実は現在既に我々はAR/ERの手段を限定的ながら保有していることに気が付いた。CSSとGreasemonkeyがそれである。
CSSは、コンテンツに被せて見栄えを変化させる仕組みである。ブラウザの「表示」メニューあたりからスタイルシートを切ってみるといい。途端に文字のみの貧弱な見栄えに変化するはずだ。
実はこの貧弱なものこそが現実であり、我々は普段ブラウザを通してそれを「強化」して見ているのだ。
強化現実は、現実に情報を追加するだけで現実そのものを変更しない。穏やかな仕組みと言える。
Greasemonkeyは指定条件に応じてコンテンツそのものを書き換えてしまう仕組みである。外部から取り込んだ別の情報を追加したり、不要部分を削除したり、または一部を別のものに置き換えたり。コンテンツには手を触れず情報を追加するに留まった強化現実と違い、こちらは現実そのものを書き換えて見せる(とは言っても勿論本当に現実世界を変化させられるわけではなく、自分に見えるコンテンツを変化させるだけなのだが)。
ヴァーチャルのみで実体の存在しないWebでは強力に働く拡張現実も、現実の物質としての存在と向き合わざるを得ない世界ではあまり意味がないかも知れない。
Webそのものが仮想現実のようなものとすれば、さしずめ強化仮想現実と拡張仮想現実か。これらは強力だが、現実と切り離された場所でしか働かない点で非常に限定的な効果しかないのが残念なところだ。
まあ、そうでなくても既に我々は様々な携帯情報機器によって現実を強化拡張しつつあるのだけれど。