カメラ界隈ではよく、「このメーカーはこういう写真に向く」という話が出てくる。よく聞くものとしては「キヤノンは人肌の色味が綺麗」「ペンタックスは葉の緑が鮮やか」「富士フイルムの発色はフィルムっぽさに定評がある」など。
その割には、なぜか色の比較事例をあまり見掛けない。そんなに違いがあるなら、同条件で撮り比べた時の差を見せるなどの企画があって良さそうなものだ。
こういう比較って、個人ではちょっと難しい。コンデジならともかく一眼レフやミラーレスだとカメラに合わせてレンズも揃える必要があるので複数メーカーのカメラを持つ人は少なく、2機種ぐらいならば比較のしようもあるけど各メーカー取り揃えてとはなかなか行かない。
逆に、専門誌こそ比較記事を書いて然るべきだと思うのだが、意外にも事例をほとんど見付けられない。
- 【保存版】人気ミラーレスカメラを徹底比較! 2つのシーンで「画質」を検証【実写編】 | GetNavi web ゲットナビ
- the360.life - ニコン、キヤノン、ソニー…ブランド別に写真はココまで違うんです!
ぐらいか。どちらも条件をなるべく揃えたサンプル画像を比較できるのだが、なにぶん画像自体が隣接していないので些か比較しにくい。
ないなら作ろう。
自分で持っているカメラだけではできることにも限度がある、が「既にある情報を借りて再構成する」形でなら、やりようもあるだろう。
というわけで、デジカメレビュー記事から画像を引用する形で比較してみることにした。なるべく公平を期すため、レビューは各メーカー一眼レフまたはミラーレス3機種(ただしEOS R/RP、ニコンZ7/Z6、LUMIX S1/S1Rのような発売時期の近い兄弟機については作画傾向にあまり差が生じないと考えられるため、新しい方1機種のみとした)、新しい方から記事を辿り、すべての記事で共通する作例である「屋外(ガスタンクの写真)」「屋内(人形の写真)」を並べる。
引用元はすべて荻窪圭 - ITmedia 著者別インデックスより。同条件で撮り続け、比較可能な記事を書いてくれるライターの荻窪氏に感謝したい。
社名 | 機種名 | 屋外 | 屋内 |
---|---|---|---|
オリンパス | OM-D E-M1X | ||
オリンパス | PEN E-PL9 | ||
オリンパス | OM-D E-M10 mark3 | ||
キヤノン | EOS kiss X10 | ||
キヤノン | EOS RP | ||
キヤノン | EOS kiss M | ||
ソニー | α9 | ||
ニコン | Z6 | ||
ニコン | D850 | ||
ニコン | D7500 | ||
パナソニック | LUMIX G99 | ||
パナソニック | LUMIX S1R | ||
パナソニック | LUMIX GF10/90 | ||
富士フイルム | X-T30 | ||
富士フイルム | GFX 50R | ||
富士フイルム | X-T3 | ||
ペンタックス | KP | ||
ライカ | CL |
ソニー、ペンタックスについてはレビューが少なく、古い時期で作例の異なる記事になってしまうのでサンプル3機種のピックアップを断念した。
使用するレンズの画角やF値が違ったり、天候の差や撮影モードの差などもあってすべて同条件というわけではなく、万全の比較というわけには行かないが、それでもメーカーごとのクセはなんとなく見えてくる。
オリンパスはE-M1Xとそれ以外の機種で空の発色が大きく異なるが、これは入門機の方が記憶色に調整するiAUTOだから。空を判定して彩度をかなり強調しているようだ。その影響もあってか人形の肌色も若干黄色〜緑に寄っている感があるが、逆にE-M1Xの肌色はほんのり赤味がかって血色が良い。
キヤノンはマゼンタ寄りの色味と言われるが、ここでもその傾向が明らかに見て取れる。ホワイトバランス自体がマゼンタに寄せてあるというか、白はちゃんと白なんだけど少し明度の下がった雲色なんかはほんのりマゼンタがかっている。その分だけ、たしかに肌の色は雰囲気がある。
ソニーは1機種からの判断になるが、彩度控えめながら若干青みが強く出る印象。
ニコンは意外にも、発色がかなりコントラスト強め。空の色は天候の影響もあるのだろうけれども、人形も他よりパッキリして見える。
パナソニックはナチュラルな発色。35mm判のS1よりもマイクロフォーサーズ機の方がコントラスト強めだけれど、色味はニュートラルだ。
富士フイルムは結構こってりしている。オリンパスのiAUTOみたいに明度を上げてこないけど、明らかに他メーカーより空が濃い。
こちらも1機種しかサンプルのないペンタックスは、キヤノン同様に少しマゼンタ寄りに見える。葉の発色が良いと聞いていたけど、作例があまりそれに適した環境ではないため、ちょっとわからなかった。