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多人数参加型ゲームキャンペーンの演出について

先日、私がこの2年間ずっとプレイしているネットワーク対戦型ゲーム「ボーダーブレイク」にて全員参加型のキャンペーンが開催された。撃破数とプレイヤーのランクに応じポイントを得るもので、全員の総計が一定量を越える度に何か特典が開放される形式だ。
結論から言えば、このキャンペーンは「失敗した」。全部で15段あった特典のうち14段までが開放されたものの、15段目を半分ほどまでしか達成できず、それがキャンペーンに於ける最大の目玉であったために不完全燃焼で終わることになった。
何故失敗したか、あるいはどうすれば良かったと考えられるか、について考察する。

盛り上がりの不足について

失敗の本質的な原因は「盛り上がりに欠けた」ことだろうと思われる。15段目で開放される筈だった新機種はその大きな原動力ではあったが、それはあくまで開放されればの話である。実際には2/3ほどを経過した時点で「このペースだと間に合わない」ことは明白であり、それに対して運営からの梃入れが一切なかったことで早くから開放が絶望視されていた。
また新機種ほどの魅力はないにせよ新武装の開放も盛り込まれていたが、少なくともうち半分は期待外れの装備であり、この点でも大きく興を削いだ。
つまり問題は2点、「報酬の魅力が少ない」ことと、「演出が足りない」ことである。


報酬の魅力については開発サイドの事情的に厳しい面もあろうかと思う。実際のところ新パーツ以上の報酬はそう望めないので、増やす方向ではちょっと対応が難しい。敢えて言うならばアバターパーツの半数以上がネタパーツであり実用性に乏しい点の改善、ぐらいのものだろう。
開放される報酬の質/量ともに改善困難だとすれば、他に何をすれば良いだろうか。
実は今回のキャンペーンではキャンペーン専用のポイントが用意されたが、これが一部報酬を受け取るための条件(nポイント以上獲得で報酬ゲット)とはなっているものの、他に何の使い道もない状態であった。例えばこれが機体/武装購入のために必要な素材と引き換え可能であるなどの使い道があれば多少なりと違ったのではないか。
ただ、報酬は「プレイヤーの動機を高める」ための条件としては強いが、必ずしもキャンペーンの盛り上がりを牽引する要素ではない:何故なら、報酬が魅力的であるが故に予想を上回るペースでポイントが加算された場合、キャンペーンが早期終了しかねないからだ。


演出については、重要なポイントが2つある。ひとつは「目標を達成できる見込みがあること」、もう一つは「目標を達成できるかどうか判らないこと」である。
つまり、確実に目標を達成できてもいけないし、できなくてもいけない、「できるかできないかギリギリ」である状態こそが最もキャンペーンを盛り上げる。今回の事例では「確実に間に合わない」ことが明らかになってしまった時点で失敗だったと言えるし、逆に目標を低く設定しすぎて「あっさり達成できる」のでもやはり盛り上がらずに終わってしまうだろう。
プレイヤー間でも言われていたことだが、このキャンペーンに於いては「個人が得たポイント」は把握可能であり、そこから「撃破ごとに得られるポイント」も簡単に算出できるが、「全体でのポイント総和」を知る術はないので、最初から適当にそれらしい数値を入れて「ギリギリ感」を演出することも可能だった筈である(そうすることが最善かどうかはさておき)。

達成ラインの読み違い

恐らくキャンペーンの設計にあたっては事前に統計情報を用意し、到達ラインを計算してあっただろうと思われる。目標数値としては丁度2億7千万dp、これが計算上どの程度のラインだったのかは読めないが、何にせよ実際に達成されたラインは2億5千8百万、1200万ほど足りない計算である。1日あたりのdp増加量がほぼ1200万だったので「あと1日あれば……」という牛マンの叫びは納得の行くものであったが、何にせよ丁度1日分だけ目標に届かぬ結果となった。
原因はいくつか考えられる:例えば家庭用機にリリースされたガンダムEXVSの存在、あるいは終了間際に正式スタートとなったコナミのスティールクロニクル。いずれもジャンルの近い競合作品であり、時間・資金ともに一定量が流れたであろうと思われる。それらが考慮されていなかったということはないだろうが、実際にどの程度影響力を持っているかを読むのは結構難しいことだろう。
あるいは報酬や上昇ペースの心理的影響を読み違えた面もあるかも知れない。
いずれにせよ、不確定要素の絡む状況でギリギリのラインを読むというのはかなり難しい話で、初のキャンペーン方式に於いて巧く行かないのは仕方のない話だろうと思う。それだけに「割り切って演出すれば良かったのに」とも思ってしまうが。

