冒険者育成キャンペーン

世界樹の迷宮では最初の階層で先輩冒険者の導きがある。曰く「熟練者がやるのは簡単だが、それでは後継が育たない」とのことで、迷宮探索を推奨する執政院としてはまことに理に適ったやりかたと言える。


TRPGに於いても、新米の序盤シナリオと言えば大抵がダンジョンものだ。これは物理的に選択肢が制限可能でプレイヤー・ゲームマスターともに不慣れな時に対応し易いからでもあるが、「冒険」という言葉から連想するものがダンジョン>フィールド>シティアドヴェンチャーの順に多いこととも無関係ではない。
なにはともあれダンジョン探索ばかりやることになるわけだが、正直なところどの町にも近くにゴブリンの棲む洞窟があって退治を依頼されてばかりというのも変な話だ。付近に敵がいて被害が深刻なら村として自衛の体制を整えるのが妥当だし、根治として冒険者を雇って討伐させること自体は良いとしても、本来ならばそれは村が直接雇うものではなく、そこを治める領主なりに陳情して兵を出させるなりするのが普通だろう。


まあそもそも、冒険者という職業自体が妙なのだ。ときに荒事に加勢し、ときに遺跡を盗掘する腕っ節の強いごろつき集団。どちらかと言うと煙たがられ、あるいは取り締まられて然るべき立場と言える。そんなものが真っ当に生活するためには、冒険が世に必要とされる事情と世間様に迷惑をかけない自治が必須だ。
自治の方は冒険者ギルドという形で処理できるとして、必要性が問題になる。アラビアの夜の種族 (文芸シリーズ)に見るような、異界と繋がって魔物が湧いて出る迷宮であるとか、迷宮キングダムのような生存競争的に人間の立場が低い殺伐とした世界とか。
逆に、必要とされるのであれば無秩序に有象無象どもが活動するよりは組織的に管理した方が望ましい。すると、冒険者ギルドとは必然的に、冒険者でもやろうかという連中に名前を貸す寄合程度のものではなく、剣の握り方も知らない初心者に迷宮生存術を叩き込む教育機関たらねばなるまい。


そこでタイトルの話に至る。
例えばギルドの卒業試験として、付近の枯れた小遺跡に送り込まれる1Lev冒険者パーティ。野生生物を駆除し遺跡の最奥に辿り着いたところで、これがギルドによって用意された試験であったことを知る。
ちょっとした魔物退治などをいくらかこなし、そこそこの腕となったパーティにギルドからの下命。付近の野生生物を捕獲せよとの達し。つまり後輩育成のためにモンスター役を集める仕事だ。
最終的には遺跡のセッティングを任され、新米たちを(死なぬ程度に)陰ながら支えつつも苦しめる役割を担う。
なんなら枯れたと思われていた遺跡の一角が崩れ、偶然にも未開拓の下層を発見するのも良い。そこへ迷い込んだ新米の救出ミッション。
これだけで結構なヴォリュームのキャンペーンが成立すると思うのだが、どうか。