今日紹介するのは画像をHDR化するアプリ、その名もずばり「HDR for Free」。
HDR=High Dynamic Rangeというのは、要するに「明るいところも暗いところもしっかり映る」という意味だ。写真は画面全体で露出が一様だから、暗いところがはっきり映るようにすれば明るいところは白く飛んでしまうし、明るいところに合わせれば影は黒く潰れる。実は人間の目でも同じなのだが、目の場合は細部を見ようとあちこちに視点を向ける度にその部分の明るさに調節されて映るため、意識の上では各部の露出が適性な状態で認識される。
HDRは、カメラを動かさずに露出を変えた写真を複数撮影し、それぞれの適性な露出部分を切り出して合成することで1枚の「どこにも露出の合った(記憶に違わぬ、しかし不自然な)写真」を作る技術と言える。
しかし実際問題として同じ写真を複数枚連続で撮影するのは難しい。被写体がじっとしているものばかりとは限らないからだ。またそもそもiPhoneのカメラは露出調整機能を持たず、ピントと同じく自動で調節されるのみなので「露出を変えて複数撮影」自体が不可能である。
そこで、写真を明度に応じて異なる強さで明るさ補正をかけることで全体の明度を調整し、擬似的にHDR化してしまうという手法が用いられる。HDR for Freeもそういうアプリで、使用すると各部の明度・彩度を自動で調節してくれる。出来上がった写真は全体に明るくハッキリして、不自然なほどカラフルになる。現実味には乏しいが幻想的だ。
実例をご覧戴こう。上が加工前、下が加工後だ。
記憶色の再現という当初目的はまったく果たされていないが、効果としては非常に面白い。