Mr.Children『深海』

深海

深海

過去に唯一所持したことのあるミスチルのアルバム*1。中古屋で安価だったので購入してきた。
初めてこれを聴いたとき、貸してくれた人が言うには「ファンじゃない人が気に入るけどファンには不評なアルバム」だということだ。発言の真偽については不明なれど、改めて聴くと妙に納得できる。
何故ならば、このアルバムがプログレだからだ。


Progressive Rock、70年代に一世を風靡し……損ねたジャンルである。全体に激しさを抑えたアンビエントな曲調に哲学的な歌詞、クラシックを思わせる長大な曲構成。ベースこそロックだが、もはやロックとは似て非なる音楽となったそれは、ノリが悪いという単純な理由から大衆受けしなかった*2


『深海』の1曲目は波音に始まり、シンセサイザーによるアンビエントな効果音にアコースティックなチェロのメロディが被さる(Dive)。
そのまま2曲目へと繋がり、ここでアコースティック・ギターが加わり、ついで通奏低音付きヴォーカル。ゆったりと静かな曲調から始まる哲学的歌詞。幻の古代魚の実在性と幻想を追う(シーラカンス)。
そしてアルバムの最後には、曲はシーラカンスを追って再び静かなる海の底へと戻ってゆく(深海)。
「深海」と「シーラカンス」、この2つのキーワードを軸とした完成度の高いコンセプチュアル・アルバムである。惜しむらくは3〜11曲があまりコンセプトと関係しない点だが、トータル・コンセプチュアル・アルバムというものにあまり受けの良くない国だから致し方なしか。

*1:手放したわけではないが行方不明になった

*2:まったく不遇だったわけではない。少なくともジャンルとして成立する程度には盛り上がりを見せたし、世界的に有名になったバンドも存在する。ただ、その後に続かなかっただけだ