一眼レフは写真機の雄で、それはレンズ交換による幅広い状況対応能力やイメージセンサの性能といった面もあるが、実のところ画的にはかなりの部分を「ボカシ能力」が担っている。
「プロの撮った写真」を色々見てみると、人物写真や植物、あるいは料理や小物など「少数の物体をはっきりと見せる」写真では背景がかなりボケているのが判る。これは周辺をボカすことで被写体だけを浮き立たせるテクニックで、意識的に使えれば写真のクオリティがかなり高まるだろう。
iPhoneでも3GS以降のカメラならばオートフォーカス付きで焦点位置がある程度動かせるので、撮影段階である程度コントロールすることはできる。例えばなるべく被写体に近寄り、また被写体の向こうに奥行を取れる構図で、ピント位置をタッチしてから撮影すれば、ピント位置以外の部分がそれなりにボケる。
しかし、ボケの強さというのはレンズの「被写界深度」とイメージセンサの大きさが強く影響する。iPhoneのカメラ性能では、強い綺麗なボケを得ることはちょっと難しい。
そこで、アプリによる後加工でボケをコントロールしてみよう。
TiltShift Generatorによる疑似被写界深度
iTunes App Store で見つかる iPhone、iPod touch、iPad 対応 TiltShift Generator - ミニチュア風トイカメラというのは、ボカシを利用して「ミニチュアっぽく見える写真」を作るアプリだ。ミニチュアを接写する場合、ごく一部にしかピントが合わなくなり、また実物よりもディティールが甘く、陰影や色味が強調されがちである。このアプリは写真にボカシを加え色見を調整することができ、被写界深度の演出に丁度良い。
まず、奥行きの長い写真を用意しよう。できれば「手前から奥に長いものが続く(列車など)」とか「平坦な面に多数の凹凸が散らばるのを斜めから見る(高所から見下ろした町など)」のような、ピントを合わせる面が1箇所にまとまっていて、かつボカす面と連続的になっている写真が望ましい。
写真を読み込み(あるいは撮影し)、BLURを調整する。「ピントを合わせる範囲」には円形、楕円形、直線の3種がある。長いものの一部にピントを合わせるなら円形や楕円形、面の一部に合わせるなら直線が良いだろう。ピンチでピント範囲を変更、スライダでボカシの強さを変えられる。COLORメニューでは彩度、明度、コントラストを変更できる。おもちゃっぽくしたければ彩度ちょっと高め、コントラストやや強めにして、その状態で不自然でなくなる程度に明度を調整するといい。
このアプリはあくまで「画像にボカシを加えることで被写界深度が浅くなったような画像を作る」ものに過ぎないので、写真によっては巧く調整できないことがある。
例えば通りの真ん中で遠方を中央に置いて、建物や道が画面中央に向かって遠避かるような写真を撮った場合、TiltShift Generatorでは最遠方のみにピントを合わせ手前に向かってボケるような写真を作ることしかできない*1。
また「中央に近い被写体があって、その背景が等距離程度」の場合も、これでボカすと「画像周辺部に近付くほどボケる」不自然な画像になってしまう。まあそれはそれで写真に本来与えたかった「被写体を浮き立たせる」効果は出ているのだけれど。
レトロカメラによる玉ボケ追加
iTunes App Store で見つかる iPhone、iPod touch、iPad 対応 レトロカメラ FREEは多機能な写真加工アプリで、古びたフィルム風加工やヴィンテージ風処理など「レトロな」感じに仕立てる機能が満載だが、「一眼レフ風に」加工するのに重要な機能を持っている:それが「玉ボケ」だ。
Google:玉ボケ
玉ボケというのは、光源がボケた時に光の円がいくつも散らばるようなボケ方で、印象的な光を演出するのに欠かせない効果だ。円形の光はカメラの絞りの形状で、基本的に携帯のカメラでは撮影時にこの効果を得ることができない。ならば、それっぽく加工してしまおう。
右から2番目のメニューが画像の調整系メニューで、その一番下がボカシ関係の効果を集約した部分だ。これもTiltShift Generatorよろしく周辺をボカせるが、ピント位置の調整はできないのでその部分の使い勝手はそれほど良くない。ボケ量は0にしてしまって、玉ボケのみ利用しよう。
デフォルトではOFFになっているので、スライドさせて玉ボケの種類を選ぶ。おすすめは左から4番目、周辺部が白く中央に向かって黒くなるタイプのボケ。
選ぶと早速、画像の明るい部分周辺に玉ボケが散らばる。「ハイライトしきい値」は、左にスライドさせればほとんど真っ白な部分にのみ玉ボケが、右にスライドさせると明度が半分程度でも玉ボケが乗る。
あくまでハイライトに光を散らす効果なので暗い写真では意味がないし、はっきりと光の入っている写真でなければ不自然になってしまう。夜景とか逆光の風景なんかでやるといい感じ。
また場合によっては玉ボケがメインの被写体にかぶってしまうこともあるので使いどころが難しい。可能ならば他の加工アプリなどで被写体だけ切り抜いて重ねるのもありかも知れない。
*1:一応、複数回の加工によってピント範囲を調整することは不可能ではないが、加工を重ねるほど画像が劣化するのでお薦めしない