RPG情報収集処理考(2)

ここ暫く情報収集システムについて考えていたのだが、ロールプレイ的/ボードゲーム的という単純アプローチに限界が見えたので別側面から考えてみることにする。
RPGに於ける情報収集というのは、ゲームレヴェルでは2パターンに分類できる:その後に控えるフェイズのための準備としての意味と、情報収集過程それ自体を中核に据える場合である。


前者は例えば戦闘準備として敵を偵察するなど。やりようによってはこの部分を膨らませることも可能だが、あくまで準備段階なのでやりすぎるとダレる。むしろここは抽象的に、システマティックに処理することでさらっと流し、後半の山場に備えるべきだろう。
この方式では、あくまで事後に備えたリソース準備としての情報収集に過ぎないので、目標までの経路は明らかになっていても良い。いっそ「情報点xポイントごとに情報をひとつ買える/資材点yポイントごとにアイテムをひとつ入手」のように、もう「何のために何を調べるか」という過程すら省略してしまうのも手だ。
あまりにシンプルになり過ぎるので、リソースを複数種類用意し各分野に於いて充足を困難とすることで「どれを捨ててどれを重視するか」でディレンマを演出するのがポイントになるだろう、がその為には後段階の攻略ポイントがある程度明らかである必要がある。
リソースの変換を逐次処理とすることで後フェイズ用リソースの入手と共に情報提供を平行に処理するなどの方法を取れば、攻略ポイントが徐々に明らかになる→それに備えたリソース調整が行なえるといったバランス調整も可能かと思う。


後者は例えばミステリ系シナリオに於ける推理など。こちらは情報の断片的入手と、そこから推測可能な情報に基づく行動指針決定そのものが重要なので、情報は非公開でなければならない。必然的に行動指針は現在までに得られた情報、及び「常識」に依拠せざるを得ず、この点でリソースマネジメント的なゲーム然としたものにはなりようがない。むしろ偽情報などを織り交ぜて推理を誤るとバッドエンドを迎えるような構成の方が向くが、それには必然的にGMのシナリオ構成力が問われるし、またバッドエンド前提であることを予めプレイヤーが意識していないと破綻し易い。
さて、この「調べてみるまで得られる情報が不明」な処理に於いては「隠された情報」の処理が難しい。例えば「聞き込み調査に対し不知との回答を得たが、何か隠しているらしく思われた」のような場合。
よくある処理は「ちょっと知覚で判定して」と促す、あるいは数値を見てGMがこっそり判定するなどして結果次第で隠された情報の存在を告げるような方式だが、これはPCには何も判らなくてもプレイヤーに感づかせてしまうという欠点がある。自発的に情報の取得方法を考えさせるのが目的であるので、これは望ましくない。
これを解消するひとつの方法は、(達成度が判定できるシステムなら)目標値を段階制にして与える情報を切り分けることだ。例えば目標値10及び20でそれぞれ別の情報A、Bを与えるとする。達成値が0〜9なら情報なし、10〜19ならA、20以上ならA及びBが得られるというやり方。
もうひとつは、別の判定を平行処理し、両方の判定結果で情報を切り分けるやり方である。例えば「交渉」で対話による情報収集を試みる時に、「知覚」判定を絡めることで裏にある隠れた情報を引き出す。パターンは交渉失敗/知覚失敗(情報なし)、交渉成功/知覚失敗(情報A入手)、交渉失敗/知覚成功(直接情報はないが「何か隠している」のみ察知)、交渉成功/知覚成功(情報A、B入手)という感じになる。あくまでプレイヤーに隠れ判定の存在そのものを気付かせないことが目的であるので、主たる判定での出目をそのまま副判定にも適用するなどして、GM以外には副判定の有無を知らせないことが望ましい。
後者は成功度のない判定システムでも機能する利点があるが、成功度ありで判定するならより詳細に、成功/失敗のみでなく成功度を段階評価しても良い。


総体として、ゲーム重視路線の方はシステム面での調整が主体となるためデザイナーの負担はやや大きいが、中間ユーザたるGMの負担は比較的軽い。準備段階も運営段階も軽めに処理できるため短時間で繰り返しプレイ可能であるが、その分プレイヤーが物足りなさを感じる可能性がある。タクティカルな戦闘処理など、後に控える山場の比重が高いゲームには向くだろう。ガンドッグやメックウォリアーなどで試したい。
推理重視路線はストーリー主導な展開に向く。物語を主体としながらも道筋を複線化しルート選択がプレイヤーに任される点で自主性が高い。ただ行動範囲がそもそもプレイヤー任せになるため想定外の展開を生じ易く、事前の準備が重い。恐らくは準備した情報の1/3も使わない感じになろうかと思う。情報不足や偽情報への誘導からバッドエンドに流れ易いため、予めそうした展開を折り込み済みのゲーム、例えば深淵などには向きそうだ。