休める仕事、休めない仕事

愈々国内にも新型インフルエンザが広まってきた。
これらが局所流行を越えてアウトブレイクしてしまう主因は人の移動にあるわけで、終息させてしまおうと思ったら一定期間の移動制限が最適である。とりわけ閉鎖空間に密集しての生活を強いる教育機関や職場、それに飛沫感染し易い超接近状態を作る通勤電車の回避は非常に効果が大きい。


とは言うものの、実際にそこまで強硬策に出るのはなかなか難しい。学校はともかく、仕事となると様々なしがらみがあってそう簡単には休めない/休むべきでないという心理が働いてしまう。
一人休めば職場の同僚に負担が、一社休めば各取引先に負担が。ならば地域全体で休んでしまうしかあるまい。
しかし実際問題として休むわけに行かない職というのもある。例えば病院に休まれては感染してしまった人のケアもままならないし、病院が開くなら調剤薬局も開けねばならない。インフラ各社は常駐の管理者/何かあった時のメンテ要員が必要だし、ごみの収集や食糧品店など日常生活に必須の店も営業しないわけには行かない。また通販で済ます人が多くなれば運送会社は仕事を休めない。
店が開くならそこへ品物を卸す会社も必要だ。必ずしも同地域内で営業しているとは限らないが、少なくとも当該地域の内外を行き来する人がいる。卸売業が機能するなら製造業もやはり休めない。
……結局ほとんど休めないという話になってしまう。


まあ今や仕事も生活もかなりの部分をインターネット経由で済ますことが不可能ではなくなりつつある、とは言え実際に在宅で可能な範囲の仕事(というか在宅で仕事できる体制)はそれほど敷衍していないし、物流の生じる範囲までを自動化するには至っていない。それでも書類仕事がほとんど在宅になり、急を要しない仕事が延期され、そうして人が自宅にいるようになれば、少数の業務上必要な人員が外出するだけで済むようになれば、それだけで感染の抑止力はかなり向上する筈なのだが。


技術の向上に伴う大規模な人の流れが加速させた感染は、更なる技術の向上に伴って逆に縮小するのかも知れない。ほとんどの人が家から出ることなく仕事できるようになる未来は、疫学的には望ましい世界だ。