乖離

営業の課長に言わせれば、私の仕事ぶりは目を覆わんばかりの酷さであって、それにクライアント各所がたいへん立腹しているという。
至らぬところが多いのは認めるところなのでそれに文句が出ること自体は不思議でもない、がそれなら何故私に直接文句が来ないのだろうか。直に打ち合わせることも多いわけで、そこで直接怒られるならば解るのだが、そうして会っているときにそのようなそぶりを見せられたことがない。どうも課長を通したか通さないかで私に伝わる情報に大幅な質の違いがあるようだ。
仕事そのものの内容についてもそうなのだが、私がクライアントと直接打ち合わせて理解した要望と、課長を通じて届けられる意見にはしばしば対立する内容が多く含まれる。これは思うに、課長による強いバイアスが掛かった状態なのではないか。
現場=現場の意思疎通と、現場=営業担当=現場での情報伝達に乖離があるというのは業務上好ましからぬ状態だ。

「成長率」の醜怪さ

経済指標として一般的に用いられる「成長率」の強欲さが恐しい。


一般に、企業とは成長を義務付けられた存在である。単に「社員を養う」だけなら一定の利益を確保し続ければ済む筈だが、実際には常に利益を拡大し続けることを求められる。誰に?株主にだ。
株というものは本来、出資により利益の分け前を貰う権利を得るためのものだから、一定の利さえ出ていれば株主にも一定の利が保証されて、それで収まる筈のものである。しかし実際には、株の主な価値というのは株価による資産価値であって、配分はさして問題にされない。
株価を上げるにはどうすれば良いか:単純に言えば需要が供給を上回れば良いわけだが、その為には皆が値上がり期待して入手したがる株にならなければならず、それには大きな利益を上げて高値の配分が期待できる業績が必要になる。つまり、株式会社は株主の要請に基づき利益を追求する必要があり*1、そのためには貪欲に成長し続けなければならないのだ。


ところで「成長率」は極めて貪欲な指標だ。
売上額から必要経費を差し引いて手元に残るものが「利益」。これを毎月/毎年積み上げるだけでも充分に「成長」と言えるのだが、それでは飽き足ない貪欲な指標として存在するのが「利益率」、これだと元手が増加した分も上乗せせなばならない。例えば元手1,000万に対し10%に当たる利益100万を得たなら、次の月は+100万ではなく1,000万+100万の10%である110万、これで利益率としては等価ということになる。
そして成長率は、更にその上を行く。利益率の伸び率を見るのだ。つまり、1000万に対し100万を得て10%、次の月が110万だと10%:10%で成長率としてはゼロだ。ここで121万の利益を出してはじめて10%:11%で成長率10%となる。「成長率の上昇」ともなれば更に……


実際のところ、人口は有限であるから、市場もまた有限であり、どこかで頭打ちになるのは必然。そうなれば後はシェアを喰い合うしかない。どこかが成長すればそれだけどこかが割を喰う。なのに成長率の上昇を要求すること自体が無茶な話で、それしか見ていない株式市場を見ているとどうも鬱々たる気分になってくる。
日経新聞なんて読んでいると、人間段々おかしくなるんじゃないかという気がしてきた。

*1:義務として株主に最大の利益を保証する必要があるらしい

君よコンビーフを知らざるか

mixi某所で「簡単で美味しいトーストの食べ方」が盛り上がっている。海苔の佃煮トーストやら納豆トーストやらツナトーストやら、色々な意見が出る中で何故かコンビーフが登場しない。


コンビーフはほぐした牛肉と脂身の混合物である。より低価格なものでは馬肉も混ぜられている。
そのままでも食べられないことはないが凝固した脂肪の風味はあまり宜しくない。けれど火を通すと見違える。
とりわけ美味しいのはバター+大蒜との取り合わせ。コンビーフを二缶ばかり、アルミフォイルに包んでバターをひとかけ、それに潰した大蒜一玉を混ぜてオーヴンで蒸し焼きにする*1。特に酒の肴に好適で、友人らとこれで一晩に10缶以上消費したことも。
あと食パンに乗せてトーストするとパンに脂が染み込んで旨い。手軽なのでお試しあれ。


実家では常備品だったのだが、世間では殆ど利用例を聞かないところを見るとあまり知られていない食材なのだろうか?スーパーならどこでも売っているのだが。

*1:昔は缶入りバターを使い終えたところにコンビーフを詰めて焼いたらしいが、最近は缶バターを買うこともあまりないのでアルミフォイルで代用している。耐熱容器でも可