書き手の問題なのか読み手の問題なのか

以前取り上げた日経Tech-OnによるMacBook Air分解記事に釈明記事が出た。

前回の記事では「外は無駄なし、中身は無駄だらけ」という煽るようなタイトルに加え「技術的にすごいと感じるところは一つもない。我々ならもっと安く作れる」など、製品/メーカを貶めるかのような表記が物議を醸したわけだが、記者曰くApple社の製品はできが悪い」と言いたいわけでも,「日本メーカーの技術は世界一」と主張したいわけでもないのであって、前記事への反応は誤読によるものであるらしい。
引用する。

こうした勘違いが起こる理由は,我々と問題意識を共有していない読者がいるためと推測している。様々な電子機器に,狙いとするユーザー層があるように,我々の記事も特定の読者に向けて書いている。前回の記事の中心的な読者と想定しているのは,日本メーカーで電子機器の設計に携わっている技術者たちである。
(中略)
その視点で「MacBook Airの設計に無駄がある」という結果を読んだときに,「だからApple社はダメなんだ」と考えるだろうか。その代わりに,Apple社が差別化を図っているポイントは別のところにあるとみるのが,自然ではないか。そう考えているのだが,読みが甘いのだろうか。

さて、確かに日経Tech-Onは技術系情報サイト(少なくともそれを指向している)なのだろう。しかし、実際にそれほど専門性が強いわけでもなさそうであるから、直接技術に関らない一般人もそれなりに読むだろうと予想される。とりわけ今回取り上げた題材はコンシューマ向けの、それも発表直後で大きく注目されている製品だったわけだから、普段Tech-Onを読まない層までが注目するであろうことは予想して然るべきだ。
しかしながら、記事中一度も対象読者層を明示していない*1し、またMacを/Appleを貶めたいのだと明言もしない代わりにその逆も明言せずに、ただ「無駄だらけ」と書いている。率直に言って、誤解だというならそれはどう見ても記事の書き方に原因があるように思うが。


文中での主張にもあるように、今井記者のこれまでの記事を通して読めば、確かに氏がAppleにあって日本メーカに足りないものを幾度も主張していることは理解できる。しかしそれはあくまで人物評であって、記事への評価はまた別だ。
連載としては、まだ「他の回も見た上で評価を」ということが許されるかも知れないが、記事単体としてはその中で適切に要旨が伝わらないようでは駄目だ*2

リンク先の文章を読んでもらえば分かるように,実は筆者自身が相当Apple社の製品に入れ込んでいる。だから,Apple社を非難する(と読める)記事に,反論したくなることはよく分かる。ただし,「秀でた体験をもたらす製品が,ハードウエアの設計も優れているはず」との意見には同調しかねる。

それこそ誤読というものだろう。日本メーカのハードウェア設計技術の高度さは誰しも理解している。ただ、それが最重要であるかのような(誤読にせよ、そう読めてしまう)記事を書いたことが非難されているのであって、決して信者が「Appleの技術は世界一なんだ!Appleをバカにするな(つд`)・゜・ウワァン 」と切れているわけではないのだ*3
そこをきちんと認識できないようでは、この先が思い遣られる。

*1:果たして記者の主張するように「日本メーカーで電子機器の設計に携わっている技術者たち」なら意図を正しく汲めるのかどうかについても議論の余地があろうが、ここでは流す

*2:これも5回に分けての掲載であるが、第一回はAppleが発売日を告知しないことへの不満、2〜4回は分解写真あるいは動画のみであり、主旨が述べられた箇所はなく、連載全体としての評価であっても結論に違いはない

*3:まあその信者自信が言うと説得力ないけど