「5月6日地震予言」または大型余震1ヶ月周期説について

4月半ば頃からだったか、「5月の連休空け頃に大きな地震が来る」といった予言の類を目にすることが増えてきた。
根拠はよくわからない。ある伝聞では「どこぞの幼稚園児が3/11の地震とセットで予言した」となっており、また別の話では「3月の地震の後、4月にあった大きい余震までの期間を考えると5月では連休空け頃になる」などという。


予言の出所ははっきりしないが、2011年5月の新関東大震災、神奈川大震災及び56大震災予測まとめ - NAVER まとめを見ると3月28日時点での「母の友達の旦那さん」という3段階伝聞形で情報があるようだ。これが最初のものかどうかははっきりしないが、これとは別にTwitter. It's what's happening.で3月30日時点に「職場の人」からの1段階伝聞、デスファットボーイ ミユ(@myunpu)/「%E5%9C%92%E5%85%90」の検索結果 - Twilogで4月1日時点で「店長の妹さん」からの2段階伝聞形で同様の情報がある。
これを全て事実とすれば情報の出所はその「甥っ子」で、店長の妹さん」と「母の友達の旦那さん」が同じ職場で働いているということだろうか。Yahoo!知恵袋での質問者は神奈川在住となっており、「店長の妹さん」の人は住居不明ながら発言を遡ると「町田なう」また江ノ島でのイベントに反応しているので東京〜神奈川近辺と思われる。従って同じ出所である可能性が否定できない。ただ「甥っ子」の人は新潟でのイベントに反応、また4月24日に花見をしていることから新潟方面在住であるようで、場所が一致しない。とはいえ甥と同じ地域に住んでいるとは限らないので、甥自身は神奈川近辺、という可能性は残るが(その場合、甥から直接の伝聞ではなく間に恐らく「幼稚園の先生→母親」の2段階を挟むと思われる)。
いずれにせよ、この辺りが追跡可能な最古の情報ではないかと思われる。一見して解るように複数回の伝聞を経(たことになっ)ている、極めて怪しげな代物だ。
まあ仮にこれらが事実であろうと、元々が「子供の言ったこと」であり「偶々3月のは合致してしまった」以外になんの根拠もないことは明白なのだが、予言を信じる一派にとっては恐らく予備知識のない子供という存在の言ったことであるという一点に何らかの神秘性とでもいうか、不思議な力のようなものを見出してしまったのではないかと思う。実際、改変の一例では障害児となっており、これは無垢性強調の結果であろう。


予言の話はこれぐらいにして、次に周期説を検証してみよう。「3/11から次の大きな余震まで27日だったので、その次は5/6になるはず」というのが大雑把な趣旨のようだ。
3月は31日あるので4月の余震は7日、たしかに23時32分に宮城県沖でM7.4、最大震度6強の揺れが生じている。しかし周期説は本震からこの地震までの間隔を数えて延伸してみせたものに過ぎないようで、過去の地震で27日間隔で大きな余震が来ることが多いといった事実はないし、また間に発生している他の余震は無視している(例えば3/31に宮城沖でM6、3/29に福島沖でM6.4、28日宮城沖M6.5など)。
そもそも自転を基準とした時間単位などというものは生物にしか意味がない。地震が意思を以て起こされるものでない限りはn日単位での周期などというものが出る方が不自然だ。仮に地質学スケールの周期性があるのだとしても、100万年一昔な時間スケールの中では年単位でさえ誤差の範囲内だ。まして日単位でなど当てられよう筈がない。
というわけで、当然といえば当然ながら人工地震陰謀論に絡んで周期性が持ち出されることもあるようだ。例えばTwitter. It's what's happening.では「HAARPのエネルギー充填に2週間かかる」という形で説明を試みている。だがそれなら周期性は27日ではなく14日×2=28日だし、その間の14日時点、25日にも地震がなければならない。調べてみたら、実際に「25日にまた攻撃される」といった趣旨の情報はあったようだ→http://d.hatena.ne.jp/yonta24/20110324/1300928578。無論、実際には(日本以外についても)この日に大きな地震などなかったわけだが。

