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カルドセプトの構造的問題と解決策を探る

遊戯

カルドセプトは、発売当初からその面白さが高く評価され、爆発的なヒットこそしないものの、ほぼ全タイトルでファミ通殿堂入りなど着実に注目を集めてきたタイトルである。
その一方では、「面白いのにユーザが増えない」という苦悩を抱えるタイトルでもある。面白いのだが、面白さが理解されにくい。あるいは何らかの「いまいち面白いと感じられない」要因がある、ということだろうと思われる。

新作カルドセプト リボルトではスタートダッシュVer.が先行配信され、購入特典以外にもマイニンテンドーのプラチナポイント500で入手可能とあって体験版的に新規ユーザが入ってきているようだが、実際Twitterなどでの反応でも「やってみたけどイマイチ」的なものがちらほら見られる。
もちろん万人に受けるゲームなどは存在しないので合わなかったという人がいるのは致し方ないことではあるのだが、引っ掛かるポイントが明白ならばそれを改善できないか考えるのもまた重要なことだ。
ざっと拾ってみると、おおよそ次のような点に不満が見られるらしいことがわかってくる。

  • 1プレイに時間がかかりすぎ
  • ダイス目が悪いとストレス
  • 戦闘で勝てない

プレイ時間の問題

これはまあ、以前から問題視されてはいて、だからこそリボルトではルールの変更を含めた改善を行なっているわけだが、しかし本質的に対戦ボードゲーム、とりわけプレイ人数の多いもので時間がかかるのは、ゲーム構造上致し方ない。
一人あたりの手番が30秒で済むとしても4人いれば1ラウンドあたり2分を要することになる。短かめのゲームでも20ラウンド前後はかかるので1戦40分。白熱すれば考える時間も長引き、あるいは激しい攻防で一進一退して、その分だけゲーム時間も増え、1時間ぐらいは見込まざるを得ない。
ボードゲームとしては1戦あたり60分程度はごく標準的なプレイ時間で、特段に長いということはないのだが、コンピュータゲームとしては一区切り1時間というのは結構長く感じられてしまうだろう。
ボードをコンパクトにしたり目標額を下げるなどすれば多少は短かくできるのだが、そうすると多人数では競争が激しくなりすぎて後手番が出遅れるし、体勢があまり整わないうちにもうゴールに至ってしまうので「実力を発揮して勝った」というよりは「運が良かった」感じになってしまうだろうと思われ、ゲームとしてはむしろ改悪になりかねない。
あるいは1on1を標準にしてしまうというのもいい。4人戦と比べて待ち時間は1/3になるわけで、体感的にも実質的にもかなり軽くなるはずだ。
いずれにせよ、根本的には「ボードゲームだから時間がかかる」ので、短縮には慎重にならざるを得ず、体感の圧縮以上の改善は難しい。

他人の手番で受ける影響について
この件、


という指摘があり御尤もと思ったので追記。
ボードゲーム界隈でも、昔から「手番が回ってくるまでのダウンタイム」は問題として挙げられていたが、これは主に「手番以外ではアクションを起こすべき変化がほとんどない」ことによるもので、不利が問題になっているわけではない。たとえばこの問題に「手番処理中に他プレイヤーもリソースを得られる(場合がある)」ことで応えたカタンでは、「泥棒」による不利益の生じる可能性もあり、一概にプラスの影響が重要というわけでもなさそうだが、ともあれ「主にプラスが生じる」のではある。
対して他人への干渉が強いゲーム、たとえば対戦型TCGなどでは手番外に自分の資産への干渉とそれに対するリアクションが求められることでダウンタイムがあまり「ただ待つだけ」にはならない。他人の手番で発生する影響はほぼ確実にマイナスであるにも関わらず、それがネガティヴなイメージになっている感じはない。

