Kindleの整備

iPadをAir2からPro9.7に買い替えた。初めてiPadを導入したminiの時は、即日購入できるモデルということで32GBを選択したところ容量が全然足りなかったので、Air2では最大の128GBを買ったにも関わらずKindle端末として本格利用を開始したら容量の大半を喰い潰してしまった(Kindleだけで72GBほどある)ので、Proかどうかの問題よりも容量を倍にしたかったというのが主な動機である。

機種変更の際には色々と設定やデータの移行が必要となるが、基本的にはアプリのデータなどはほぼ全てiTunes経由かクラウドで同期可能なので、あまり問題はない。
しかし毎度ながら深刻なのがKindleだ。無論こちらもサーバ側に購入情報がすべて保存されており、アカウント認証さえすれば同期できるのだが、なにぶん量が多い。とはいってもまだ1500冊まで行かないぐらいだが、これらを順次ダウンロードし直さねばならない。

kindleには自動での同期機能がないので、ダウンロードは手動である。コレクション単位では一括のダウンロードが可能なので「メンテ用」と名付けた、(期間限定無料本などの不要分を除いた)全タイトルコレクションを作ってあるのだが、これはこれで運用が難しい:なにしろ一括ダウンロード開始はできても一括停止機能はないのだ。
Kindleサーバからのダウンロードは決して速くはなく、光+Wi-Fi(5GHz)の高速回線であってもコミック1冊(およそ40MB程度)に1分強かかる。明らかにkindle側のサーバ回線がボトルネックなのだろう。常時多数のユーザが接続しているのだから致し方ないとはいえ、1冊1分で1400〜1500あると単純計算で丸々24時間程度かかることになるわけで、よほど時間に余裕がある時でもなければ厳しいものがある。
たとえばダウンロード中に優先して読みたいタイトルができたとしても、既にダウンロード予約されている分を手動でひとつひとつ取り消してゆくか、諦めて全部ダウンロードされてくるのを待つしかなく、そう考えると一括DL用メンテコレクションはあまり良い方法ではない。
また、何故か一括ダウンロードしておくと少なからぬ割合で「データの壊れた」本ができてしまう:開こうとすると「削除してダウンロードし直してください」というアラートが出るので、これも手動でメンテせざるを得ないが、実際に開いてみるまでわからないので面倒だ。
結局、一括は諦めて「読む時にシリーズまとめてダウンロード」という運用にシフトしつつあるのだが、こちらも例えば検索したものを一括ダウンロードする機能などはないので、手動でどうにかするか、あるいは冊数の多いシリーズなどは個別にコレクションを作る必要がありそうだ。

NERFに装飾を

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何度でも書くけどNERFは塗装すると見違える。というわけでNERFリペイント・プロジェクト第三弾は8銃身ショットガン「ROUGHCUT」の銃身装飾。

(なお第一段と第二弾はこちら。)
d.hatena.ne.jp
d.hatena.ne.jp

前段

きっかけはこの写真だった。
https://img0.etsystatic.com/048/0/9910733/il_fullxfull.672839814_6vu8.jpg
金属色に塗られたボディに、手掘りの蔦模様。あまりの渋さに、それまであまり興味を持っていなかったROUGHCUTが俄に魅力的に思えてきて、しかし既に国内正規販売がなかったのでオークションで入手。

さて、どうやって装飾を施すかが問題である。直接彫り込んでゆくのが一番手軽かも知れないが、それでは上の写真でやっていることの真似でしかないし、それに彫刻の心得はないので綺麗に彫れる自信はない。
そもそも銃身彫刻というのは確かに「平滑な面を鑿で彫り込む」ものではあるのだが、線を彫り込むというよりは「線を残して周囲を彫り込む」感じが一般的で、つまり装飾部分が立体的に残るイメージになる。また別の素材(たとえば金など)を象嵌して元の平面より盛り上げて装飾する場合もある。
どうせならそういう立体感も出したい。

そういうわけで、既存の装飾を切り貼りすることを考えた。既製品が使えるなら形の揃った綺麗な装飾が可能になるし、一石二鳥だ。
問題は、そういう装飾に心当たりがないことで。スーパーで扱ってるオードブル盛り合わせとかの載ってるペラペラの樹脂にメッキしたような皿とかに蔦模様っぽい装飾あったりしなかったっけ……と業務用品の通販などを検索してみるも、いい感じのものが見当たらない。
妻に助言を求めたところ「そういう装飾用の飾り紙があるよ」と紹介してくれたのが、ドレスデンペーパーあるいはドレスデントリムスと呼ばれる、箔押しの厚紙をエンボスして打ち抜いたものである。
zakka-minimini.com
様々なデザインのある中から蔦模様として使えそうなものをいくつか購入してみた。

