嘘を書くところ

嘘と空想というのは非常に近いところにある。どちらも虚構であり、どちらも事実を元にしないと効力を持たない。違いがあるとすれば騙すつもりがあるかどうか、であろうか。
騙すことにより他人から利益を奪おうとするような嘘は下劣であるが、騙された側が後々それを知って喜ぶような嘘もある。吐くならばそうした嘘にしたい。


嘘を吐こうとすれば事実を知った上で、それを違和感のない程度に歪曲してみせる必要がある。あからさまな嘘には誰も乗らない。八割方真実で、二割嘘を混入するぐらいが丁度良い。
たとえ一言の嘘であっても、その裏には十の情報収集が潜んでいる。大きな嘘を吐こうとするならば、そのために必要な情報は膨大なものとなる。破綻を少なくするなら嘘は小さくある方が良い。フィクション作家の苦労が忍ばれる。