Wings of Warのために第二次世界大戦の英独航空技術などを調べているのだが、改めて見ると意外なほどに当時の英国は技術大国である。
いや、本当ならば意外でもなんでもない。そもそも近代工業化に先鞭を付けたのは英国であったのだし、初めて戦車を投入したのも英国なら電子式の計算装置を実用化しドイツのエニグマ暗号を解いたのも英国であったわけで、どこをどう見ても当時最先端の技術を擁する大国なのだが、なんとなく第二次大戦では独国の卓越した重工業技術が、あるいは戦後では米ソの大国化が目立ちすぎたためか、どうも印象が薄い。
独軍が目論んだ英国本土上陸の前哨戦として行なわれた空軍同士の総力戦、所謂バトル・オヴ・ブリテンは期間にして僅か3ヶ月半と短期ながら互いの都市部爆撃を含む凄絶な削り合いを展開、彼我の損害は各々戦闘機数で一千を数えるまでに膨れ上がった。
この激戦をなんとか勝ち抜いたのは、ひとつに主力戦闘機スピットファイアの優秀さのお陰ではあるが、実のところ真に重要なのは防空レーダー技術の発達である。英軍は沿岸に当時最新技術であったレーダー塔を配備、飛来する敵機の経路を事前に捕捉しピンポイントで迎撃部隊を差し向けることができたため、戦術と機数では劣りながらも互角の戦いを繰り広げることが可能となった。
この後、大戦後期でのチューリングの「ボンベ」によるエニグマ暗号解読と合わせ、当時の英国は情報技術で先端を行く国であったと言える。
一方、精強な軍事大国にして技術大国でありながら敗戦の徒となった独軍だが、この国の強さはひとえに工業技術と戦術性が、弱さは指導部の戦略眼の欠落が支えているのだとつくづく思う。
バトル・オヴ・ブリテンを押し切れず、モスクワ目前まで迫りながら押し返され、最後には首都まで占領されたドイツだが、実は大戦を通じてここまで多面に兵を分散しながら戦い抜いた国は他にない。唯一米国だけが太平洋戦線で日本と戦いながらノルマンディに上陸しヨーロッパ戦線を戦っているが、これはある意味単純に陸軍は独軍、海軍は日本軍のみを相手すれば済んだわけで、戦力分散の程度は軽かったと言える。
これだけ多勢の敵と戦える戦力を、それも20年前の大戦で軍備を徹底的に失った上に空前の恐慌で国力を完全にすり潰されたところからごく短期間のうちにここまで増強させておきながら、あちらこちらに敵ばかり増やし、そのくせ敵を叩く手段は考えない無能ぶりはある意味大したものだと言える。ヒトラー自身、政治家としてはある種天才的ながら軍人としてはまったく無能、その癖臆病故に有能な者を恐れ死なせてしまうのだから始末に悪い。重用されるのは無能ばかりではそりゃ負けもしよう。
でイタリアは、「ドイツが勝ってるぜ!俺もちょっと勝馬に乗ってくるわ!」てな感じでちょっかい出しに行くばかり、しかも時期を完全に見誤っているので却って戦況を悪化させるという、絵に書いたようなヘタレ。空戦に於いてもそれは変わらず、バトル・オヴ・ブリテン収束後に遅蒔きながらと(時代遅れの複葉機で!)やってきて英空軍に返り討ちに遭っている。バカかこいつら。