経済学は科学たり得るか

某所で経済学議論(というか口論)が巻き起こっているようだ。私は経済に疎いのでどちらの弁が正しいか、なんということは判断できないのだが、それ以前の問題として感じたことがあったので書く。


経済学は多分、科学ほど厳密ではない。科学でさえ、ほとんどの問題を単純モデル化してやっとその振る舞いを規定できる程度のもので、複雑系な代物、たとえば流体の振る舞いの厳密な計算などはあまりに膨大すぎて完全には処理できない(だって、本当にそれをしようと思ったら分子ひとつひとつをシミュレートしなければならないのだから!)。
経済学はそれよりずっと曖昧だ。何故なら、扱う対象が人間だから。
お金の振る舞いはある程度モデル化できるけれど、その動きを実際に起こしているのは人間の心理だから、時として、いやほとんどの場合に、それは予想外の動きをする。理論化はできるけど理論通りにはまず動かない。


経済学とは精々、天気予報のようなものだ。気象の予測には様々なパラメータが複雑に絡んでくるから、そのすべてを割り出して正確な予想を立てるのはほとんど不可能で、実際のところ機械的予測の的中精度は30%程度、「晴/曇/雨」の判定だけなら完全ランダムの方がまだしも当たるほどだと聞いたことがある。それに人間の経験的判断を加えてやっと4割台になっているんだそうだ。*1
まあその真偽はともかく、それでも気象学が科学たり得るのは、パラメータが完全で正しくシミュレートが行なわれるならば正しい結果を導くだろうと期待できるからだ。そのための計算量は膨大だが、個々のシミュレート自体はミクロで単純なモデルの積み重ねだから。
けれど経済学の場合はそうも行かない。一番ミクロな部分が人間の心理という単純モデル化の不可能な代物だから、どうしても大きな計測誤差が生じる。


こう言っちゃなんだが、所詮その程度の厳密さしかない学問なのだ。それについて厳密な言葉の定義レヴェルで議論しても仕方ないのではないか。それこそ互いに揚げ足とりにしかならない。

*1:気象庁が公表している的中率データに拠ると的中率は明日の天気に限れば85%程度とかなり高い。ただ、気象庁定義とは別に世間一般では「降水確率20%なら降ってもほんの少しだろう」とかいった感覚的判断があるので、的中と判断される割合が低く見積もられるのかも知れない