1円玉を水に浮かべる実験というのがある。アルミは軽い金属なので浮力と表面張力との合わせ技で浮かべようがあるのだが、それでも面積があるものや深さのあるものに限られ、棒状のものではなかなか厳しいだろう。
鉄ともなると比重がぐんと重くなるので、当然そのままでは浮かない。が、ちょっとした道具を使えば浮かばせられないこともないのだ。
その道具とは、磁石である。それも普通の磁石ではなく、強力な磁界を持つ希土類磁石が望ましい。最近は小さなものなら100円ショップなどでもネオジム磁石を入手できたりするようだ。
偶々、手元にひとつあったので実験に使ってみる。
まず、鉄釘をネオジム磁石で擦る。小さいながらこれ1個で5kgぐらいまで持ち上げられるという代物なので、うっかり間に指を挟んだりしないよう注意。
こうして同じ方向に10回ぐらい擦ると。釘が磁力を帯びて弱い磁石になる。弱いといっても使用した磁石が強力なので、釘磁石もそれなりだ。
次に、ネオジム磁石を水で満たした容器の底に沈める。なるべく中央あたりに置くのが望ましい。水の揺れが収まった頃を見計らって、おもむろに釘をそっと水面、磁石の真上あたりに置く。
すると……ほら、針が水面に浮く!
いかに強力な磁石と雖も、反発力だけでの空中浮遊は容易ではない。想像が付くと思うが、磁力は真上方向で最大となるためより弱い周辺方向に物体が流れてしまい、そのまま落下するのが常である。これを避けるためにリング状磁石を使うなどした例もあるが、今のところ電磁石で落下方向の磁力を瞬間的に強めることでバランスを取るといった方法で漸く浮力を保っていられるのが現状である。
では何故水面に釘を浮かべることができるのか。実は、その秘密は水にある。
意外に知られていないことだが、水は磁力の影響を受ける。とは言っても水が磁石に吸い付くわけではない……実は、その逆なのだ。水には反磁性といって、磁力に反発する妙な性質がある。ただ決して強い力ではないため通常はほとんど気付くことはなく、ネオジム磁石のような強力な磁力の影響下にあって初めて効果が現れるのだが。
円盤型のネオジム磁石の磁力線は「穴のないドーナツ」のような感じになるため、水面付近では全周に水平方向に広がるようなベクトルで力が生じることになる。水はこれに反発する形になるため、円環状にほんの僅かに盛り上がり、中央が少し窪む。この窪みに磁化した釘をそっと置くと、釘の持つ前後方向の磁力線が放射状のネオジム磁石のそれとの反発方向で安定し、水面の高低差により中央に保持されることで浮遊状態を保つことになるのだ。
実際に試して、写真を撮ってみた。水面の状態は解り易いのだが、反射で磁石が見え難くなってしまっているのは失敗。
磁石のサイズによって容器の広さや水面までの高さに制限があるようで、最初ちょっと試行錯誤して調整が必要だろうが、慣れれば割合再現性良く浮かべることができるようになる筈だ。
騙されたと思って、ちょっとお試し頂きたい。
他にも実験してる人がいたのでちょっと紹介。
動画もあったhttp://www.youtube.com/watch?v=klsa2CkcXfU
・勿論、騙してます。・