会員制図書館/蔵書保管庫の試算

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"http://d.hatena.ne.jp/solar/20050913/p1"で蔵書の寄贈による会員制図書館構想が。これ、それなりの蔵書を抱える人々にとっては結構琴線に振れる話である。


現状、自宅の蔵書量は約1600冊。本棚代わりの棚2本と納戸の一面を占める棚を埋め尽くしている。どうみ見ても既に容量限界に達しているが、減る気配はない。それどころか、今後益々増加する一方であるのは明らかである。
残念ながら資産家ではないので、蔵書を収納するスペースを新たに作り出す事はできない。しかし欲しい本は増える。その本にしたところで欲しいものすべてを買えるわけではない。
いきおい、小説類などはかなりを図書館に頼る事になるが、それでも図書館に入らない漫画類を中心に蔵書は増えるし、気に入った小説は結局手元に置いてしまう。
こういう人間が他にどれくらい居るか解らないが、「コレクションを置いておく場所が欲しい」「何人かで購入範囲を分担したい」という要望は少なくはない筈だ。それらが蔵書を持ち寄って図書館を作るとすれば、どの程度で採算が取れるだろうか。


一人当たり1400冊の蔵書を持ち寄ると仮定する。この数量は後述の書架について計算し易くするため。
1400冊×会員数の本を収納するスペースはどの程度必要か。移動型書架製作日記を参考に、レール上を移動する書架を採用して可能な限りスペースを圧縮する。棚ひとつあたり幅81cm、奥行き28cm。1400冊では棚2本分にあたるので一人当たり81×56cm。仮に図書館の床面積を100平方メートル(10m×10m)とすれば、約220人分を収容できる計算である。
但しこの計算には、本棚を動かす余地、管理者の居るべき空間を含んでいないから、実際の収容数はもっと少ない。
実際にレイアウトを考えてみると、精々12本×14列ぐらいが限界であろう。つまり84人分、117,600冊である。


次に、かかる金額について考える。
図書館の建物は、商業地で建坪率80%としても、100m^2の建物を建てるには125m^2の土地が必要となる。
それだけの土地と建物を用意するとなると、それだけでかなりの資金が必要になるだろう。仮に地価の安い都市辺縁部でプレファブ建築であるとしても、5000万位は見ておくべきか。
本棚は1本あたり9060円。168本だから合計で152万2080円。レールが90cmあたり3020円、それを5本繋いだものを2列セットで本棚1列12本を支えるから、合計で42万2800円。つまり本棚に約200万かかる計算である。この5200万が初期コスト。
図書館として機能するためには管理者がいなくてはならない。利用者の良識に期待する手もないではないが、本の貸出先/期間を管理し回収したり、破損を補修したり、返却されたものを整理したりといった作業を利用者に行わせるのは難しい。それに、中にはいつまでも返却しない利用者や返す気のない利用者が出てくるかもしれない。それらへの対処としても、管理者は必要だろう。
作業量からして最低でも二人の司書を雇う必要がある。この人件費と電気代などの維持費を合わせて月あたり100万と見積もる。


そうすると、会員数の上限は84人、初期コストが5200万円、ランニングコストが100万円。id:solar氏の「月あたり3000円」という言葉を元に試算すれば、3000円では84人の会員がいたとしても初期コストを消化するのに207ヶ月、つまり17年ちょっとかかってしまう。その間、月100万づつが赤字である。とてもやっていけない。
逆に、5年で赤字を解消する前提で(それでも長いが)一人当たりの負担額を考えると、月額で約62万円ということになってしまう。
考え方を変えて、初期コストを入会金として会員に負担させ、月々の利用費をランニングコストに回すようにしてみる。この場合、入会金は62万円、月々の費用は15000円もあれば充分だ。月会費がランニングコストを上回るので、それを前提に入会金を50万まで下げてみよう。すると不足は1千万、これを月会費の余剰分で補うと3年ちょっとで解消できる。
まあ、この辺が現実的な数字だろうか。


本日のトリヴィアの種:私設図書館を運営するには会員数の上限84人のメンバーが居る状態で入会金50万円、月会費1万5千円が必要。
タイトルをつけ忘れた事に気付かなかった。