大改装

引越し前に家の自力リフォームを行なったので、その記録を残す。


なにぶん古い物件なので、あちこちに経年劣化によるダメージがあるのは致し方ないが、できれば綺麗に塗り直して気持ちよく生活したい。
特に酷いのは和室で、片方は畳が擦り切れ、もう一方は壁紙が剥がれている。これは完全に剥がして塗り直すしかない。
購入前から覚悟はしていたので仲介の不動産業者とも相談したが、家全体のリフォームで300万、和室のみでも二部屋分の塗り替え+床のフローリング化で100〜120万程度。それは簡単に出せる金額ではない。
それならば、可能な限り自力でやってしまって、どうしても無理な部分だけお金を出そう、ということでDIYを決意した次第である。

一日目:引き渡し当日

本日の主な道具:スクレーパー、霧吹き、箒・塵取り


まずは和室の壁剥がしを行なう。この壁は元々あった壁塗装の上から新たに壁紙を貼ったものらしく、壁紙の接着剤劣化で剥がれて来た部分と下の塗装が劣化して剥離した部分が混在する。
上から塗装しても下の塗料が剥離するとまた崩落しかねないので、金属の篦でこれをガリガリ削る。壁に沿って篦を差し込むと結構ボロボロと剥がれて来るのだが、思ったよりもしっかり着いているようで削るのはかなりの手間。壁の面積を考えると、これを全部削るのは現実的でないので、予定を変更して壁紙の裏紙だけを可能な限り剥がすことにし、それも簡単に剥がれて来ない部分は目を瞑って上から塗り込めることにする。


本日の教訓:塗装の剥離は諦めが肝心。

二日目:初塗り

本日の主な道具:珪藻土、ゴム手袋、バケツ、計量カップ、ビニールシート、マスキングテープ、脚立


壁の剥がしを適当に切り上げ、塗料の準備。電車で通っているので、駅から歩いて行ける距離のホームセンターで塗装材料を購入。
漆喰も検討したが、強アルカリ性(ph12前後)で扱いが面倒であること、乾燥まで時間がかかることを鑑みて珪藻土に決定。
しかし6畳間の塗装に当日入手できたのは8畳分、壁面積はざっと12畳と見積もられているので全く足りない。
残念ながら在庫は他になく、注文しても入荷は一週間後との話なので、残りは実家の父に車を出してもらえることになっている次の日に持ち越す。


まずは塗装前にブルーシートとテープで床・柱・幅木を養生。Webでの情報に拠れば、かなり塗料が落ちるのでしっかり養生しておかないと後で大変らしい。
次に、珪藻土の細かな粉末をバケツに空け、2リットルの水で練る。小麦粉のような感触で吸水性が高く固まり易いためにかなりのダマができるのでこれをすり潰しつつしっかり練るのだが、紙粘土のような固さになるので作業には相当な握力を要する。
両手とも塗料で厚く覆われてしまい、これがぬるぬる滑るためにゴム手袋を脱ぐのは容易ではない。この段階では塗料の粘度が非常に高いので、そこへ指を突っ込んで手袋をホールドし、手を引き抜くのが簡便。


30分ほど寝かせた塗装材に400mlの水を追加して溶き、愈々塗装にかかる。
当初、壁を平滑に仕上げるつもりで100円ショップの窓ふきワイパーを用意していたのだが、塗料を完全に剥がさなかった関係で下地の凹凸が現れ易くなると判断、それを目立たせないようにするために鏝目をそのまま残す仕上げとすることに。
鏝は使わず、ゴム手袋で直接塗り付け、適当に厚みを均等化してゆく。どうしても潰し切れなかったダマが残るので、これは壁に塗りながらすり潰して行く。最初に1箇所でぐるぐると円を描くようにしてダマを解消し、それから塗り広げると巧く行き易い。
この日は主に頭の高さから下のみを塗って終了。


本日の教訓:材料の準備は事前にしっかりと。

三日目:予定変更

本日の主な道具:珪藻土、ゴム手袋、バケツ、計量カップ、ビニールシート、マスキングテープ、サンドペーパー、掃除機、脚立


この日は車で移動。まずは近所の大型DIY専門店に行く。この日は床の張り替えを検討する予定だったが、畳を全部外してフローリングに敷き替えるとなると防音工事の問題が出、また古い畳の上に直接敷くとなると凹凸が問題となる。結局、本格的にフローリングを敷くのは諦め、リフォームの余裕が生まれるまでの間はしばらくフローリングマットを敷いて誤魔化すことにする。
キッチンの床も、タイル風ビニールマットが一部破損しているためタイルへの張り替えを想定していたが、この店舗を以てしても単品では必要量の1/5程度しか用意できず、また相当な重量となるため、予定を変更し通販で購入したものを入居後に施行することとした。
冷蔵庫があると施工が困難になるため、現在利用中の冷蔵庫は放棄し、施工を待って新品を購入する。
床問題が一気に解決……というか先送りされたので、本日の作業は壁塗りのみとなった。それならば工数の問題で見送っていた居間の壁も塗り直してしまおうか、ということで急遽塗装材料を増量。店にあった同色の商品を買い占める。


