環境型水族館「アクアマリンふくしま」

福島県いわき市の水族館「アクアマリンふくしま」へ行ってきた。
www.aquamarine.or.jp
シーラカンスの研究などでも知られる、環境展示・体験学習型の水族館である。

交通

水族館の最寄駅であるJR常磐線泉駅までは、上野駅から特急ひたちで2時間ほど。運賃3670円+特急券2200円で行ける(もちろん普通列車のみでも行けるが、3時間半ほどかかる)。
特急には停車駅の少ない「ひたち」と停車駅の多い「ときわ」があり、上野駅からはひたちが毎時丁度、ときわが毎時30分に出ている。
当初は8時発に乗って10時過ぎぐらいの到着を予定していたのだが、上野駅ナカのecuteは8時にならないと開店しないため、朝御飯を買う時間もない。駅弁の売店ならば6時半から開いているしコンビニで済ます手もないではなかったのだが、それは些か味気ないということで、結局ecuteが開くのを待って弁当を調達し、9時の便で行くことにした。
私が購入したのはeashionの牛焼肉・ハンバーグ弁当。2種類の味が楽しめて満足感が高い。
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(ところで弁当販売店の公式サイトを見たが「メニュー」のすべてがnot foundになってるのはどうかと思うので、ちゃんと整備していただきたい)

特急ひたちは全席指定であるが、席を予約しなくても乗ることはできる。座席上の荷物置き場にランプが点灯しており、緑は現区間が予約済みの席、黄色は次の区間から予約客のいる席、赤は空席であるため座っていても良い(もちろん、途中で予約客が乗ってくる場合はどかねばならないが)。なお行きは空席もあったが帰りの便は水戸以南で全席満席であったので、予め座席の予約をおすすめする。
上野から水戸までの1時間あまりはノンストップ、ここまでは実に特急らしいのだが水戸を過ぎると途端に停車駅が増え、1〜3駅ごとに停車するようになる。特段乗換駅でもない上下2面ホームの小さな駅にも停まる。
まあ泉もそんな感じの駅の一つで、ここに停まってくれるからこそ比較的短時間で水族館まで行けるのだが。
Google StreetViewで駅舎を見ると結構立派な感じを受けるが、駅前にあるのはバス停とタクシー乗り場のみで賑わいが感じられない。駅自体もホーム2面のみ、売店もなく、それどころか改札内に乗越清算/Suicaチャージャーもなかったのは驚いた。
利用者の最も多い通勤時間帯の7時台を除けば、20〜30分に1本の電車しかない。特に特急待ちの場合は最大1時間近く待つことになるので、それなら時間潰しを当て込んだ店がありそうなものだが、地元は完全に車社会なのでそういう需要に乏しいのだろうか。

ここから新常磐交通バスで最寄りバス停である「イオンモール小名浜」へ。なおバスは1時間あたり2本ほどしかなく、列車の発着時間と連動もしていない。またSuicaなど交通ICカードには対応しないため整理券を取って小銭で支払う必要がある。運賃は大人270円。
バスで走ること15分ほど、イオンモール前のバス停に到着する。ここは差し渡し300mほどもある大型の複合商業施設で、近隣にある漁港の魚市場/食堂街である「いわきら・ら・ミュウ」、それに「アクアマリンふくしま」を含めた一角がこの付近で一番のレジャースポットということになる。
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バス停からイオンモールに入り2階へ上がると、車道を越える橋を渡り港側へ出ることができる。港側に向かって右側に見える湾曲したガラス張りの建物が、目指すアクアマリンふくしまだ。
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館内

入るとまずは「縄文の里」と題したビオトープをぐるりと回るトンネルがある。ただ、現時点ではビオトープを外側から眺めるのみで、途中いくつかの生物展示がある以外にはあまり見るべきところはない。
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トンネルの終わりにユーラシアカワウソの水槽があり、それを抜けると本館に続く道に出る。面倒ならこの一角は迂回して直接本館に向かっても良い。
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本館は港に面する左側が一面、湾曲したガラスで覆われている。右側はコンクリートの箱型構造だが、その上側を覆うようにガラス面が伸び、屋上は日当たりの良い温室状になっている。
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本館エントランスから、まずは古代生物のコーナーを抜ける。
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最大の板皮魚類ダンクルオステウスの模型は迫力だ。
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化石を見ながらエスカレーターで屋上温室部分へ上がる。
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屋上に広がるのは、ミスト散布により湿地帯を形作る「ふくしまの川と沿岸」コーナー。
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長い森の折り返しで、目の前に飛び込んでくるのは「潮目の大水槽」の水面近くを駆け巡るイワシの群れだ。
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この水槽は途中で区切られており、左側が黒潮、右側が親潮になっている。北海道の南東から本州の太平洋岸沿いに南下してくる親潮と、房総半島から北上してくる黒潮とがちょうどぶつかり合う「潮目」が福島県宮城県の沖合あたりに位置し、それが水槽の由来である。

親潮を過ぎると、その向こうには北の海に暮らす水鳥や海獣の展示水槽がある。入館前から響いていた吠え声は、ここにいるトドのものだ。
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さて、開放的な屋上から館内に戻り、今度は漁業などに関する展示の並ぶゾーン。ここにはクジラの骨や南極の氷、ニホンウナギの調査など、生きた魚からちょっと離れた(やや地味な)内容が多い。
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そこを抜けるとふたたび屋上の、今度はアジアの水辺コーナーへ。
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熱帯植物の間を抜けると、そこは珊瑚礁の水槽である。温かな海に棲む色とりどりの魚が目を引く。
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その先にはふたたび潮目の大水槽。
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以前は左右の階段から直接降りられたが、今の順路は一旦この水槽前を通過することになっているようだ。何故かここには寿司屋があり、潮目の握りを食べることができる。
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寿司屋の先にはオホーツク海コーナー。
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ヒラヒラと細い触腕を棚引かせるのはドフラインクラゲ。
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ぽってりと丸いのはシロクラゲ。
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クリオネは小さくてよく動くので撮るのが大変だ。

