メタな議論は慎重に

世界はヒロシマを覚えているか(1)「ヒロシマ原爆も捏造だった?」 - mujigeの資料庫の意味が正しく理解されていないのが非常に気になる。
これは「南京大虐殺を否定する奴は広島/長崎の原爆投下も否定するんだよね?」のような詭弁による言い掛かりではなく、「歴史修正主義者の論法を他に適用するとこうなる」という例示なのだ。
ここで問題にされているのは主張の中身ではなく、「手口」の方である。つまりこれはメタな議論であるのだが、それがはっきり明示されていないためレイヤーを間違えて「原爆を引き合いに出して南京大虐殺を認めさせようとする釣り記事」みたいな認定をされてしまっている。実に勿体ない。


メタ議論をしてはならない、ということはない。この件に限らず陰謀論者やニセ科学信者の言い分というのはかなりテンプレート化されており相似構造を取るので、「他の件でも似たようなことを言ってるね」という指摘には意味がある。が、それはあくまでメタであり、そのことが直接に論拠の不備を示すものではないことに注意せねばならない。


とは言え、他の詭弁に当て嵌るような論法でしか語られぬものであるならば、それもまた詭弁に過ぎない可能性が高いとは考えられよう。その意味では、メタ議論にも充分な意義がある。
その意義を減じてしまわぬためにも、メタはメタで独立した議論として扱い、議論を徒に混乱させぬように注意されたい。
構造的には相互参照的に、もしくは上位概念的に取り扱うのが望ましい。