NERFでSci-Fiなライフルを作る


NERF HyperFire AssaultRifle mod.

格好良いライフルの画像を見掛けた。
www.thefirearmblog.com
どうやらAR-15をベースにしたカスタムモデルらしい。銃にはあまり詳しくないが、原型である「ゴルゴ13の銃」M16とはずいぶんイメージが違う。どうやらAR-15には様々なカスタムパーツが作られており、これもそういったパーツを用いたビルドの一例らしい。
魅力的なこのライフルの形状を、NERFで再現してみようかと思い立った。

素体を決める

まずは改造のための素体にすべく、なるべく形状の類似性が高いブラスターの選定を行なう。
デザイン上のポイントは、大きく分けて4点。まずグリップ前方に下挿しのドラムマガジンがあること、それからグリップ後方に親指を入れる穴があり下方はショルダーストックまで繋がった形式であること、ショルダーストックが箱型であること、そして本体と高さを揃えたハンドガード付きの銃身が備わっていること。
このうち、グリップまわりの形状についてはどうにでも改造のしようがあるので優先度は低い。ショルダーストックも自作が不可能というわけではないものの、グリップよりも材料を必要とするため難易度が上がるので、できれば製品の形状に頼りたい。本体と銃身の位置関係については発射機構との兼ね合いが重要になる。とりわけカセットマガジンを含む発射機構については、改造はほとんど不可能と思われるので最優先である。

というわけで、まずは発射方式から選定してゆく。とはいえカセットマガジン方式のブラスター自体は決して少なくないため、選択肢は広い。ブルパップ方式のものを除外しても50では効かないぐらいの種類があるはずだ。
ただ、ドラムマガジンの入手も考え合わせると選択肢はかなり限られてくる。これまでに国内で正規販売されたブラスターの中で、ドラムマガジンが附属していたのはAlpha Trooper CS-18、Raider CS-35およびRampage、RhinoFire、HyperFire、Infinusの6種しかなく、このうちRaider CS-35/Rampageは形状以前にカセット挿入口が横向きなので条件が合わないし、RhinoFireは2連の大型ブラスターであり、入手難易度も価格も高い上に改造向きとは言えない。Alpha Trooper CS-18は発売時期がELITEシリーズよりも前であるために入手が難しい(AccuStrikeシリーズとして再販されるらしいが、現時点では入手できない)。

残る2種のうち、Infinusはグリップこそサムホールスタイルではないものの、充分なサイズのストックを持ち、グリップエンドを伸ばして接合すれば雰囲気は悪くなさそうだ。またエクステンションバレルを装備可能であるため、改造コストが低く抑えられる可能性がある。反面、自動装填システムを持つため内部空間に余裕がなく、とりわけ銃身位置より上側に張り出す装填機構の関係で本体の高さを抑えられないのは厳しい。

HyperFireはサムホールタイプのグリップと大きな箱型ストックのバランスが良いこと、また銃口の位置が本体上端に近いため高さを抑えやすい点で扱いやすい。ただしバレルが短かく、しかも純正のエクステンションバレルを取り付けることもできないため、何らかの改造が必須となる。本体とバレルの高さを合わせることが困難でストックの改造難易度も高く、流用可能なエクステンションバレルも持っていないため全体に改造コストが高くなるInfinusよりも、グリップまわりを少しとバレルの自作程度で済みそうなHyperFireの方が素体には適しているようだ。

改造計画

素体が決定したので、改造指針の策定と構想に移る。
最初にHyperFireの分解画像を探し、中身のレイアウトを確認する(こういう時はだいたいブラスター名+mod、で画像検索すると分解画像が探せる)。
imgur.com
画像を見ると銃口の下、マガジンキャッチより前の部分はほとんど空洞であることがわかる。この部分がデザイン上の大きな特徴ではあるのだが、今回はHyperFireらしくない形に改造したいわけで、ここはばっさりカットしよう。またグリップ前方を覆うハンドガードも、マガジンリリースボタンより下はカットしていい。
ショルダーストック内の電池ボックスより下についてもカットは可能だが、ネジ穴は残しておかないとフタが固定できなくなる。
逆に難しそうなのがグリップ後方からショルダーストックへの接続部だ。ここはグリップ中程から伸びているが、元ネタのデザインでは下方からストック下に接続して三角形のシルエットを形作っており、ここがデザイン上の大きなポイントになっている。従ってカットして繋ぎ直したいところだが、一方でこの内部にはトリガースイッチに繋がる配線が通してあるため、迂闊にスペースを潰すわけには行かないし、カットの際にも配線を切らぬよう注意せねばならない。
結局、ここについてはスペースを確保しつつサムホールを拡大する方向で行くことにした。
銃身は百均の塩ビパイプで自作する。

