自転車の危険性について

自転車通勤の危険性について心配する声があったので、統計的にどの程度危険なのか調べてみた。
データは基本的にhttp://www.npa.go.jp/toukei/koutuu1/home.htmから。

自転車はバイクより危険

まず、年間死者数推移から通行中の死者数をカウントする。残念ながら数字のみで詳しい説明がないので、ここで言う死者数が何を表しているのかよく解らない部分がある(例えば、「自動車乗車中の事故による死者」というのは乗っていた人が死んだ場合のみを言うのか、それとも通行人を轢いてしまったような場合もカウントされているのか。別途「歩行中の事故による死者」もカウントされていることから、恐らく前者だとは思うが確証はない。


自動車は圧倒的に死者数が多い。平成18年までの平均では月あたり250〜300人、衝突安全基準の変化によるものかそれ以降は劇的に減少しているが、それでも月150人である。
自動二輪・原付は変動が大きい。少ない月は30人程度、多い月で70〜80人。何故か8月がピーク。
自転車はバイクよりも事故死例が多いようだ。少ない月で50人、多い月で90人程度。
歩行者は予想より遥かに事故が多い。最低でも100人以上、多い月は300人程度。


恐らく、歩行者に死者が多いのは幼児や高齢者など咄嗟の危険を回避し難い層も含まれるからだろうと思われる。これに関しては別途研究があった(PDF)のでそちらを参照してみると、小学校低学年付近が突出して多く、20代〜40代あたりはほとんど例がないことが解る。その後徐々に増加、とりわけ50代以降は女性の死亡率が高まる。また、意外にも低年齢児童を含め飛び出しによる事故よりもそうでない事故の方が遥かに多い。
それを勘案すると、通勤する年代での死者数は月あたり10人〜40人程度と考えられる。
一方、自動車が最も事故死率が高いのは、ひとつは多分相対速度の問題だろう。バイクや自転車は基本的に車道の端を走行するため、降車する車のドアに激突する・追い越しの車に接触するなどの例はあっても反対車線の車と正面衝突することはまず考えられない。正面衝突では、互いに時速50km/hで走行しても相対速度は100km/hになるため危険性が非常に大きい。
また、複数の乗車が多いため1件の事故で複数の死者が出ている可能性も考慮されるべきである。あくまで事故件数ではなく死者数での比較であるので、「事故に遭う確率」とするとまた話が違ってくる筈だ。


自転車については年齢別の適切なデータを見付けることができなかった(リスクと生活:自動車交通事故のリスク50年(21)で人口あたり年齢別自転車事故統計データらしきものがあるのだが、ところによって自動車とも自転車とも書いてあるのでどちらが正しいのか解らない)ので適切な比較ができないのだが、一見すると確かに自転車は死亡事故例が多い。元々、自動車と違って事故から身を守る頑丈な殻もなく、衝撃を柔らげる方法もないから、そのこと自体はあまり不思議ではない。ただ、遥かに速度が出て、身を守る方法がない自動二輪・原付の方が事故が少ないのは意外だった。


なお電車事故の件数は年間で500件程度(Wikipedia:鉄道事故の項に拠る)とのことだが、大半は踏切障害事故であり鉄道の乗客が死傷する例は非常に少ない。


こうして見ると、確かに通勤中の死亡率は自転車の方が電車+歩行通勤よりも高いと言える。ただし自動車通勤よりは低い。
自身が事故に遭う危険性だけでなく、誤って歩行者に衝突するなどの可能性もある。自転車保険は必須。

自転車通勤のメリット

実のところメリットはあまり多くない。ひとつは満員電車という苦行から逃れられること、及び列車の運行トラブルと無縁であること。もうひとつは運動になること。
満員電車がどの程度苦痛かは人によるが、あまり長時間の電車通勤を強いられるような環境では遠過ぎて自転車通勤できないので、実際のところメリットとしては薄い。運行トラブルについては、場合によって休息の名目ともなるので必ずしもメリットではない。
そうすると、自転車通勤とは事実上運動のためだけにあるようなものと言い切っても良かろうと思う。これがどれほどのメリットになるかは……各人の健康状態による。