さて、潮目の大水槽まで戻ると、潮目に当たる隔壁部分が三角の通路になっているのがわかる。ここからはふたつの水槽を一度に見ることができるだけでなく、通路の壁がプリズムや万華鏡のような効果を生む、なかなかの写真スポットでもある。
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三角形のトンネルを抜けた先には「ふくしまの海」、ここは大陸棚の先にある深度200m以上の深海水槽エリアである。
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ヨシキリザメやギンカガミ、タカアシガニにキタミズクラゲなど、青暗い水の中にほのかに浮かび上がる生物の姿は、人の目には充分な明るさだがカメラに収めるには厳しいものがある。
暗いゾーンを抜けて情報エリアの先へ進むと、南国の明るい浅瀬水槽があり、色鮮やかな熱帯の魚を真横や真上から見ることができる。
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下へ降りるとミュージアムショップとレストラン、他にシアターや展望塔も。
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ここから左へ進み入口側へ戻ってもいいが、今回は右手側の体験学習エリア「アクアマリン えっぐ」へと向かう。ここは子供にも見やすいように背の低い、周囲からぐるりと見ることのできる小さめの水槽が並び、魚だけでなく昆虫や蛇なども展示されている。
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外へ出ると釣り体験や磯の生物に触れられる蛇の目ビーチ、ぐるりと外周を通り抜ければビオトープの先にふたたび館内へ戻る入口がある。
この先エントランスホールには金魚展示エリアがあったのだが、今は改修のため撤去されている。
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順路の最後はエントランスホール中腹にあるシーラカンス展示エリア。
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タマカイはスズキ目の魚で、シーラカンスの属する肉鰭綱とは4億年前に分かれた別グループの魚だが、その中では形態・習性ともシーラカンスに似ているため、ここで展示されている。
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シーラカンスの標本(インドネシア種・アフリカ種とも)、
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絶滅した大型シーラカンスの化石やヒレの動きを模したロボットなども。

外へ出るとクウェート・ふくしま友好記念庭園の先にフェネック館が。
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残念ながらここも現在は改修中だ(金魚はこちらに移動するらしい)。

撮影

今回は水族館内の撮影を前提にカメラをセッティングした。
水族館は全体的に暗いので、オートで撮るとシャッタースピードが遅くなりがちだ。しかし水槽内には水の動きがあり海藻や水棲生物もじっとしてはいない。特に魚は結構素早く動くので、シャッタースピードはなるべく早くしたい。そこで画質の荒れには目を瞑り、ISO感度上限を高めに設定してISOオートで撮ることにし、シャッタースピード優先モードで1/200〜1/250ぐらいにしておく。これで手ぶれや被写体ぶれは大体防げるはずだ。
もちろん、ISO感度は低めに撮れるに越したことはないのでレンズも明るいものを使う。今回は小さな水槽に寄って撮ることも考慮して標準画角の30mm F2.8マクロと寄れる中望遠の42.5mm F1.7を選択。

いつもiPhoneで撮影する妻は流石に水族館では撮れない範囲が広いと思われるので、明るくて130gと軽い42.5mmは、小さくて200gしかないLUMIX GM1に装着して彼女に貸すことにする。ストラップ込みで重量たった360gなので、2台持ちでも負担になりにくい。
ズームできないので撮影範囲の調整には戸惑っていたようだが、「流石にiPhoneより綺麗に撮れる」と満足してもらえたので持って行った甲斐があった。
ただ、暗いエリアのクラゲを撮ろうとした時にAF補助光が水槽に反射してピントが合わない問題があった。補助光を切ってクラゲは撮影できたが、より暗い深海エリアではコントラストAFの限界域を下回りまともにピントが合わなくなってしまった。この辺は低感度に弱いマイクロフォーサーズの限界だろうか。
もっと明るいレンズが欲しくなるような気もするが、F1.2シリーズでは高価な上に最大撮影倍率が低いので寄って撮りたい時には使えないし、それ以上に寄れるレンズはF2.8からとなる。それを考えると最短31cm(撮影倍率0.4倍相当)の42.5mm F1.7は水族館用にはベストチョイスかも知れない。

ピントの問題だけでなく、水族館の撮影では水と水槽による屈折が問題になる。真正面に近い角度で捉えないと、ピントが合っていても収差による色滲みなどでぼやけた写真になってしまう。

食事

漁港の付近だけに、この付近には海鮮系の食堂が多い。地元の名物料理はどうやらカジキらしく、イオンモールの橋を渡ったところにある「美食ホテル」はカジキ料理の店ばかりだった。
おすすめは「いわきら・ら・ミュウ」。ここは魚市場と食事処の複合施設なのだが、魚市場側では串焼きの店舗やその場で買った海鮮を焼いて食べられるバーベキュー場などもある。
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www.lalamew.jp
館内のレストランには海鮮丼や天ぷら、煮付けなどの店が並ぶ。その中の、刺身と煮付けの店「さかな処 まさ常」で食べたドンコの煮付けが絶品だった。柔らかい身もぷるぷるの皮も美味しいが、なんといってもとろけるような肝は一度ならず味わいたい。
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