工程

さて、NERFをバラして下加工してゆこう。
分解と塗装の基本的な情報は下記を参考にされたい。
http://www.saba-navi.com/2015/05/28/nerf_repaint_custom_02/www.saba-navi.com
塗装にあたり大きな懸念になるのは可動部品の摩擦による塗料剥がれである。ROUGHCUTの場合、可動部品はスライドグリップとトリガーの2点だ。
トリガーについてはこれを見越してパワーのある米国仕様のオレンジトリガーモデルではなく国内向けのグレイトリガーモデルを購入しておいたので、無塗装で済ませるつもりである。
問題はスライドするフォアグリップの方で、中古であったため既に本体のフォアグリップと当たる部分に擦れが生じているのが確認できた。この部分については何らかの対策が必要だろう。そこでサイドに直線的な溝を彫ることにより直接の接触を避け、またフォアグリップ側も僅かに削って隙間を確保することにした。ついでに側面の滑り止めは時代的なイメージに合わないので、これも削り落としておく。

ドレスデントリムスは部品ごとに切り抜き、大きなものから先に箇所を決めて瞬間接着剤で貼ってゆく。それから隙間を細かい模様で埋めて、バラバラの模様が一つながりに見えるように配置してゆく。
片面ができたら、ほぼ対称になるように裏面を貼る。側面は見比べないので細かな違いがあっても大丈夫だが、上面は比較しやすいのでなるべく位置を合わせる。
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形状の加工がすべて済んだら、塗装のために表面へ黒のサーフェイサーを吹いて下塗りとする。

塗りの前に塗料をチェック。しばらく使っていないものは揮発して固まっていたりするので、検品を兼ねて適当な紙に色を塗って発色をチェックし、使う色を決める。ついでに木目の塗り方についてもテストしてみる。

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フォアグリップの木目塗り。下地を黒で塗ったのでミディアムグレイをドライブラシして全体的な木目の流れ方向を作りつつ面相筆で黒を細く乗せておく。
その上からクリアオレンジを筆塗りしたのが右の状態、さらにクリアレッドも塗ったのが左。マホガニーっぽい仕上がり。

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銃床の方は色を変えたかったので塗り方を変えてみる。バフで下塗りした上にレッドブラウンとブラックで細い木目を引いてゆき(右)、その上からクリアオレンジを塗る(左)。
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更にスモークグレイを重ねたのが左の状態。クリアオレンジまでの右、クリアレッドを重ねたフォアグリップ(中)との比較。

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本体の塗り分け。元々の塗装イメージに合わせ、青だった部分はブロンズで、白だった部分をフラットアルミで塗り潰す。

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貼り込んだ装飾部分にリーフゴールドを乗せてゆく。

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フラットアルミで銀色に塗った帯の部分には面積の広い装飾を多く貼っているので、すべてをリーフゴールドで塗ってしまうと銀色っぽさが出ない。そこでやや白っぽい色合いのチタンゴールドを塗ってみたが、それだと下のフラットアルミとのコントラスト差が弱い。というわけで最終的にリーフゴールドで縁取った。

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微細な模様を浮き上がらせるためにスミ入れ塗料を塗る(左)。無加工(右)に比べ色合いが落ち着き、凹凸が強調される。

タミヤ スミ入れ塗料 (ブラック)

タミヤ スミ入れ塗料 (ブラック)

一通りの塗装が終わったら、仮組みして全体のバランスをチェック。ここで最終的な修正を終えたら仕上げにトップコートを吹いて表面を保護する。
組み上げて動作テストしたら、作業完了。
事前の表面加工に1日、ドレスデン・トリムスでの装飾に片面2日、塗装に1日を費した。

完成

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前装式 金銀象嵌銃、銘「乱切」二連四射(Engraved-Gun-like, NERF RoughCut 2x4 Blaster mod)。

Macでファイルを便利にアレコレする

仕事の都合で、大量のファイルを一気に処理せねばならないことがある。ひとつひとつ手作業でやると退屈すぎて注意力散漫になるのでミスも増えるし、時間もかかる。なるべく一気に自動で済ませてしまいたい。
アレコレ、といいつつ2つしか書いてないのは、とりあえず自分に必要なのがこの2点だったから。

