築もあるので常に姿を変え続けている。複雑怪奇な構成のため覗き込む角度で表情が変わり、何時間いても見飽きない。あちこちに貼られた看板を探すのも楽しい。

薄暗がりにあってこそ最大限の雰囲気を出すオブジェなので、展示会場は大体薄暗く、写真を撮ろうと思うと手ブレに苦労する。会場には補助光源(と呼ばれる小さなLEDライトスタンド)が用意されているが、三脚があった方が安心だろう。フラッシュを焚いてしまうと、せっかくの雰囲気が水の泡だ。
街は予想以上に広く、また細かい。レンズは広角とマクロ、両方が必要になると思う。
可能なら棒の先に小さなカメラを付けて、街の中に入り込んでみるのもいい。

手持ちのカメラでざっと撮影してきたが、暗いのでオートフォーカスが碌に機能しないし手持ちなのでブレがひどい。余裕があれば三脚を準備して再挑戦したいところ。

ところで燈さんはシンガー/ソングライターの人でもあるので、N区の楽曲もある。www.muzie.ne.jp
観賞のお共にどうぞ。