カルドセプトの場合、丁度その中間にあって「他人の手番で自分へマイナスの影響が生じる」けれどもリアクション権が「戦闘時のアイテムにしかない」というバランスが、ダウンタイムに対するネガティヴな印象を強めているのは否めない。
解決策のひとつは「スペルによる干渉をなくす」だろうか……自分への強化はできても他人への妨害はできないようにしてしまえば、ネガティヴさは弱まる。あるいは逆にスペルへのリアクションを用意する方法もあるが、今度は最大3人からの干渉があり得て面倒になる。
ただスペルの干渉効果を弱めると直接戦闘以外での変化が弱まるのでゲーム展開は些か単調になるかも知れない。難しいところだ。

ダイス目の問題

「ダイス目が悪い」にも2種類あって、ひとつは「高額領地を踏んでしまって負ける」、もうひとつは「目が低くて周回に時間がかかる」。
前者については「奪えるようにブックを組む」あるいは「ダイス目をスペルで固定して運の問題でなくする」のが適切な改善策であって、ゲームの側でやれることがあるとすれば戦果でブックの解析を絡めてアドヴァイスを出す程度だが、後者は要するに「スゴロク風であること」が根本的に抱える問題と言える。
スゴロクというのは要するにレースゲームだから、基本的には「大きい目を出すほど良い」。カルドセプトでも周回ボーナスなど「早く回る方が有利」な面はたしかにあるので、余計にその感覚を強めているのだが、しかしカルドセプトの本質は実のところ陣取りと資産運用のゲームであり、周回は単に手持ちの魔力が増える程度の効果しかない。この「見た目の印象と実態に乖離がある」のが、ダイス目(が小さいこと)に必要以上の悪印象をもたらしているように思われる。

実際にはカルドセプトでの小さなダイス目はむしろ連鎖を得やすくなる分だけ有利に働くとすら言え、(飛び越えたい場所を踏んでしまう時以外では)悪いものではない。特にラウンドゲインがある分だけ魔力のやりくりが楽になったリボルトではその傾向が強い。
いっそ「小さい目の時には魔力ボーナス」とかあれば目の印象も違うのかも知れないが、それでは小さな目が強くなりすぎてしまうか。
あるいは周回をダウン回復・HP回復効果のみにして周回ボーナスの概念をなくし、その分を分散してラウンドゲインにしてしまうというのはアリかも知れない。

戦闘問題

これもデザイン上の誤謬なのだが。
前述の通り、カルドセプトは陣取りと資産運用のゲームだ。「連鎖を得ること」「連鎖した土地のレベルを上げること」が最も重要な要素で、ある意味それ以外はすべて装飾に過ぎない。
しかし楽しさの比重は明らかにブック構築にあり、ブックの機能の大半は戦闘にある。だからどうしても「戦闘力の高いブック」を組んでしまいがちだし、またそれが時折有効に機能して高額領地を奪って逆転したり拠点防衛でがっぽり分獲れたりという成功体験をもたらすものだから、「もっと重要なこと」に気付きにくく、だから「なかなか勝てなくて苛々する」ことになる。

ここはチュートリアルの不足が問題であるような気もする。前作でも今作でも、「連鎖を作れ」「レベルを上げろ」ということはもちろん言われているのだが、「連鎖がどれだけ重要か」は軽くスルーされてしまう。
レベルアップコストが土地価格の8割になった今作でこそ「単領でもレベルを上げれば総魔力が(投入した魔力の25%だけ)増える」のだが、前作までは単領では一切増えなかったし、その一方で連鎖は「2連領でも価値は1.5倍」「4連領なら2倍」と劇的だ。たとえば単領では1Lv土地(100G)→5Lv土地(1600G)には1200Gの投資に対し総魔力の増加はたった300G(投資分の1/4)に過ぎないが、2連領になっていれば土地価格は150G→2400Gになるので実質魔力増加は+1050Gと、単領の3倍以上になる。3連なら土地価値は1.8倍、5連領にもなれば2.2倍だから増加割合は更に増加するわけで、単に「通行料を高める」「防御を固める」以上に大きな意義がある、という点はもっとプッシュされるべきだろう。