画像の圧縮

Web用の画像ではわりとピクセルサイズやファイルサイズが指定されることが多い。もちろん少数ならばPhotoshopでちょいと書き出してやれば済むのだが、点数が多くなってくるとなかなか面倒だ。アクションを作ってバッチファイルで自動処理させる手もあるのだが、ピクセルサイズの変更はともかくファイルサイズの方はちょっと困る:Photoshopのファイル保存機能はなぜかファイルサイズ指定で圧縮率を調整しても、設定としては圧縮率しか保存できない=異なる画像を同じ圧縮率で保存することは可能でも同じファイルサイズで保存する機能はないのだ。

そんなわけで「指定ファイルサイズに収まるように再圧縮する」フリーウェアを探してみたところ、Windows用に「縮小専用。」というソフトを発見、そのAdobeAir版がMac上での動作に対応していた。
縮小専用AIR | i-section.net
ウィンドウへのドラッグ&ドロップで複数ファイルの一括加工が可能。ただしフォルダごとのドロップには非対応のようで、やってみたら考え込んだまま動かなくなってしまった。
定型サイズへの変形(長辺を指定サイズに)や圧縮率指定、画像へのフィルタ加工などの機能もあるが、ここで重要なのはファイルサイズ指定機能。元サイズがどうであれ指定サイズ以下に圧縮し直してくれる。
加工済みファイルは頭または尻に文字列を付加して元フォルダに保存するか、あるいは設定したフォルダ名で新規フォルダを作ってそこに保存してくれるので、元ファイルを上書きしてしまうことはない。

ファイルのリネーム

多数のファイルを扱う仕事では、ファイル名の付け直しに追われることも少なくない。ひとつひとつ手作業でやるのは面倒なので、ある程度の規則性があるなら一括で処理したいところだ。
ファイルリネームのためのアプリではこの「Shupapan」が随一だろう。
Sunskysoft - Shupapan|Shupapan
ファイル名を連番に変更、あるいは連番付きに変更、日付の付加、拡張子の変更、大文字←→小文字や全角←→半角、ファイル名の文字数を頭または尻から指定字数削除あるいは字数残し、指定文字列の置換では正規表現に対応、更には機種依存文字の削除やファイル名文字化けの修復と至れり尽くせりの機能性である。
ドラッグ&ドロップはフォルダごと可能、階層も保ったまま読み込める。ファイル名は処理前に結果をプレビューでき、必要に応じ対象/対象外をチェックボックスで切り替えも可能。

世紀末NERF伝説

NERFといえば、米国のトイガンである。安全性の高い大型の低圧弾を使用するため国産のエアガンに比して発射機構が大振りで、そのぶんメリハリの効いた「ゲームや漫画にしか登場しないような」雰囲気が魅力的である。

最近ではラインナップを拡充して、機能面では従来の製品を改良し飛距離・精度を高めた「ELITE」、通常より大型サイズの弾を使用する「MEGA」、通常弾よりも飛距離の出るディスク弾を使用した「VORTEX」、ゴルフボールのようなディンプル付き球弾を使用する「RIVAL」、各パーツに互換性を持たせ組み換え可能な「MODULUS」、(その他に水鉄砲シリーズ「Super Soaker」、)またデザイン面では女の子をターゲットにした「Rebelle」、それにポストアポカリプスなデザインの「ZOMBIE STRIKE」と「DOOMLANDS 2169」がリリースされている。

注目したいのは最後の2ラインナップだ。
従来のNERFはわりとSF的な「未来のハイテク銃」路線でデザインされていた。ELITEはその路線を引き継いだ正当ラインだしVORTEXは光線銃的なイメージだ。
それに対してZOMBIE STRIKEとDOOMLANDS2169は「現代文明が災厄により崩壊した後の世界」を生き抜くための銃としてデザインされている。つまりMAD MAXとか北斗の拳とか、そっち方面だ(いやZOMBIE STRIKEの方は名前通りゾンビものサバイバル世界なんだけど、まあやることに大差はない)。

たとえばSlingFireはトリガー下部のレバーによるコッキングで次発を装填する「レバーアクション」と呼ばれるタイプのメカニズムを備えたブラスターだ。19世紀末に好まれた機構だが、現用銃ではほとんど使われない。
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B00ILD5AJO/wissenschaft-22www.amazon.co.jp

[REVIEW] Nerf Zombie Strike Slingfire Unboxing, Review, and Firing Test
こんな風に派手なアクションによるリロードが楽しめる。

また、SlingFireと外見も名前も似ているSledgeFireの方は中折れ式で、専用カートリッジに通常のダーツを3発込めて同時発射する、一種のショットガンである。
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B01G81FMIY/wissenschaft-22www.amazon.co.jp


