じゃんけんのコスト

ちょっとTwitterのタイムライン上で「n人でじゃんけんする時のあいこの確率は」みたいな話になってたので、ふと

多人数ジャンケンは「最も出した人の少ない手を勝ちとする」というルールで運用するのが話早い。もともと人数絞り込みの手段にすぎないんだし
http://twitter.com/#!/DocSeri/status/42177776752672768

なんて書いたところ結構な反響が*1。で、その中に少なからぬ割合で「最小がどれか数える手間がかかる」という意見があったのでちょっと解説しておく。


まず、最初に多人数じゃんけんで勝ちを決めるコストについて。通常のじゃんけんルールでは「全員が同じ手、あるいはすべての手が揃ったらあいこ」であるので、多人数であいこにならない状況というのは手Aが誰もいなくてBとCに分かれた時だけということになる。当然ながら人数が増えるほどに全ての手が出揃う可能性は高まる。
具体的に計算するなら、n人じゃんけんであいこになる確率は「1-(2^n-2)/(3^(n-1))」である。ちょっと計算してみるとわかるが人数が増えると飛躍的にあいこの確率が上がり、例えば10人だと95%ほどの確率であいことなる。つまり勝ちグループと負けグループに分かれるために平均20回ほどのじゃんけんが必要になるということだ。
まあ10人ぐらいならばまだ決着のしようもあるが、人数が更に増えるとほとんど決着不可能な状態になってくる。20人だと99.9%あいこ、30人だと99.998%あいこ。ごく大雑把に言えば10人増える度にあいこにならない確率が1/100に減る感じである。


このように、通常ルールでの多人数じゃんけんでは必要な試行数が非常に多くなってしまう。
その点、最小数勝利ルールは早い。なにしろ原理的に「全員の手が同じ」または「すべての手の人数が等しい」時以外にあいこが発生しないので、人数が増えるほどに勝敗が決着し易い。またほとんどの状態では勝利者が全数の1/3を下回る*2ため、定員までの減数が早い。勝者が全数>1の間のどの値にもなり得るため平均して半分づつ減ってゆく(それも数十回の試行ごとに)通常じゃんけんに比して、毎回1/3未満に減り続けるため「限られた勝者に絞り込む」という機能の優位性が高い。
仮に最小勝利じゃんけんでそれぞれの手を数えるのに一人5秒もかかったとしても10人を数えるのに50秒。対して10人でのじゃんけんは1試行に5秒で済んだとしても平均20回、100秒を要する。これが20人になると数えるのに100秒で済むのに対し試行数が平均1000回、1時間半もかかることになる。
お解りかと思うが、最小勝利じゃんけんに要する時間は人数にほぼ比例して増えるだけなので多人数でもさほど手間がかからないのに対し、通常のじゃんけんはそもそも決着までの時間が人数の二乗ぐらいで延びてゆく*3のであっという間に現実的でなくなる。
とはいえ100人ぐらいの集団になってくると確かに数えるのが少々面倒にはなる。そういう場合は、グーチョキパー一組でグループを作ってもらい、余った手を確認すればいい。余らなかった手の人が勝利だ。「余ったか余らなかったか」だけが問題であって数を確認する必要すらないので処理が簡単に済む。


勿論、通常じゃんけんよりも効率良く処理する方法は他にも色々ある。
例えば、数十人以上の規模でじゃんけんするような状況というのはほとんどの場合何らかのイベントなどで主催者がいるものだと思われるので、「主催者の手に勝った人だけ残る」という処理はよく使われる。この方法なら毎回人数をおよそ2/3〜1/3にまで減らし続けることが可能であるため処理は比較的早い。ただしこの方法は勝敗に不参加の「主催者」という立場が必須である。
他にも小グループごとのじゃんけんで勝者を選定し、残留者が再び小グループを組んでじゃんけんをする多段階少人数方式もある。がグループごとに人数差が生じるため勝率が一様でない問題がある。
籤引きは一回で必ず決着する点で優れるが、道具を用意せねばならない。


最小手じゃんけんには他にも「手の種類を増やせる」という利点がある。じゃんけんは出せる手の選択肢が多いほどあいこを生じ難くなるが、通常のルールで3竦み以上の処理をしようと思うと把握が困難になる。しかし最小勝利じゃんけんの場合、例えば両手の立てた指の数で0〜10を表示するなどの方法でも問題なく対応できる。あくまで同一手最小人数であることが勝利条件であり手同士の強弱関係を考える必要がないからこその強みだ。手の種類に応じて勝者を絞り込めるので、かなりの多人数でも瞬時に数を減らせる。


5人以上での勝負には極めて効率が良いので、機会があればお試し頂きたい。

最小数が複数あった場合の処置について

少数派の人数が被ったときは、少数派同士で勝つほう(グー、チョキともに2人ずつなら、グーの2人)で決勝
大人数でも即決着の ゲーマーじゃんけん が便利すぎた件

そう言えばこれ考えてなかった。単に最小数をカウントするだけでなく3竦み関係も利用できるとあいこ率が更に下がる。

*1:実のところ反響が大きかった理由はゆうきまさみ氏にリツイートして頂いたからだが

*2:例外的に手が2種類に分かれた時だけは1/3以上1/2未満になり得る

*3:ごく少ない範囲での大雑把な近似に過ぎないが、100人を越える大人数を扱う機会はまずないと思われるのでここでは気にしない