過去の大地震に於ける1ヶ月前後での余震例

http://www.seisvol.kishou.go.jp/cgi-bin/shindo_db.cgiでデータのある1996年以降について、震度5弱以上を記録した地震を検索して1ヶ月前後で再度大きな揺れのあった事例を探した。

  • 1997年3月26日(5強)、4月3日(5強)、4月5日(5弱)→5月13日(6弱):鹿児島県、38日
  • 2000年6月29日〜9月11日:東京都新島付近 震度6弱×6回を含む30回の地震
  • 2002年10月14日 青森(5弱)→11月3日 宮城(5弱):19日
  • 2003年5月26日 岩手・宮城(6弱)→7月26日 宮城(6強ほか4回):2ヶ月
  • 2004年12月14日 北海道(5強)→2005年1月18日 北海道(5強):35日
  • 2005年3月20 福岡(6弱)→2005年4月20 福岡(5強):30日

なお、1996年以降での地震そのものは、震度6弱以上ものに限っても38件。

  • 1997年5月13日 M:6.4 鹿児島県薩摩地方
  • 1998年9月3日 M:6.2 岩手県内陸北部
  • 2000年7月1日 M:6.5 新島・神津島近海
  • 2000年7月9日 M:6.1 新島・神津島近海
  • 2000年7月15日 M:6.3 新島・神津島近海
  • 2000年7月30日 M:6.5 三宅島近海
  • 2000年8月18日 M:6.1 新島・神津島近海
  • 2000年8月18日 M:5.1 新島・神津島近海
  • 2000年10月6日 M:7.3 鳥取県西部
  • 2001年3月24日 M:6.7 安芸灘
  • 2003年5月26日 M:7.1 宮城県
  • 2003年7月26日 M:5.6 宮城県中部
  • 2003年7月26日 M:6.4 宮城県中部
  • 2003年7月26日 M:5.5 宮城県中部
  • 2003年9月26日 M:8.0 十勝沖
  • 2003年9月26日 M:7.1 十勝沖
  • 2004年10月23日 M:6.8 新潟県中越地方
  • 2004年10月23日 M:6.0 新潟県中越地方
  • 2004年10月23日 M:6.5 新潟県中越地方
  • 2004年10月23日 M:5.7 新潟県中越地方
  • 2004年10月27日 M:6.1 新潟県中越地方
  • 2005年3月20日 M:7.0 福岡県北西沖
  • 2005年8月16日 M:7.2 宮城県
  • 2007年3月25日 M:6.9 能登半島
  • 2007年7月16日 M:6.8 新潟県中越
  • 2007年7月16日 M:5.8 新潟県中越
  • 2008年6月14日 M:7.2 岩手県内陸南部
  • 2008年7月24日 M:6.8 岩手県沿岸北部
  • 2009年8月11日 M:6.5 駿河湾
  • 2011年3月11日 M:9.0 三陸
  • 2011年3月11日 M:7.7 茨城県
  • 2011年3月12日 M:6.7 長野県北部
  • 2011年3月12日 M:5.9 長野県北部
  • 2011年3月12日 M:5.3 長野県北部
  • 2011年3月15日 M:6.4 静岡県東部
  • 2011年4月7日 M:7.1 宮城県
  • 2011年4月11日 M:7.0 福島県浜通り
  • 2011年4月12日 M:6.4 福島県中通り

しかし1ヶ月程度で再び大きく揺れたのは6例、しかもそのうち2000年東京都のものは2ヶ月にわたり地震が継続したに過ぎず、2003年岩手・宮城のものは1ヶ月後ではなく2ヶ月後。それ以外でも19日や38日など大きくずれたものが含まれており、実質的には3/11→4/11を含めても3例ぐらいしかないと見るべきだろう。
「1ヶ月後に大きな余震が来る」というのは眉唾と言わざるを得ない。