Nerf Zombie Strike Sledgefire Review and Shooting

極めつけはDoominator、「破滅の支配者」である。これは6発装填のシリンダーをレバーアクションで切り替えて24発連射できる代物で、引き金を引いたままフォアグリップを引いてコッキングすれば連射も可能なスラムファイア対応。
www.amazon.co.jp

Nerf Zombie Strike Doominator Unboxing and Review

派手なギミックは射撃部分だけではない。CrossCutはなんと銃身の左側に丸ノコを装備、発射トリガの下にもうひとつあるトリガで回転する。
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/B01G81FMGQ/wissenschaft-22www.amazon.co.jp

NERF - 'Zombie Strike Crosscut Blaster' Official T.V. Spot
このように、結構激しく回転する。まあウレタンなので当っても痛くはないのだが。

どうですこの一連のギミック。ちょっと欲しくなっちゃいませんか。
いかにもオモチャ然としたカラーリングがイマイチ、という向きにはご自分で再塗装されることをオススメする。きっと見違えるから。
https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/736x/4f/ce/ed/4fceed79882974826a2fba3cda5c76cf.jpg
http://img01.deviantart.net/cb5a/i/2014/250/b/d/nerf_slingfire_zombie_custom_by_billy2917-d7y9byh.jpg
http://img10.deviantart.net/518e/i/2013/307/a/8/nerf_sledgefire_by_billy2917-d6suoou.jpg
https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/736x/2e/72/8c/2e728ccb6d1c128a5fd6cb53ebd40220.jpg

なお、世界設定の近いDOOMLANDSの方は12発ドラムマガジンのカービンとか手動ガトリングっぽいロングバレルブラスターとか、こちらもなかなか格好良いのだが、差し当たって国内展開がなさそうで残念。こちらは特有のギミックとして「アウターパーツ半面がクリアになっており内部動作を鑑賞できる」という特徴があるのだが、雰囲気を出すならこの部分は塗り潰さざるを得まい。

カルドセプトの構造的問題と解決策を探る

カルドセプトは、発売当初からその面白さが高く評価され、爆発的なヒットこそしないものの、ほぼ全タイトルでファミ通殿堂入りなど着実に注目を集めてきたタイトルである。
その一方では、「面白いのにユーザが増えない」という苦悩を抱えるタイトルでもある。面白いのだが、面白さが理解されにくい。あるいは何らかの「いまいち面白いと感じられない」要因がある、ということだろうと思われる。

新作カルドセプト リボルトではスタートダッシュVer.が先行配信され、購入特典以外にもマイニンテンドーのプラチナポイント500で入手可能とあって体験版的に新規ユーザが入ってきているようだが、実際Twitterなどでの反応でも「やってみたけどイマイチ」的なものがちらほら見られる。
もちろん万人に受けるゲームなどは存在しないので合わなかったという人がいるのは致し方ないことではあるのだが、引っ掛かるポイントが明白ならばそれを改善できないか考えるのもまた重要なことだ。
ざっと拾ってみると、おおよそ次のような点に不満が見られるらしいことがわかってくる。

  • 1プレイに時間がかかりすぎ
  • ダイス目が悪いとストレス
  • 戦闘で勝てない

プレイ時間の問題

これはまあ、以前から問題視されてはいて、だからこそリボルトではルールの変更を含めた改善を行なっているわけだが、しかし本質的に対戦ボードゲーム、とりわけプレイ人数の多いもので時間がかかるのは、ゲーム構造上致し方ない。
一人あたりの手番が30秒で済むとしても4人いれば1ラウンドあたり2分を要することになる。短かめのゲームでも20ラウンド前後はかかるので1戦40分。白熱すれば考える時間も長引き、あるいは激しい攻防で一進一退して、その分だけゲーム時間も増え、1時間ぐらいは見込まざるを得ない。
ボードゲームとしては1戦あたり60分程度はごく標準的なプレイ時間で、特段に長いということはないのだが、コンピュータゲームとしては一区切り1時間というのは結構長く感じられてしまうだろう。
ボードをコンパクトにしたり目標額を下げるなどすれば多少は短かくできるのだが、そうすると多人数では競争が激しくなりすぎて後手番が出遅れるし、体勢があまり整わないうちにもうゴールに至ってしまうので「実力を発揮して勝った」というよりは「運が良かった」感じになってしまうだろうと思われ、ゲームとしてはむしろ改悪になりかねない。
あるいは1on1を標準にしてしまうというのもいい。4人戦と比べて待ち時間は1/3になるわけで、体感的にも実質的にもかなり軽くなるはずだ。
いずれにせよ、根本的には「ボードゲームだから時間がかかる」ので、短縮には慎重にならざるを得ず、体感の圧縮以上の改善は難しい。