プレイヤーにできること

もう一つ、盛り上がりの面からすると「プレイヤーにできること」がほとんどない、というのも厳しかった。撃破数は出撃数に単純比例し、つまり金と時間を費す以外の方法で押し上げることができない。しかも後になればなるほどハードルは上がるわけで、早々に絶望するしかなくなってしまう。1機につき50dpほども得られるような上位クラスであれ1戦あたりの獲得dpは600かそこら、あと2万戦も足りないとしたら個人にできることが何かあるだろうか。


別のゲーム事例だが、いくつかのゲームで「目標達成ギリギリ」の盛り上がりを体験したことがあった。この時に重要だったのは「今まで稼いだリソース」を投入することで状況が改善され目標達成の見込みがあったこと、運営側が目標達成に繋がる行為についてリソース獲得量の増加を宣言したことの2点であった。
つまり個人が「全体のために個人の利を捨てる」ことで戦線を押し上げることが可能であり、また貢献によってリソースが回収され持久戦を展開でき、しかも直截的に勝利条件を操作するようなことがなかったこと。これにより「ギリギリの線を乗り切る」達成感、「プレイヤーが自力で達成した」満足感を得ることができ……いや、実はこの目標は結局スレスレのところで失敗したのだが、それでもなおプレイヤーの得た興奮は大きかったと言える。
成功失敗はさほど問題でなく、「プレイヤーが自ら大きく貢献したという満足感を得ること」こそが重要ということである。

必要なのは「演出」

そうすると大撃破キャンペーンでやるべきだったことは何だろうか。
一言で表せば「演出」に尽きる。目標と報酬の設定だけして投げっぱなし、ではなくプレイヤーに「やればできる/やらないとできない」の双方を印象付け、「自分たちの力で達成した」という満足感を与えるための演出。
公式なデータなどないので正確な数値はわからないが、1日あたりのdp増加が1200万、最多プレイヤー層がA1あるいはA2クラス、1撃破あたりのdpが25〜30ということはおよそ1日40万撃破程度、1人あたり8撃破とすれば5万人、1日に1000円5戦しているとすればプレイヤーは1万人/日程度と考えられる。つまりプレイヤー1人の関与は平均0.01%に過ぎないということだ。
しかも上位クラスと下位クラスでは1撃破の重みが違い、上位プレイヤーほどやりこみ量も多いから、必然的に関与幅もかなり差が付いてしまう。冷静に捉えるなら、下位ほど「参加する意義が薄い」ことになる。これは結構しんどい。
例えば小選挙区制のように票区を分けて(出撃都道府県などで)、それぞれに1位を決める……みたいな方法も考えたのだが、そもそもユーザがどうやって投票先を決めるかという問題があって解決策としてあまり好ましくない。これが「出撃アセン人気投票」みたいな、性質のまったく異なるキャンペーンなら話は別なのだが。


となると、個人の努力反映的な意味では「dpをEPのように個人報酬化する」、全体の演出としては「積み上がったdpに関わらず運営側の都合通りに総数発表する」のが最適手法、ということになってしまいそうだ。一応dpは解放されたアバターパーツなどを取得するのに必要ということになっているが、単に基準値以上に積み上げたかどうかを見るのみで余剰分の使途がない。素材などを買えるようにしてしまっても良かったのではないかと思う。

追記:B.U.Z.開放について

「このキャンペーン報酬だった筈の」B.U.Z.が、まさかの新年早々開放。はっきり言ってこれはいくらなんでも悪手だ。これはつまりキャンペーン自体の意義を無に帰す行為に他ならない。永久に封印しておけなんてことは言わないが、せめて数ヶ月ぐらいは様子を見るべきだった。
少なくとも、これで確実に同種のキャンペーンは実施不可能になったと言える。まあ最初からキャンペーン廃止のつもりであれば、それはそれかと思わぬでもないが。