加工1:本体フレームのカット

まずは前方の銃口下部空洞を切り落としてゆく。射出用フライホイール部分が若干露出するが違和感は少なく、周辺を適当に埋めれば問題なさそうだ。
次に、グリップ前方のハンドガード部を切り落とす。マガジンリリースボタン部分については内部の補強曲線部に合わせてカットして残し、グリップ下方は直線的に断ち落とした上で曲面に合わせて削る。
グリップ後方部分は、サムホール部分の前側上方を残しつつ前側下方〜後ろ半分を切り取り、分割した上で位置をずらして貼ることにより穴を広げつつ配線スペースを確保する。また下のアーチ部分にはプラ材を接着してグリップ下に増設する直線部の基礎にする。
継ぎ接ぎの間をパテで埋め、削って形を整える。ここで直線的に平滑に、工業製品らしく加工できるかどうかが仕上がりに影響するので入念に磨く。
ついでに電池ボックスのフタも小改造。ネジで止める形式だと電池交換が面倒なため、ネジ穴を削って百均の小型強力磁石を埋め込み、フタを磁力で固定するようにした。
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パテだけで形状を作り込むと細かいディティールを作り込むのが難しくなるため、ドレスアップに流用可能なパーツを物色する。
百均でこんな三角コーナーを見付けた。
kokubo.co.jp
台形の穴が連続した網形状はなかなかSFガジェットめいて使い勝手が良さそうだ。惜しむらくは三角形で左右非対称のため、両面に等しく使うには不向きなことだが……まあ左右の面を見比べることはあまりないので良しとしよう。
網部分だけを切り出す。硬度の低いポリプロピレンなのでカットはそれほど難しくない。
これをグリップ下方に貼ってみた。周囲をパテで埋めて形状を整える。

加工2:バレルの延長

続いて短かい銃身を延長する。元の銃口そのままではパイプを固定できないので、射出機構に直結する内側パイプだけ残し、外側には百均の塩ビパイプを組み込む。
もちろんこのままでは格好悪いし安定しないので、バレルを支える部分を作る必要がある。実銃の場合は銃身が過熱し素手で触れなくなるので、外側に熱を伝えにくいハンドガードを取り付けるが、そのようなイメージでアウターを組みたい。他のNERFエクステンションバレルでも、だいたいは銃身とハンドガードの二重構造になっている。
いい感じに網状構造のパーツが入手できればいいが……と百均を巡ったら、直径5mmぐらいの穴が斜め45度の網状に並んだ小物入れを見付けた。硬度の高いスチロール樹脂だ。
item.rakuten.co.jp
これをカットしてバレルの左右に並べよう。あとはバレルの根本と先端で固定すればいい。
以前にHammerShotの外装パーツをバラした時の余りパーツがサイズ的にもデザイン的にも丁度良かったので、これを小物入れの側面と接着して外装のベースとする。下半分は一度カットした上で前方にずらして接着することで「謎の斜めスリット」が発生し、SFっぽさが強調された。さらにグリップにも使った三角コーナーの網をここにも配置してみた。ただ、左側面には丁度良いのだが右側面では反転して角の丸めが行なわれていない面を表にせざるを得ないのが残念だ。
バレルにするパイプには、一定間隔で穴を空けておく。これはダーツが押し退ける空気を逃がすための穴で、少しでも空気抵抗を軽減して初速の低下を防ごうという試みだ。

延長バレルの外装は銃口の根本でネジ止めしてしまうことにした……のはいいが、実際に取り付けてみたところ、思ったより取り付け位置が低い。元にしたライフルの格好良さのひとつは銃本体の上面からバレルのハンドガード部までがツライチであることなのだが、出来上がったシルエットはそうなっていない。
NERFの電動ブラスターはダーツを上下からフライホイールで挟んで射出する形式を取るため銃口より上側に機構が突出することになり、どうしてもバレルが本体上端より一段低くなってしまうのだが、それが露骨に出てしまった格好だ。
そこで、バレルの上側に高さを水増しするパーツを増設してシルエットを合わせることにする。
本体から切り落としたパーツの一部がドットサイトっぽい形状に見えるので、これをバレル上方に取り付けてみる。また、本体との間を繋ぐためにバレルを支持する肋材を取り付けることにした。これには百均のふきん掛けを流用している(百均材料ばっかりだ)。
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加工3:アクセスドアの改造