他人の手番で受ける影響について
この件、


という指摘があり御尤もと思ったので追記。
ボードゲーム界隈でも、昔から「手番が回ってくるまでのダウンタイム」は問題として挙げられていたが、これは主に「手番以外ではアクションを起こすべき変化がほとんどない」ことによるもので、不利が問題になっているわけではない。たとえばこの問題に「手番処理中に他プレイヤーもリソースを得られる(場合がある)」ことで応えたカタンでは、「泥棒」による不利益の生じる可能性もあり、一概にプラスの影響が重要というわけでもなさそうだが、ともあれ「主にプラスが生じる」のではある。
対して他人への干渉が強いゲーム、たとえば対戦型TCGなどでは手番外に自分の資産への干渉とそれに対するリアクションが求められることでダウンタイムがあまり「ただ待つだけ」にはならない。他人の手番で発生する影響はほぼ確実にマイナスであるにも関わらず、それがネガティヴなイメージになっている感じはない。

カルドセプトの場合、丁度その中間にあって「他人の手番で自分へマイナスの影響が生じる」けれどもリアクション権が「戦闘時のアイテムにしかない」というバランスが、ダウンタイムに対するネガティヴな印象を強めているのは否めない。
解決策のひとつは「スペルによる干渉をなくす」だろうか……自分への強化はできても他人への妨害はできないようにしてしまえば、ネガティヴさは弱まる。あるいは逆にスペルへのリアクションを用意する方法もあるが、今度は最大3人からの干渉があり得て面倒になる。
ただスペルの干渉効果を弱めると直接戦闘以外での変化が弱まるのでゲーム展開は些か単調になるかも知れない。難しいところだ。

ダイス目の問題

「ダイス目が悪い」にも2種類あって、ひとつは「高額領地を踏んでしまって負ける」、もうひとつは「目が低くて周回に時間がかかる」。
前者については「奪えるようにブックを組む」あるいは「ダイス目をスペルで固定して運の問題でなくする」のが適切な改善策であって、ゲームの側でやれることがあるとすれば戦果でブックの解析を絡めてアドヴァイスを出す程度だが、後者は要するに「スゴロク風であること」が根本的に抱える問題と言える。
スゴロクというのは要するにレースゲームだから、基本的には「大きい目を出すほど良い」。カルドセプトでも周回ボーナスなど「早く回る方が有利」な面はたしかにあるので、余計にその感覚を強めているのだが、しかしカルドセプトの本質は実のところ陣取りと資産運用のゲームであり、周回は単に手持ちの魔力が増える程度の効果しかない。この「見た目の印象と実態に乖離がある」のが、ダイス目(が小さいこと)に必要以上の悪印象をもたらしているように思われる。

実際にはカルドセプトでの小さなダイス目はむしろ連鎖を得やすくなる分だけ有利に働くとすら言え、(飛び越えたい場所を踏んでしまう時以外では)悪いものではない。特にラウンドゲインがある分だけ魔力のやりくりが楽になったリボルトではその傾向が強い。
いっそ「小さい目の時には魔力ボーナス」とかあれば目の印象も違うのかも知れないが、それでは小さな目が強くなりすぎてしまうか。
あるいは周回をダウン回復・HP回復効果のみにして周回ボーナスの概念をなくし、その分を分散してラウンドゲインにしてしまうというのはアリかも知れない。

戦闘問題

これもデザイン上の誤謬なのだが。
前述の通り、カルドセプトは陣取りと資産運用のゲームだ。「連鎖を得ること」「連鎖した土地のレベルを上げること」が最も重要な要素で、ある意味それ以外はすべて装飾に過ぎない。
しかし楽しさの比重は明らかにブック構築にあり、ブックの機能の大半は戦闘にある。だからどうしても「戦闘力の高いブック」を組んでしまいがちだし、またそれが時折有効に機能して高額領地を奪って逆転したり拠点防衛でがっぽり分獲れたりという成功体験をもたらすものだから、「もっと重要なこと」に気付きにくく、だから「なかなか勝てなくて苛々する」ことになる。