まずは夫婦で前日塗り残した和室の壁を塗装。その間に父には窓の木枠に残るバリバリにひび割れた塗料を剥がして貰う。
和室が終わった時点で塗料の欠片などを掃除機で吸い取り、ブルーシートを居間に敷き直して養生した後に塗装開始。こちらは元々凹凸の深い壁紙が貼ってあり、これが見えなくなるよう厚めに塗らなければならない。気をつけないと、どうしても下地が見えてしまう。
連日、子供らを母に預けているので夫婦二人での作業だったが、この日は父を加えて3人。いつもより作業速度は速い筈だが、それでも広い居間の1/3程度を塗り終えるのが精一杯だった。これは痛い誤算だが、塗りはじめてしまったものを今更撤回はできない。次の日が休日なのを良いことに、知り合いを動員してなんとか解決を試みる。
訊けばサークルの友人連中は丁度、定例会のを行なう予定だったらしい。しかし近年では仕事の都合で欠席者が多く、この日も参加メンバーは4人とかなり寂しい状態。いっそ中止するか、との話も出ていたそうなので渡りに船とばかりに「新居に遊びに来ませんか:居間なら壁塗り体験付き」と誘う。


本日の教訓:作業量は計画的に配分。

四日目:集団作業

本日の主な道具:珪藻土、ゴム手袋、バケツ、計量カップ、ビニールシート、マスキングテープ、窓拭きワイパー、掃除機、脚立


当初の予定より多い人数が確保できたので気が大きくなった。昼過ぎから開始した作業はハイペースで進み、最初の2時間ほどで昨日の作業分に近い量が処理される。ならばいっそキッチンの黴びて黒くなった壁紙も剥がして塗り直してしまおうと、人員を二つに分けて作業することに。
ところがその直後、居間分の塗装材不足が発覚。急遽買い出しを敢行する。
往復1時間近い行程となってしまったが、隣町のDIY店でセール中だった同一商品を多量に購入。材料不足は解消された。


帰ると作業部隊が材料不足を考慮して壁を篦で均して薄く塗布している最中だった。が、壁紙を剥がした後の裏紙を処理していなかったことが裏目に出た。壁紙剥離時点では、裏紙は強く接着されており剥落の危険はないものと判断したのだが、実際には裏面の石膏ボード継ぎ目にシーリングが施されていたためにその部分だけ接着が剥がれ易かったらしく、水分を吸って弱くなった接着剤に塗料の重みが加わって大きく浮いて来ていたのだ。
止む無く浮いた部分を中心に全体を剥離、折角進んだ作業が大きく後退する結果となった。
また、これにより紙繊維がささくれのようにめくれ、薄く塗布すると白い塗装材の表面に茶色い繊維質が見え隠れしてしまう。結果として塗装前に殆どの裏紙を擦り落とし、平滑にしてから塗装せざるを得ない。振り出しに戻るどころか作業量追加である。


思わぬところに時間を食われた結果、作業は押しに押した。
当初の予定では(駐車場が23時には閉まるので)21時までに作業を終え清掃、22時頃終了の予定だったが、実際には22時近くまで塗装作業を継続せざるを得なかったので、清掃がおざなりになった。また、終盤は仕上げのチェックまで行なえなかったので、塗装がかなり荒めになっている。
この状態のところに荷物を搬入してしまうわけにも行かないので、前日までに再び訪れ、作業の続きをせざるを得なくなった。


本日の教訓:壁紙剥離後には必ず霧吹きを。

五日目:仕上げ塗り

本日の主な道具:珪藻土、ゴム手袋、バケツ、脚立


まだ作業時間が足りないので会社帰りに直行して作業。
当所はマスキングテープを剥がす予定だったが、まだ乾き切っていない面が多いので後回しにする。
よく見ると居間の壁のあちこちに地が見えている。元々クリーム色の壁だったであろうものが恐らくは煙草などで黄色く変色しているもので、珪藻土の白の間から覗いているのが結構目立つ。
幸いにして前日余った塗装材がかなり残っており、水分も充分に保持していたのでそれを塗り付けて仕上げを行う。


台所に施した塗装には問題が生じていた。石膏ボードの継ぎ目の辺りが縦に黄色っぽく変色した風になっている。これが「アク」というものか。
一応アク止め処理不要の筈だったのだが、薄塗りなのが悪かったかそれなりに見えてしまっている。
まあ今更どうしようもない。黴の黒ずみは除去されているので、プラスマイナスゼロとしよう。


本日の教訓:水回りではアク止めした方が無難っぽい。

六日目:マスキングテープ剥がし

本日の主な道具:カッターナイフ


前日ちょっと剥離を試みたのだが、塗装材が厚く載っているところなどはそれを削らないと巧く行かない雰囲気だったので、本日はカッターナイフを用意して臨んだ。
今回は全体に壁をかなり厚塗りしているが、これがマスクした幅木の上にも載っているため斜め45度にカッターを入れて削り落としつつ剥がす。
テープに引きずられて端が少し浮いた部分や欠けて剥落した部分、塗装材が厚過ぎて完全乾燥していなかったのか粉状にぼろぼろ崩れる部分などが発生。こういうのはどうやって補修したら良いのだろうか。薄めた木工用ボンドでも染み込ませてみるか?それとも再度塗装材を塗布?いずれにせよ乾くまで気付かなかった瑕疵もあるためもう一度修正の必要はあるだろう。
居間と和室の剥離だけで3時間かかった。台所は明日に回す。


本日の教訓:厚塗りするなら幅木のマスキングは壁と平行な面だけに。垂直面は諦めて完全に覆う。