HyperFireの発射機構は突起の付いたベルトが回転してダーツをフライホイールに押し込む方式だが、このベルト駆動部はダーツクリップ直上にあり、ジャム時のアクセスドアを兼ねている。しかし歯車部分のカヴァーが後方の駆動歯車と接触しないようにするため、ドアの開閉角が抑えられておりアクセスが悪い。これを改善するため、開き角を大きく取れるように改造を試みる。
ヒンジの開き角を抑える要因となっているのは、ベルト駆動歯車を覆うカバー部分と、本体フレームの接触だ。これを削って90度近くまで開くようにしてしまおう。
ただ、これによってベルト歯車部分が剥き出しになってしまうという問題も生じる。塵を噛み込んで歯が潰れるのも困るが、回転する歯車に触れて怪我をするのも困るので、ここに可動式の覆いを着けることにする。
ヒンジの後方、青いフレームの波状部には何の部品もなく、僅かながら隙間を確保できそうだ。ここに収納されるようなスライドドアを取り付けられないだろうか。
三角コーナー網の切れ端がちょうど良いサイズだったので、ネジ受け部の上を少し削って空間を作り、それに合う幅に切り取った網を入れてみる。行けそうだ。
問題はこのカバーをヒンジにどう固定するかだ。最初、柔軟性のあるフィルムを接着してみたのだが、あっさり剥がれてしまった。網に軸を接着してアクセスドア側に受けを作ることでヒンジにすることも考えたが、接着部分がすぐ外れそうな気がする。
そういえば網の方には穴があるわけで、アクセスドア側にも穴を空けて結んでしまえば……
幸い、ドアの上方はただの空間なので、ここに小さな穴を空け、細い結束バンドを通して網を結び付けることにした。仮組みしてみるとするりとドアが隙間に収まり、効果的に歯車部分を覆い隠してくれるし、意匠的にも悪くない。
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加工4:タクティカルレールの増設

HyperFireにはストックやバレル取り付けのための機構だけでなく、タクティカルレールも本体前方の1箇所しかない。スコープを取り付けるには位置が悪いし、他のオプションを付ける余地もないので、レールを増設する。
5x15mmのスチロール樹脂製アングルを2枚重ねて貼り合わせたものを、長辺で背中合わせに接着するとT字型の部材が作れる。これが丁度タクティカルレールぐらいの幅になる。
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固定ツメを滑らせる溝と引っ掛けるラッチは作れないが、代わりに前方から差し込んでツメで止まるように運用すればいいだろう。貼り合わせた下の材を、上の材の幅に合わせて少し斜めにカットすると差し込みやすい。

アクセスドアの上方にあったアイアンサイトは切除し、代わりにタクティカルレールを取り付ける。アクセスドア上方には空間があるので、ここをカットしてレール基部を差し込んで固定する。レール部材側は空間の幅ギリギリに作っておいて、アクセスドア側はそれより狭く中央部分を切り取り、レール部材の左右に切り欠きを入れて嵌め込めば、ガタツキもなくぴったりと固定される。ただアクセスドアのパーツが中央分割でないため左側に隙間ができるので、そこは端材で埋めてしまう。
これにより従来よりも後方、ストック頬を付けて構えた時に眼前に来る位置でスコープを取り付け可能になった。

また、延長バレル下部にもレールを取り付ける。実銃のアタッチメント用に用いられるピカティニーレールの場合は凹凸を設けてパーツの固定位置を調節できるようになっており、それを模したタクティカルレールにも凹凸のディティールが付けられていることが多いが、自作レールでは幅を調整して凹凸を作るのは些か難しいものがあるので、代わりに肉抜きでディティールを増やしてみた。

加工5:フォアグリップの制作

延長バレルのパーツとして流用したHammerShotのパーツには、下方にトリガーガードを形成する突起がある。これをどう処理するか考えた結果、HyperFireから切り取ったハンドガードをここに取り付けてフォアグリップを作ることにした。未来的フォアグリップとして人気の高いHera ArmsのCQRを参考に、パテを盛って形を作る。
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グリップ後方は斜めに伸ばしたアームで本体フレームに接合し、剛性を確保した。
ここはモデルとした銃にはないパーツであり、シルエットを大きく変えてしまう部分なので悩みどころではあったが、下面のディティールアップを優先することに。

その他、ドラムマガジン側面を切り抜いてメッシュ状にするなどの改造も考えたが、ダーツの滑りに干渉してジャムの原因となりかねないため断念した。

塗装

全体をマットブラックで塗装し、明度を抑えたグレーを中心として塗り分ける方向でプランを立てる。とはいえ、グリップまわりにミディアムグレーを使うと他の塗り分けが難しい。とりあえず金属パーツを黒を混ぜたメタルカラーで塗り、ストックとハンドガード外装部をダークグレーで塗ってみた。
なお全体の塗装にはマットな質感を期待して黒板用スプレーを使ってみたのだが、これが乾燥に半日かかる代物だったために下塗りだけで数日ががりになってしまった……やはり模型用を使うべきだったか。

近くで見ると造形にも塗装にも粗が目立つが、遠目にはなかなか良い雰囲気のSF銃に仕上がったので満足。
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