ここはチュートリアルの不足が問題であるような気もする。前作でも今作でも、「連鎖を作れ」「レベルを上げろ」ということはもちろん言われているのだが、「連鎖がどれだけ重要か」は軽くスルーされてしまう。
レベルアップコストが土地価格の8割になった今作でこそ「単領でもレベルを上げれば総魔力が(投入した魔力の25%だけ)増える」のだが、前作までは単領では一切増えなかったし、その一方で連鎖は「2連領でも価値は1.5倍」「4連領なら2倍」と劇的だ。たとえば単領では1Lv土地(100G)→5Lv土地(1600G)には1200Gの投資に対し総魔力の増加はたった300G(投資分の1/4)に過ぎないが、2連領になっていれば土地価格は150G→2400Gになるので実質魔力増加は+1050Gと、単領の3倍以上になる。3連なら土地価値は1.8倍、5連領にもなれば2.2倍だから増加割合は更に増加するわけで、単に「通行料を高める」「防御を固める」以上に大きな意義がある、という点はもっとプッシュされるべきだろう。

カルドセプト リボルトをスタートダッシュする

カルドセプト ダイレクトが配信され色々な情報が明らかになった。と同時に7/7の発売を前に「あらかじめダウンロード」予約購入がスタート、予約者はスタートダッシュVer.(という名の先行体験版)がダウンロードできる。
早速予約してスタートダッシュしたので、その感想などを交じえてリボルトの変化についてまとめてみたい。

速度

リボルトで一番重視されたポイントと思われるのが「1戦あたりにかかる時間」だろう。以前から「時間がかかるので尻込みする」といった話はよく聞かれたので、リボルトは発表当初から「スピーディ」を謳っていた。
実際にやってみると、たしかに時間がかなり短縮されているように感じられる。これは恐らく表示のチューニングとゲームシステムの変更の2本立てによる改善だろう。
表示のチューニングは、たとえば戦闘のアニメーションにかかる時間を見ると実感できる。
www.youtube.com
こちらは前作の戦闘シーン。手慣れたプレイヤー同士のためカード選択も一瞬で、一方しかアイテムを使用しなかったため能力発揮エフェクトが合計4回、これで4分40秒→5分10秒の約30秒。
www.youtube.com
対する新作の戦闘、カード選びに少々手間取り、双方がアイテムを使用しエフェクトが計6回、8分23秒→8分45秒で22秒。およそ2/3の時間で完了している。
戦闘だけでなく、全体にアニメーションが高速化している。これによって1手番にかかる時間そのものが減っているだけでなく、体感的にもスピーディな印象がある。

また、ゲーム展開も早くなった。これは主に「ダイスが2Dになった」「魔力制限が緩和された」「領地コマンドが使いやすくなった」ことによるところが大きいだろう。
0-5の2Dなので期待値は5歩(ただし00は12扱いなので5.33歩)となり、1-6の3.5歩よりも移動が早くなった。初期マップの距離は前作のデュナン村が1辺4マス+城=砦の18マスだったのに対し1辺5マス+2ゲートの22に増えているが、1周にかかるターン数は平均5.14から4.13に短縮されており、明らかに周回が早い。
その上、毎ターン開始時に少額ながら収入がある(初期は20だが経過ターン数が加算される)ので、各ターンに使える予算も多い。前作では初期200+砦ボーナス100の合計300を5ターンで分配するとして1ターンあたり60程度だったが、今作では初期150+砦ボーナス100の250を4ターンで、その上毎ターン20以上の追加があるので、1ターンあたり84ほどになる。
一番重要なのは、総魔力を押し上げる要である「土地のレベルアップ」を含めた領地コマンドが、常に全領地に対して使えるということ。召喚したばかりの時や一度使った後は「ダウン」状態となり周回まで使えなくなるが、計画的なレベルアップが容易になった。
しかも(これはもしかしたら初期マップだけという可能性もあるが)土地の基本価値が100→80になっているため、レベルアップに要するコストも低い。まあその代わりにLv1単領地の占領ではほとんど魔力資産が増加しなくなるので、積極的に連領を形成しレベルアップする必要があるということでもあるが。
誤認があったので追記。土地の価値自体は変わらず100で、レベルアップに要するコストがその80%になったのだった。ということは、今までは単領だと投資魔力=増加魔力で増えなかったものが、単領でも(投資魔力の25%ではあるが)魔力増加するようになったわけだ。安くレベルップできる上に総魔力が増えやすい仕様変更である。

戦術の変化

任意の領地にコマンドを使用できるというのは劇的な変化で、たとえば現在地から離れた場所へマジックボルトを撃ち込んで空き地を作り、隣のクリーチャを移動させて占領、というムーブが1手で可能になるし、あるいはホーリーワードかけて踏む場所を指定した上でそこのレベルを上げる、などといったことも確実にできる。これまでとは違った意味で、激しい攻防が展開されるわけだ。
これにより従来ではほとんど活用されることのなかった、他プレイヤーの妨害用としてのホーリーワードが、にわかに危険なカードと化した。
ついでに、ドローを付けてなお利用率の低かった回復スペルが「ダウンの回復」付きになったことで重要度を増した。召喚したばかりのクリーチャーを即時レベル上げしたり、移動侵略後すぐに置き換えたりといったことが可能になる。

