スプラトゥーン:初フェスの話

土日に24時間かけて初のフェスが行なわれた。今回のお題は「朝食はごはんかパンか」、1週間前からどちらに与するかの投票が開始され、土曜日の18時から翌日18時までの24時間でフェスマッチバトルを行なう形式。フェスが近づくにつれ街中に電光看板が増設されたり、前日には広場に2台のトレーラーが運び込まれたりと「祭り」の雰囲気が徐々に高まってゆく演出が為され、否が応にも盛り上がった。
一方で、初のイヴェントであり運営側でも想定外だったのだろうトラブルなど、次回への反省材料も少なからずあったことは否めない。

マッチ不具合問題

期間中は通常のナワバリバトル・ガチバトルが中止され、フェスバトル一択となる。
フェスマッチのルールは「ごはん派4人とパン派4人のランダムマッチでチームを組み、チーム同士がランダムマッチしてナワバリバトルを行なう」というもの。これ、(チームを組む部分以外では)実質的には夏のアップデートで実装されると言われている「フレンドチーム戦」の仕組みと同じである。フェスはその予行を兼ねているのかも知れない。
フェス開始時点ではどうやらマッチングサーバがうまく動作していなかったようで、随所で「ごはん派4人vsパン派1〜3人による不公正マッチが成立してしまうなどの問題があったが、2時間ほどで解消し、その後はスムーズに対戦が行なわれるようになった。

このマッチング方式には利点と欠点がある。利点は「局所的には常に4vs4なので少数派陣営に戦力上の不利は生じない」こと、欠点は「多数派と少数派が1:1でマッチングするので人数差の分だけ多数派がマッチから溢れる」こと。(事前の発表はなかったが)勝敗は「陣営所属率+陣営勝率×2」で決するので、少数派であっても勝率で優勢を得られれば総合勝利は可能という仕様は適切なものである。

お題から見てごはん派がやや優勢であろうとは伺われたが、事後に発表された公式情報ではごはん派57.3%パン派42.7%だったそうだ。両陣営の人数差が僅かならば、マッチング溢れの問題はそれほど深刻でもない。しかし15%近くも差が付いてしまったことで、ごはん派側ではおよそ1/4もの人たちが常にマッチング待機中という事態を生じてしまった。
更に、どんどんマッチできるために短時間でフェスpを蓄積できるパン派から先に、ランクを上げ切ってゲームから抜ける人が続出したことでマッチング問題が更に悪化した可能性もある。

この問題に対する解決策はなかなか難しい。参加者内での偏りを読むことは困難で(このお題は事前にWii時代の「みんなで投票チャンネル」でほぼ半々となったもの、という未確認情報もある)、だとすれば差が大きく出てしまった時の対策を考える必要があるだろう。
比較的現実的な解のひとつとしては「多数派同士でもマッチングさせてしまう」という方法が挙げられる。たとえば互いの表示上は相手陣営と戦っているように見せつつ、実際には溢れた多数派同士でゲームしているに過ぎない、というやり方だ。勝敗に応じてフェスpは与えつつ、勝率的にはまったく変動させない。そういう表示の調整が可能であれば、これが最も穏当な解決策ではないかと思う。

あるいは、お祭り期間中のみ通常では行なわれないミニゲーム(たとえばゲーム筐体が増えていてamiiboなしでもこの期間中のみ各種ミニゲームが遊べたり、通信対戦でバトルドージョーが遊べたり)などを解放して、マッチングできないストレスを多少紛らわしてもらう、というのもアリかも知れない。

マッチ不均衡問題

元々ナワバリバトルではランクによるマッチング振り分けを行なっていない。振り分けはシステム側ではなく腕に覚えのある者同士でがっつり戦う「ガチバトル」を用意し、上級者をそちらに集中させることによって行なっている。
それが、フェス期間中はガチバトルを中断しフェスバトル一択となるために、ウデマエA+もC-も全部混ざってのゲームになってしまった。
通常のバトルでは、短期的な勝率を表す「チョーシ」によって敵味方の振り分けを調整しているが、フェスマッチでは陣営固定のためそのような単純調整ができない。チームごとのチョーシを隠しパラメータとして持っている可能性はあるが、チームメンバーも固定というわけではないのであまり機能が期待できない。
結果として、フェスバトルではしばしば「一方の陣営が極端に大勝する」場面が多く見られたように思う。祭りとはいえ一方的にボコられるのはあまり楽しいことではなく、このマッチ問題についても再考を要するだろう。
フェス中にもガチバトルを用意する、というのがひとつの解かも知れない。

戦況と報酬

フェス期間はわずか24時間だったが、その間「どちらが勝っているか」はまったく示されず、また勝利報酬も事前には知らされなかった。まあ報酬などは初フェスゆえのことでもあり、次回以降も概ね似たような感じだとすれば事前把握可能だが、勝敗がわからないことで奮起できない、といった意見もあった。
もっとも、勝率の表示は諸刃の剣である。僅差で「ここで踏ん張れば逆転できる」ような場合であれば奮起の理由ともなり得るが、大差を見せつけられれば逆に戦意を失う。今回の事例で言えば最終的に10%もの差が付けられているわけで、戦況が見えなかったのはむしろ正解だろう。
国内だけでも6桁の単位でプレイヤーのいるゲームで、一人あたりの貢献度などというものは、どれだけの無双乱舞だったとしても雀の涙だ。恐らく個人の頑張りのみでは勝率を0.1%押し上げることさえ不可能なはずで、それが10%もの差を付けられたのだから奮起どころか落胆しかない。

となると、「少数派の奮闘が大勢を揺るがすような仕組みにする」か(しかしそれは相手からも揺るがし返される仕組みでもある)、あるいは「大勢は見せず個人目標だけに集中させる」(ほぼ現行の仕組み)しかやりようがないだろう。
まあ一つの方法としては、たとえば1時間ごとに「種目」を変えて勝敗を競い、それを積み上げて最終戦果とするような方法が考えられる(体育祭っぽいノリだ)。全体では10%差が付くとしても、短期的には勝てる部分もあるのだとすれば、たとえば20戦段階で11勝vs9勝ぐらいになれば残り4時間はさぞ盛り上がることだろうと思う(ただし短期的にも常に10%差で押され続ける、などの状態であるとすれば少数派が全敗で終わる可能性もあるのだが)。ある程度差が開いても終盤巻き返せるよう、最後の方は2勝分、3勝分とボーナスを付けるのも常套手段だ。

また、勝者側と敗者側で単純に報酬が2倍差となる形式だったために「フェスランクがカンストするまで頑張ったのに勝者側の1段下ランクよりも少ない」という微妙な状態になってしまったことについては、ランク報酬+派閥勝利報酬の形で切り分けた方が良かったのではという意見もあった。

総評として

このように様々な問題が露呈したフェスではあるが、それでも全体としては決して悪くないイヴェントだったのではと思っている。
お祭りとしての演出は楽しめたし、1週間かけて盛り上がりもした。バトルについては課題が残るけど、システム的な問題は回を重ねることで洗練が望めるし、トラブルも含めて非日常だ。参加者としては長時間かけて1ダウニー貯めなくてもスーパーサザエでスロット増やせて事後も楽しい。
(余談ながら、今回のフェスでマッチングについては快適だったパン派が敗北し待たされてストレスの溜まったごはん派が勝利したことは、結果としては不満の少ない形に落ち着いた最良の結果と思っている。)

とはいえ次回以降も同様に成功するかどうかは、お題の選定やマッチングシステムの進化を含めた問題点の解消にかかってくるとも思う。任天堂の手腕に期待したい。