軽くてコンパクトな三脚を探す

桜の季節である。




昼の桜も良いが、夜桜も撮りたい。そうすると暗いのでシャッタースピードを落とす必要が出てくる。必然的に、手持ちでは撮影が難しいので、三脚を導入することにした。

今まで三脚を持っていなかったわけではない。しっかりしたやつはひとつ持っているのだが、如何せん重くてデカいので家の中での使用ならばともかく、持って歩く気にはなれない。
だいたい、写真というのは一期一会だ。撮りたいと思ったその時に撮れる機材が手元にあるかどうか、は非常に大きい。だからこそ画質より携帯性を採ってマイクロフォーサーズを使っているのだし、三脚についても同様に「普段から携行できる」ことが望ましい。
色々と機材を持ち歩いてみて、つくづく重さが堪えることは身に沁みている。日常の鞄は肩掛けのメッセンジャーバッグだが、その中に500g弱のiPadと400g弱のカメラ、日によってレンズ1〜3本ぐらいが入っている。鞄と合わせてだいたい2.5kg前後、これぐらいならばまあ行動に支障はないが、あと1kgも増えると重さが肩にのしかかってきて体が痛くなってくる。
つまり欲しいのは、鞄にすっぽり収まって重量も1kgを切るような軽量三脚だ。

要求性能

求めるスペックとしては、だいたい次の通り。

縮長

なるべく短かくなるもの。具体的には、普段使用しているバッグのサイズが幅だいたい35cmぐらいなので、そこに収まる程度の長さ。多少長くても斜めにすれば収まりはするが、できれば横にしてすっぽり収まるのが望ましい。よって縮長35cm以内を目安として探す。

重量

なるべく軽いこと。可能ならば500g程度だと望ましい。重くても1kgを越えない範囲としたい。

伸長

屋外で立って使うことを想定しているので、テーブル三脚のような短かいものは無視する。目の高さにレンズを合わせようとすれば150cm以上の高さが必要になるが、そこまでとは言わぬものの1m前後は欲しい。

耐荷重

少なくとも望遠レンズ付きのミラーレスを載せるのだから、せめて800g程度は支えられる剛性と安定性が欲しい。

候補を探す

軽量三脚というのは意外に多くない。そもそも三脚を必要とするのは主にレンズ交換式の大型カメラで、その重量を最上部に載せる以上はトップヘヴィで転倒しないよう三脚側にも相応の重さが求められる傾向があり、逆に軽い三脚の需要は主にスマートフォンなどを用いてセルフタイマーで撮るような方向がメインとなるため脚の短かいテーブル三脚で足りてしまう。
「小型のミラーレスと軽量三脚を携帯する」という需要自体が少ないために製品の数も少なくなってしまうようだ。
それでも、いくつか候補を探し当てたので、軽い順に紹介する。

自重500〜600gの超軽量三脚

とにかく軽さを最優先した選出。その分だけ他の性能には妥協があるが、他カテゴリに比して200gぐらい軽いというのはそれだけでアドヴァンテージだ。

SLIK 450G-8

伸長
900mm
耐荷重
1kg
縮長
315mm
自重
510g
雲台
3Way

軽量コンパクト三脚の大本命。縮長わずか315mmなので鞄に入れて邪魔にならず、重量510gという驚異的な軽さで負担もない。
その代わり耐荷重1kg、伸長900mmとやや物足りなくはある。スペックに妥協してでも軽さを求める人向け。

KING Fotopro DIGI-204

伸長
~1200mm
耐荷重
1.5kg
縮長
380mm
自重
570g
雲台
3Way

SLIKの450Gに比べ縮長が長く鞄への収まりには不安があるものの、その分だけ伸長には余裕がある。また自重はほとんど同じなのに耐荷重は1.5kgにまで増えており、そしてなんといっても安い。この金額なら駄目で元々、気軽に手を出しやすい。

SLIK Baby

SLIK 三脚 ベビースリック GR 4段 旅行用三脚 215388

SLIK 三脚 ベビースリック GR 4段 旅行用三脚 215388

伸長
970mm
耐荷重
2kg
縮長
360mm
自重
600g
雲台
2Way

ほとんどが黒一色の三脚界隈にあって水色、黄緑、ピンクのパステルカラーが特徴的な軽量三脚。自重600gながら耐荷重は2kgと、結構余裕がある。ただ雲台は縦向きに開けない2Wayなので使い勝手はやや劣る。

縮長を抑えたコンパクト三脚ファミリー「エアリー」シリーズ

縮長のコンパクトさを念頭に作られた三脚で、わずか300mmから伸長1014mmという伸び率が魅力的。同じSLIKの三脚としては450G-8に比べやや重いが、これは削り出しの金属球を用いる自由雲台の採用が影響しているものと思われる。脚を大きく開くことができるため最低地上高158mmでのローアングル撮影も可能で、運用の自由度は高い。流石にLサイズでは縮長40cmを越えてしまうが、その代わり伸長1543mmのアイレベル撮影が可能。

