ビルの爆破解体に要するエネルギーと、旅客機の激突で生じるエネルギー

ちょっと某所の9.11陰謀説議論で「ツインタワー崩壊の原因は旅客機激突ではなく爆破解体だ」という主張があったのを受け、これらのエネルギー量に興味を持った。
最初に断っておくが、あれが爆破されたのだという説はあまりにナンセンスで、真面目に考察する価値はない*1。ただ、個人的な興味としてそれらのエネルギー量比較をしてみたくなったというだけの話だ。


まず、激突した旅客機のスペックを探す。記録に拠れば激突した2機はいずれもボーイング767-200型のようだ。http://www.jalsim.com/simulator_B767.htmlにあるスペックでは同機の最大離陸重量は約150t、巡航速度は862km/h。物体の運動エネルギーは質量/2*速度^2で決まるのだが、単位としてはgおよびm/secで計算されるようなので、それに準じて変換すると、150,000,000g/2*(862,000m/3600sec)^2=4.30002315 × 10^12と出た。ええと……4.3TJ?(この辺り疎いのでよく判らないのだが、エネルギー単位はジュールでいいんだろうか)。どこで1k間違ったのか判らないが10^12ではなく10^9、TJじゃなくGJだった。


一方、爆破解体に用いられる炸薬の量というのは調べてみてもよく判らなかった。多分TNTあたりを使うのだろう、ということでTNTのエネルギー量についての資料を探す。Wikipediaの記事では熱量/質量比3,790KJとあるが、このカンマは多分小数点の打ち間違い(もしくは欧米流表記)だろう。
出典がWikipediaだけというのも不安なので念のためもう少し調べたら、(これもWikipediaだったが)エネルギーの比較 - Wikipediaというページが出てきた。こちらでは熱量/質量比4.184kJとなっている。どっちが正しいんだ。
暫定的に1gあたり4kJとして計算してみると、ほぼ1,000tのTNTと等しい上で計算間違っているのでここの結果も異なる。実際には1t程度(それでも結論に対した差はないが)エネルギーということになった。


と、いうことは。
旅客機の激突に等しいエネルギーを炸薬で代替しようと思うならTNT1000t1tを仕込まねばならないことになる。誰にも気付かれることなく、密かに1000t1tもの炸薬をビルに運び込んでセットし、気付かれぬようカムフラージュしておく。そんなことが可能だろうか。
いや勿論、そんなに多量のエネルギーがなくてもビルは爆破解体できるかも知れない。けれど、それなら尚更、爆破じゃなくて旅客機乗っ取りの方が手軽で成功率は高い。つまり、どう見ても爆破する理由がないことになる。


勿論、実際には激突による運動エネルギーの1点集中とビル全体の爆破を同列には語れない。両者は力の加わり方がまったく違うから。
けれど、どんな形にせよそのエネルギーはほぼ全て、ビル全体への負荷としてのしかかっているのだ。上方からの重圧に抗することを念頭に設計された建造物でも真横からの大きな力には対応できない(握り拳を上下に並べ、ぐっと力を込めて押し付けても、左右から力を加えるとあっさりずらされてしまうのと似ている。異なるベクトルの力には案外弱いものだ)。


WTCの崩壊要因究明を目指した航空機衝突シミュレーションに詳細なシミュレートが。

*1:爆破が可能なら最初からそうすれば良いのであって、飛行機の激突による「偽装」の意味がないし、こっそり爆破用の炸薬を仕掛けることなど不可能だ