ダイスが2Dになったということは従来のように出目が一様に分布しておらず「5」を中心に出やすさが偏るということ。つまり「次に相手が踏みそうな」エリアを狙って上げておく、というような戦術も地味ながらそれなりに有効だろうと思われる。
面白いのはホーリーワードとフライの問題。呪い効果であるホーリーワードに対し瞬間効果であるフライは併用可能だが、その場合の出目がどうなるのか調べたところ、「ホーリーワードが2Dの合計値を固定し、フライが3D化=ホーリーワードの指定値+1D」進めるようだ。

また、カルドセプト独特の「手札の扱い」も変化した。枚数オーバー時もすぐに破棄させられるのではなくターン終了時までは保持できるし、なにより「相手の手札を憶えておく」必要がほとんどなくなった:いつでも下画面をタッチすれば確認できるので、これからは「自分が攻め込む前に相手のカードを確認する」「手番プレイヤーのカードを確認しておいて備える」になるだろう。副次的に、「戦闘に入ってからカード選びに悩む」ことも少なくなると思われるので、その分だけ戦闘の時間も短縮できる。

自分好みに育てる特殊なクリーチャーカードが登場したが、公開されている範囲の情報のみから察する限りではHPやSTを育てることはできても特殊な能力を持ったりはしないように思われる。まあ単に非公開なだけで実際には能力を追加するパーツも用意されているのかも知れないが、それでも先制や再生など定型的な能力だけではないだろうか。あまり戦術に大きく作用する要素ではなさそうな気がする。

ストーリーなど

ほんの序盤しかプレイできないためなんとも言えないが、物語としてはほとんど進まない段階で3マップが公開されたので、全体を通してそこそこのボリュームになりそうな気がする。シナリオが充実していたサーガぐらいのボリュームになるんだろうか。
珍しくCERO Bなのはシナリオが暗めの展開っぽいことによるのか、それともキャラのデザイン故か。ヒュプノおねえさんエッチです。
今までは「あくまでプレイヤーの分身」であり無口を貫いてきた主人公が、はっきりとした性格と背景設定を持つ別人になったのには違和感がないでもないが、まあ対戦時のアヴァターは変更可能なのだから気にすることはない。
それよりも今回一番の衝撃は「セプターて死ぬとあんな風になるんですか……」じゃないかな。このあたり設定を知りたい。

マヤ遺跡天文対応説とはなんだったのか

初手から胡散臭い話ではあった。
societas.blog.jp
普通に考えれば、素人の少年が専門家に勝る発見をする可能性はたいへん低い。
普通に考えれば、星座と都市が結び付くはずがない。
だいたい、「遺跡のある場所を線で結ぶと意味のある形に」なんて話、オカルト誌でしか見たことない。

中身を読んで胡散臭さは確信になった。

「マヤ暦で2012年に世界の終りが予言されている」という逸話を知ったことをきっかけに中米の古代文明に興味を持ち

そもそも発端からしてオカルトであるが、まあそこは単にきっかけであるから目を瞑るとして、

ある仮説を立てて独自に「研究」を行っていた。その仮説とは、マヤ文明の古代都市が星座の並びを模して配置されているというもの

それは仮説ではなく思い付きというのではないか。
まあ根拠のない思い付きが発端であったとしても、きちんと検証を踏んで仮説と言えるまでに至ることはあるだろう。

「なぜマヤ文明の都市は川から離れた山奥の不便な場所に造られたのか?」と疑問を持ち、上述の仮説を思いついた

なぜその疑問からこんな「仮説」に至るのかがよくわからない。間に入るべき段階をいくつもすっ飛ばしてないか。

マヤのGISをダウンロードして地図上にプロットし、その地図に現地から見ることのできる範囲の星図を重ね合わせてみた

とあるが、実際に彼が描いたらしきものを見ると実際に重ねたのは星図=「空のどの位置に星があるかを示すマップ」ではなく星座=「小数の目立つ星を繋ぐ線」のようだ。
たとえばUne cité maya découverte par un ado grâce aux étoiles ? - Libérationにいくつかの画像があるが、
http://md1.libe.com/photo/874916-william-gadoury-constellations-mayas-expose-orion.jpg?modified_at=1462805251&width=750
オリオン座のうち3つの星を遺跡の位置に(だいたい)合わせているだけで、目立つ三つ星などはスルーだ。
他の画像から見ても、実際の天体位置とは無関係に複数の星座を地図の上に重ねている。もしマヤ文明が、「わざわざ不便な場所に都市を作る」ほど天文に強いこだわりを持っていたとしたら、そんな適当なやり方をしただろうか?
http://md1.libe.com/photo/874913-william-gadoury-constellations-mayas-expose.jpg?modified_at=1462803980&width=750

