パノラマ写真の作り方

http://f.hatena.ne.jp/DocSeri/20041207180552から来た人がいたようなので。
パノラマ写真が好きなのだが、製作者が少なくて寂しい。


パノラマ写真の明確な定義はなく、単に普通の写真より横長(または縦長)のものをそう呼んでいるに過ぎない例も多々あるが、ここでは便宜的に「カメラを回転させて撮影した画像」としておこう。つまりこういう感じである。いや、これはカメラが回転というか、レンズが回転しているのだが、まあ同じことだ。
勿論、普通のカメラでこのような画像を撮影できるわけではない。魚眼レンズでもあれば、球状に写った画像を横長に切り取ることで再現できるが、それでは情報量が減ってしまうので意味がない。1枚に収まる情報量の多さがパノラマの魅力なのだから。


さて、これをごく普通のカメラで撮影した画像から加工して再現してみよう、というのが今回の趣旨。つまり「何枚も撮って繋ぎ合わせる」わけだ。

用意するもの

カメラ(デジタルの方が良い。液晶画面が動くタイプだと尚良し)、できれば三脚、それに画像加工できる環境(パソコンと画像編集ソフト)。

撮影

パノラマにしたい範囲の画像を何枚も撮る。重要なのは写真同士の撮影範囲が重なるようにすること、撮影条件を変えないこと、なるべく回転軸をずらさないこと。
三脚があれば螺子で固定している部分をちょっと緩めてカメラだけ向きを変えるようにすることで回転軸をずらさずに撮影が可能だが、ない場合は手持ちでそれをやるしかない。液晶画面可動のカメラであれば、地面や壁に液晶画面を押し着けて固定し、その蝶番構造を利用して回転を制御できる。それもできなければ……軸足固定で体を回転させるか。
特に三脚がない場合は失敗の可能性が高くなるので、撮り過ぎるぐらい沢山撮影しておく。
撮影条件については、時間帯や天候といった意味だけでなく、撮影時のカメラによる色補正も含む。普通カメラにはフルオートモードが付いているが、これだと撮影部分の明るさや色に応じて自動的にシャッタースピードや露出、色味を調整してしまうことがあり、後で繋げようとすると色が違っていてその部分だけ浮いてしまう。
マニュアルモードがあるなら、それでホワイトバランスをオート以外に固定して撮影すると良い。それだけでも随分違う。できればシャッタースピードと感度も固定にすると、明るさも大体揃えられる。

加工

重ねる

まず、撮影した写真を全部並べて、一致する部分を重ねて画像を繋げてゆく。三脚を使っていない場合、傾きが違っているものが出てくると思うから、それぞれに回転機能で補正する。ソフトによって操作方法が違うが、Adobe Photoshopであれば「ものさしツール」で水平または垂直になるべきラインを指定、「カンヴァスの回転>角度指定」で簡単に補正できる。
もし、こうやって重ねていった時にどこか途切れている部分があったら、全体でひとつのパノラマを作るのは諦めねばならない。
撮影時の回転軸がずれた場合、(遠景ならば多少のずれはそれほど影響しないが)うまく繋がらない可能性がある。酷く失敗した画像はこの時点で破棄。

色の補正

例えば撮影範囲に明るい所と暗い所がある場合、カメラが自動補正して暗い写真を明るめに、あるいは明るすぎる写真をやや暗めに撮ってしまうかも知れない。そうなると繋いだ時にその部分の明るさだけが妙に食い違ってしまう。ソフトの補正機能で明るさやコントラストをいじって周囲と馴染むように調整する。
また、オートモードで撮影したなら画像ごとに色合いがバラバラかも知れない。カラーバランスなどで色彩を統一する(難しい場合は全体をモノクロにして、明るさとコントラストのみにしてしまうのも手だ)。

繋ぎ目を消す

この辺はソフトによってまちまちだと思うので主にAdobe Photoshopでの操作を説明する。
まず、上になっている写真の不透明度を適当に下げて、下の写真との重なり部分を確認する。次に、クイックマスクモードで重なっている部分の幅だけ黒→白のグラデーションをかけて、重なり部分を連続的に選択する範囲を作る。この状態でdeleteキーを押すと、写真の端の方はほとんど透明で、中央に近づくに従ってはっきり見える状態になるので、不透明度を100%に戻して下の写真と結合すると、繋ぎ目のほとんど解らない状態になる。
要するに重なっている部分を、上になった画像の端を徐々に透明に近づけることでなめらかに繋げて見せるわけだ。
また、人物や車などを消したい場合はそれらが写っていない画像を上に重ねるようにして処理する。場合によっては消し切れなかった部分を後でレタッチしても良いだろう。

仕上げ

画像を統合し、飛び出た部分を切り取って長方形に整える。


そうやって作ったのが、例えば上の画像である。この時は回転式液晶部を支えに、横にしたカメラを水平から上方向に回転させたが、結構左右にずれた。
重なった部分を良く見るとビル壁面の線などが二重にぶれているのが見て取れる。もっと丁寧に作るならこの部分も修正するところだが、そこまでしなくてもあまり不自然には見えないので気にすることはない。


ちなみに、画像を繋げてパノラマに加工してくれるソフトも市販されている。上の作業で言えば「継ぎ目を消す」あたりをイージーにやってくれるわけだ。
また、QuickTimeなどの技術を使うと、360度撮影して繋げた写真を元に周囲をぐるりと見渡せるムービーを作ることもできる(例:http://www.apple.com/jp/quicktime/technologies/qtvr/)。
今はどうなのか知らないが、確かカシオのデジカメあたりにはそういうソフトが同梱されていたのではなかったか。