是非の話は置いといて。
実際問題として子ども手当には、というかその前身である児童手当の段階から、外国人児童も対象とし定住外国人にも手当が支給されることになっている。何故か。
児童手当の成立当初、支給要件には国籍の定義があり、日本国籍保有者のみを対象としていた。が、昭和56年に批准した「難民の地位に関する条約」に基づきこの条項を撤廃している。
難民の地位に関する条約 - Wikipedia
「条約は難民の定義を定め、それに該当する者に対して、国内制度上の諸権利と保護を与えるべき旨を規定」しており、これに対応して日本は児童扶養手当、特別児童扶養手当、福祉手当、児童手当の国籍条項を撤廃した。
なんで難民の定義が定まっているのに、難民認定を受けた外国人だけではなく外国人全体にまで対象を拡大したのかはよく解らなかったが、少なくとも当時にあっても難民と認定した特定の外国人ではなく外国人全体を対象とするのが適当であると判断されたということだけはわかる。
当然ながら子ども手当法もこれを全面的に受け継いだ。条約に基づく決定なのだから今更元に戻すべき理由などない。
というわけで、「外国人へ支給する」ことを理由に民主党を批判するのはまったくのお門違いということになる。元々自民党が決めたこと……という以前に、条約に批准した以上はそれに従って法を制定するのが当然。逆に、どうしても国籍要件を復活させたいならば、まずは条約の破棄を宣言するのが筋ということになる。
もちろん、表向き批准するが内実まったく従わないというのは極めて卑怯なやり方であるからして、正当性があるならば堂々と宣言すべきなわけだが、国際的な受けは極めて宜しくなかろうから率直に言って悪手だと思うが。
運用についての補足
「法律上は外国人についても無制限に対象としておいて、実際の運用面で制限を課せば良いのではないか」という意見が聞かれる。驚いたことに厚生労働大臣すらそのような見解を持っているらしいが考えてみればこちらは「支給対象を国内在住青少年に限る」なので(これはこれで別の問題があるものの)条約とのすれ違いは生じないので訂正、これは愚の骨頂である。それでは何のために法を改正したのか。法で定めておきながら運用で骨抜きにするようなことを許していては法の意味がない。
ところで子ども手当がニュースで多く取り上げられた影響か、外国人が多数申請に訪れているとかいう報道がある。本当だとすればそれは子ども手当の問題を表すものではなく、児童手当が法に基づき正しく運用されてこなかった、もしくは敢えて周知しないことで利用すべき人の利用を阻んできたのではないかという疑いが強い。