そもそも、これはマヤの星座ではなく、我々の知るギリシア時代からの西欧式な星座に過ぎない。
マヤ考古学者に拠れば、


というわけで、目立って輝く星を無視するようなことはなかっただろうけども、少なくとも星のまとまりを我々の感覚とは全く違った目で見ていただろうことは確実だ。

つまるところ、

マヤ文明の117の都市が実際の星の並びと一致していた

というのは


というネタと大差ない。もちろんこれはそれっぽい図形を描ける位置のコメダだけを拾い上げて線で繋いだだけで位置が合わないものは華麗にスルーされているわけで、マヤ遺跡と星の並びについても

しかしこの話は、更に続く。

Gadoury君は、当時のマヤ文明の星座では重要とされていた星に対応する都市がまだ見つかっていないことに気づいた。それは現在のオリオン座に相当する部分の星だった。Gadoury君はこの発見をカナダ宇宙庁に報告し、NASAJAXAの撮影した画像を提供してもらった。もし仮説の通りなら、メキシコのユカタン半島に未発見の古代都市が存在するはずだ

そもそも「星の位置に合わせた」という仮説自体が極めて疑わしいのだが、それはそれとして「偶然その位置に遺跡があった」可能性はなくもない、のかもしれない。

衛星画像を拡大して調査した結果、86メートルのピラミッドと数十の家屋からなる新たな都市が発見された

偶然の発見というにはずいぶん大きな話だ。
報道誌面から映像を拾ってみよう。たとえばDaylyMail紙では、
http://i.dailymail.co.uk/i/pix/2016/05/10/10/340122DD00000578-0-image-a-14_1462872045042.jpg
http://i.dailymail.co.uk/i/pix/2016/05/10/10/340122E400000578-0-image-a-15_1462872452470.jpg
それぞれ「大きなピラミッド」と「都市」なのだというが、これを見る限りでは単に「盛り上がった何か」でしかなく、86メートルのピラミッドだの数十の家屋だのはまったく見えない。
「何かがある」と「遺跡がある」ではまったく話が違ってくるし、前述の具体的な遺跡構成の描写を見る限りでは「現地調査で実際に遺跡を発見した」ぐらいの印象を受けるが、それにしては各記事ともイメージ映像として有名なマヤ遺跡の写真を掲載してはいても「実際に見付かった遺跡の写真」は1枚も出てこない。
じゃあこの「発見された何か」は一体なんなんだ、というと

というわけで、あらゆる方面から見てこの話は極めて疑わしい、というかまあ「ない」だろうという結論になるわけだが、それはそれとして「じゃあ一体この"86メートルのピラミッドと数十の家屋からなる都市"てのはなんだったの」という点が気になっている。
各報道は孫引きされる過程で色々な誤解を含んでいるものとして、一次情報に近いニュースソースとなっているのは恐らくカナダの大衆紙ジャーナル・デ・モントリオールではないかと思われる。この中で既に、

Pyramide de 86 mètres(86メートルのピラミッド)
Superficie totale de 80 à 120 km carrés(80〜120km四方の方形)
Localisation: 17 ° Nord 90 ° Ouest(北緯17度、東経90度の位置)
Réseau important d’allées et de rues(路地や通りの大規模なネットワーク)
30 structures visibles de l’espace(30の建物に見える空間)
4e plus importante cité maya(マヤ遺跡の中で4番目に大きな規模)
(※文意は機械翻訳をベースとした私の理解なので、誤読可能性がある)

と書かれており、より具体的な都市の描写が見られる。この大衆紙が脚色したのでなければ、少年を含む「研究グループ」の発表時点で既に話が盛られていたのだろうか。
我々に確認可能なのはGoogleMapからの衛星画像程度で、もしかしたらNASAJAXAが提供したらしき画像の中にはもうちょっと鮮明に「何かが見える」ものがあったのかも知れないが、それこそ元画像が公開されるべきところであろう。

それにしても、出立点から明らかに間違った「仮説」に3年を捧げてしまった少年が哀れという他ない。誰かそれを止めてやれる見識の持ち主が周囲にいなかったのだろうか……