このモヤモヤは何なのか

某ゲームに端を発した「パクリの是非」論でモヤモヤしている。
ゲームのルールは法的保護を受けないので、まったく同じルール/システムのゲームを製作することは何ら違法ではない*1。しかし認め難い。それは何故なのか。


理論的に言えば「パクリが許容されると原作者が困るから」である。ライセンスなどを受けて販売しているわけでもなく、単に「勝手に流用」しているに過ぎないから、当然原作者には何の利益もない。ひとつふたつなら大きな問題にならないとしても、そのようなやり方が横行すれば当然ながらゲームデザイナという職業が成立しなくなり、新作を出せなくなって、やがては市場が崩壊してしまう。
ただ一方では、単純に販売数が増え広い範囲にリーチすることで市場そのものが拡大するのではといった見方もある。あらゆる状況に通用する論ではないが、市場規模が極端に小さい国内ボードゲーム市場に限ればそれなりの理はあるかも知れない。


実のところこの忌避感はもっと感情的なところで発生しているのではないかと思える。やや理性的な言葉に直せば「創造性のない行為は許容できない」といったところか。これはこれで「創造性の有無はどこで線引きするか」といった問題が生じる。極論、ルールは同一でもモティーフを変更したことによるイメージの差を狙ったのであれば、それもひとつの創造性と言えるのではないか。


実際、ボードゲーム界ではリメイクも頻繁に行なわれる。世界規模で見ても決して大きな市場ではなく、賞を取った名作ゲームでさえ3年もすれば絶版が珍しくない状況下では、数年後に違う出版社からデザインを変えて再販されたり小さな変更を加えて新作として売りに出されたりといった状況も止むを得ないものではある。そうした中には、ルール的には一文追加した程度だったりボード上の1箇所のみ書き換えた程度で、代わりにモティーフを一新しまったく違う名を付けたようなものも存在している。一見すると新作なのだが、実は古いゲームとほとんど同一というわけだ。うっかりすると旧作を持っているのに新作の方も買ってしまったりしかねない。
まあ多少なりと改変されていることでバランスも変化し、新たな楽しみが生じていることとは思うのだが、仮にそれがほとんど変わりなかったとしたら、やはり買った方としては「騙された」という感覚を強く持つのではなかろうか。

*1:ルール文面やプログラミングコード、あるいはグラフィックデザインなどは個別に保護される