SledgeFire(スレッジファイア)は、先込め式かマガジン式がほとんどのNERFの中では珍しい中折れ式の装填方式で、しかも専用カートリッジによりダーツ3発を同時発射するという、先例のないショットガンである。
派手なカラーリングの多いNERFの中でも一際目立つ水色の本体色に専用カートリッジのホルダーを兼ねたショルダーストック、太く短い銃身。
面白い機構ではあるものの正直あまり私の好みではなく、むしろ同時期に発売され国内流通のなかったレバーアクション式のSlingFireの方が欲しかったぐらいだ。
しかし海外のMOD事例を見ていたら、グリップをMarverickのものに差し替えた画像が出てきた。黒ベースの塗り替えも含め、随分かっこいい。ショットガンとしては野暮ったく見えた太く短い銃身が、スタイルを変えたことで「バカみたいに大口径なハンドガン」に見えてくる。
よし、今度はこれを作ってみよう。ということで早速、ビックカメラの玩具売り場で最後の一つを確保。
パッケージはかなりデカい。本体そのものは45cmぐらいだが、その後ろに20cmほどのショルダーストックが接続されているので、箱サイズが70cm以上にもなる。
ショルダーストックはグリップエンドに差し込み固定されているのだが、自由に抜き差し可能なのかと思いきや、動かない爪状構造をがっちり挟み込んでいるので本体を分解しないと外せない。
分解はほとんど本体と銃身に二分された左右分割のいわゆるモナカ構造なので簡単だが、中身は結構複雑で、中折れのヒンジ根元から伸びたロッドがシリンダーに繋がっており、グリップ中ほどまで先端を押し込む機構になっている。そのぶん機構はユニット化されていてガワのみを改造するには楽なのだが、ともあれグリップを付け替えようと思うと機構に干渉しないよう注意する必要がある。
とりあえず、完全に切り離しての接合は強度的な不安もあるので、前方を残し後方を斜めに切り落としてみる。いい感じの大型グリップは持ち合わせがないので、とりあえず100均で適当なおもちゃを購入しグリップのみ切り出して重ねてみたが、イマイチしっくりこない。
ふと、「このスタイルってゴングに似てないか」という閃きがあった。
ゴングというのは、士郎政宗「アップルシード」に登場する、サイボーグやパワードスーツに打撃を与えるための大型ハンドガン……というかショットガンである。
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大日本技研に聞く:あなたにも参入可能!? サイドビジネスで始めるキャラクタービジネス 起業編 (2/5) - ねとらぼより、「INTRON DEPOT」(青心社刊)142ページの孫引用
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中折れ装填かショートマガジンかという差はあるが、基本的なスタイルはかなり似ている。いや待て、ショルダーストックのホルダーを本体下部に移植できれば……
というわけで、ピストルグリップ化計画は急遽、ゴング化に変更されることとなった。
まずはグリップを製作する。先ほどの画像を拡大印刷し、切り抜いて重ねてみたところ、およそ300%でほぼサイズが一致した。これを元にパテを盛って成形してゆく。
ショルダーストックは、分解しようにもネジ穴がない。どうやら接着されているようだ。仕方がないので分割線からカッターを差し込み無理やり剥がすことにする。
グリップとの接合部はディティールも良いし、切り落としたグリップ根元を使って脱着する構造にしようかと思ったのだが、接合パーツは脱着可能な形への改造が困難そうで諦めて根元から切り離す。一方、肩当てに挟まれていた部分はいい感じに強度とコンパクトさを両立していて、こちら側を接合した方が良さそうだ。図ったように斜めに切り上げられており、角度も合う。もしかして当初はこうする構想があったりしたのではなかろうか。
ヒンジ根元の膨らみに切れ込みを入れ、差し込んでみる。いい具合にパーツの隙間に挟まれて固定される。奥まで差し込めるように後端を切り落とし、差し込みの際に引っかからないよう角を丸める。
機構を阻害しないか、動作検証してみる。中折れによるコッキングには問題ない。ただ、発射後の廃莢にはもう一段折る必要があり、それには差し込まれたカートリッジが邪魔になってしまう。
だいたいの構造が固まったところで細部を煮詰める。本体ディティールはかなり異なるので、合わせて改造するべきか考えたが、大掛かりな改造になってしまうしそもそも合わせようのないレベルで機構が異なるわけで、無理に合わせないことにした。ただバランスを見るとゴングはスレッジファイアよりも銃身が少し長い(というかスレッジファイアの本体がゴングより少し長い)ようなので、それに合わせて5cmほど延伸する。ちょうどいいサイズのパイプが見当たらなかったので薄手のプラ板を丸めて筒を作った。銃身には厚み不足の感が否めないが、そこまでこだわると大変なので見送る。
銃身下部のグリップとフロントサイトはバルサ材を芯にパテを盛って成形。グリップのような自由曲面には良いが直線を求められる部分には不向きな手法で、削ってはラッカーパテを塗り直して手間がかかった割には不細工である。
最後に黒のサーフェイサーを吹き、塗装を施す。塗り分けもなく、可動部もほとんどないのでバラさず──というか既にパテで固めてしまった箇所があるのでバラしようがないのだが──そのまま全体に吹き付ける。
塗装といっても、ゴングは全体が黒マット塗装されているという設定なので黒サフ吹いた時点でほとんど塗装は済んだようなものである。木造部品であるグリップ部分のみ何種類かの茶色でドライブラシして木目っぽい模様を描き、クリアオレンジとスモークグレイを重ねてニス風に仕上げる。あとは金属色で角にチッピングを施して黒塗料が剥がれて金属地が露出したように見せて、ほぼ完成。
ついでにカートリッジの方も、下2cmぐらいのところでマスキングテープを巻きリーフゴールドで塗装してショットシェルっぽさを出してみた。金色がチープすぎたので上からスミ入れ塗料でウォッシュしたところ、なかなか良い雰囲気になった。ただ塗料が煮詰まっており塗膜が厚くなりすぎて、出し入れがちょっと引っ掛かるのが悩ましい。