SLIK エアリーS100

伸長
1014mm
耐荷重
1.5kg
縮長
300mm
自重
750g
雲台
自由雲台
SLIK エアリーM100

伸長
1241mm
耐荷重
1.5kg
縮長
350mm
自重
895g
雲台
自由雲台
SLIK エアリーL100

伸長
1543mm
耐荷重
1.5kg
縮長
417mm
自重
980g
雲台
自由雲台

機能性を突き詰めた超コンパクト三脚

パイプ断面の形状により、ひねるだけで固定できる脚ロック機構を持ち、素早くセッティング可能な三脚。またロック金具が省略された分だけ縮長を稼ぐことができ、300mmを下回る驚異的な縮長を実現している。コンパクトさを求める場合の本命。

Velbon UT-3AR

伸長
1355mm
耐荷重
1.5kg
縮長
295mm
自重
786g
雲台
自由雲台

耐荷重2kg以上

軽量三脚の中では比較的重いカメラを支えられるカテゴリ。使うカメラによっては再軽量だけが最適解とも限らない。

SLIK スプリント MINI II

SLIK 三脚 スプリント MINI II GM N 4段 旅行用三脚 106556

SLIK 三脚 スプリント MINI II GM N 4段 旅行用三脚 106556

伸長
1090mm
耐荷重
2kg
縮長
350mm
自重
780g
雲台
自由雲台

エアリーS100ほど縮長がコンパクトでないが、その分耐荷重に余裕がある。こちらも脚を開いて最低地上高150mmのローアングル対応。

KING Fotopro X-Aircross 1 Carbon

伸長
1315mm
耐荷重
2.5kg
縮長
380mm
自重
820g
雲台
自由雲台

カーボン三脚。耐荷重2.5kgと比較的余裕のある方だが、縮長380mmとやや長め。

KING Fotopro X-Aircross 1 Aluminum

伸長
1315mm
耐荷重
2.5kg
縮長
380mm
自重
960g
雲台
自由雲台

Fotopro X-Aircross 1のアルミ版。重量がわずかに増えた代わりに金額は2/3。65gの重量差にこだわるのでなければこちらの方が手軽ではある。

Manfrotto Compact Light

伸長
1310mm
耐荷重
1.5kg
縮長
398mm
自重
816g
雲台
自由雲台

耐荷重が足りていないが、他のカテゴリに入れるに入れられなかったので暫定的に。
どうにも競合に対して優位性が見られない微妙な性能。

高級カーボン三脚

このカテゴリは重いカメラを支えるに充分な剛性と安定性を、それにしては極めて軽くコンパクトに持ち運びたいという、プロ向けの機材である。その分だけ価格も相応に高価い。

SIRUI T-1205X

伸長
1305mm
耐荷重
10kg
縮長
340mm
自重
900g
雲台
別売
GITZO GT0545T

GITZO 三脚 トラベラー 0型 カーボン 4段 脚のみ GT0545T

GITZO 三脚 トラベラー 0型 カーボン 4段 脚のみ GT0545T

伸長
1225mm
耐荷重
10kg
縮長
366mm
自重
1055g
雲台
別売

選定

縮長が35cm以内に収まるのは軽い順にSLIK 450G-8、SLIK エアリーS100、Velbon UT-3AR、SLIK スプリント MINI II、SIRUI T-1205Xの5本のみ。
もっとも軽い450Gは次点のエアリーS100の2/3しかなく、この点で圧倒的といえる。その代わり耐荷重も2/3になってしまうので、それを許容できるかどうかが分かれ目だろう。
逆に耐荷重1.5kgは欲しいということになればエアリーS100とUT-3ARには重量も縮長もほとんど差がないが、それだけに「ひねるだけで脚を固定/解除」というクイック操作のUT-3ARに軍配が上がる。
耐荷重2kg以上の枠ではコンパクトさを採ってSLIK スプリント MINI IIか耐荷重の高さと伸長を採ってFotopro X-Aircross 1 Aluminumか。重量ほぼ変わらず価格が1.5倍のカーボン版にする理由は薄い。

追記:ダイソーの500円三脚

rocketnews24.com

伸長
1050mm
耐荷重
2kg
縮長
350mm
自重
335g
雲台
3Way

SLIK Babyを軽くして雲台を3Wayにしたようなスペック。使い勝手に妥協はあるものの縮長・伸長・耐荷重ともきっちり要件を満たし、しかも自重は断トツの335g。なにこのダークホース……
あまりに安く、あまりにスペックが良いので、実際に公称性能を発揮するかどうかが疑わしくはある。