ペアルックの謎

ペアルックと言えば二人の人物が揃いの服装を着用する事であるが、これは全般にあまり良い印象を抱かれていないように思われる。いやそれは偏見か。


ためしにGoogle様にお伺いを立ててみたところ、単純にgoogle:ペアルックでは洋服などの販売サイトが散見された。多くはペアルックというジャンルを設けているようで、それはつまりそれだけニーズがあるのか……と思いきや、良く良く見れば殆どが子供服関係。これはつまり、小さい子供に兄弟姉妹同じ服を着せる、或いは親子揃いでのペアルックであるらしい。その他、数は多くないがペットとのペアルックまである。
しかし通常「ペアルック」という言葉から連想するのはむしろ、男女のカップルではないだろうか。そこでお伺い内容をgoogle:ペアルック -キッズ -ベビー -チャイルド -親子 -ペットに変更。これで子供服とペット関連を除外する。
すると、「ダサい」「恥ずかしい」「バカップル」などネガティヴな言葉が増える。全てがそういう意見というわけではないが、よく見ると肯定意見であっても男女ペアの例は少ない。むしろ仲の良い女性の友人同士でのペアルックなどの例が多いようだ。


男女以外のペアルックに付いてはここでの主題ではないのでファッション関連の方に論を譲るとして、男女のカップルによるペアルックへの悪印象がどこから発生するものか考えてみた。


一つの鍵は「バカップル」であろう。二人で同じ服装をするという事はその二人が共同体的親密状態を維持している事を周囲に対してもアピールすることになり、その「所構わなさ」が控え目を美徳とする日本人の感性にそぐわないと考えられる。
一般には恐らくこれが理由の全てと解されているのではないかと思うが、私はここにもう一つの理由を挙げたい。「ファッションセンス」である。
カップルと雖も別人である。兄弟姉妹や親子とも違って同じ遺伝子を共有する事もなければ生育環境を共有した事も(多分)ない。当然ながらファッションセンスも似合うパターンも異なるはずである。
然るにペアルックは、その別人二人に同じファッションを強要する事となる。当然ながらどちらか一方、若しくは双方が不似合いな服装を着用せねばならない。この違和感が、ペアルックに対し悪印象を持たせるもう一つの要因なのではないか。
それも、ただ「似合わない」のみならず、それを自身が選択し着用したという事実が一層悪印象を強調するのではないかと思うようになった。
例えば、複数の人が服装をそろえるという点では制服も同様である。制服はペアルックのように「熱愛」を表現するものではないとはいえ、共同体に所属することをアピールする為のものである点で同様のものと考える事ができる。
にも関わらず(着用者の意識はどうあれ)外部からの印象が悪くないのは、着用者のセンスで選ばれた服装ではないからではないか。逆に言えば、ペアルックの最大の汚点は「自分のセンス」だという気がするのだが。